第7話 見舞い

 朝晩だけでなく、日中も寒くなってきた。

 花束を持ち、病室の前に立つミズチ。

 息をはき出し、無理に笑顔を作る。

 扉を開け、ミズチが部屋に入る。中は白色を基調とした、いかにも病室といった雰囲気の部屋だ。点滴はない。

「よう。近くまで寄ったから――」

「ちょっと。お兄ちゃん。また無茶なことしてるんでしょ」

 ロングヘアをすこしなびかせて、少女が言った。パジャマ姿で、ベッドの上に座っている。

「カエデ。いきなり、なんだ」

 ミズチの妹は、するどい。

「なんだも何もないよ」

「わかった。無茶はしない。これでいいだろ?」

 黒い服の男性は、花束を花瓶に入れている。包みをうまく取れず、渋い顔をした。

「よくないよ」

 ほおをふくらませるカエデ。

「病気なんだから、無茶をしちゃダメなのは、カエデのほうだろ」

 カエデは、難病を抱えている。ミズチの顔に力が入った。

「だいじょうぶだから。カエデは」

「絶対に治るから、心配するな」

 兄は、妹の頭をなでた。


 甲高かんだかい音が響く。

 いつものように、公園の辺りは紫色。色に染まっていないものはよっつあった。

「フェブ!」

「負けるな、メイ!」

 リクと戦うミズチ。痛みが連動しているため、直接戦っていない二人も、少し身体からだが動いている。

「マーチ! シュート」

 矢が飛んできた。それを切り払うメイ。悔しそうな顔をして、リクが下がる。

 ネネの横やりが入り、勝負はお預け。

「次こそは、ケリをつけましょう」

 リクが去っていく。

「ダメージを受けたところを狙うか」

「そんなこと、しないって」

 ネネがカンサ・マーチをしまう。いぶかしげに、ミズチもカンサ・フェブをしまった。イマジン空間が消えていく。

 そこへ、アラタとコハルがやってきた。遠くからイマジン空間を見つけ近づくアラタのあとを、コハルがつけてきたのだ。

「よう。マモノ退治か?」

「なになに? 新しいゲーム?」

「げっ。コハル」

 上を見て左を見たアラタが、ふたたびボブカットの女性のほうを向いた。難しそうな顔をしている男性を押しのけて、コハルが聞く。

「アラタの友達ですか?」

 その言葉に、なんといっていいか分からない様子のミズチ。

「うん」

 ネネはあっさりと答えた。ミズチをひじでつき、返事をうながす。

「ああ」

「やっぱり。隠し事のひとつは、これか」

「どうでもいいけどさ、名前を教えようぜ」

 アラタの提案で、自己紹介をする面々。アラタだけが名乗らない。

「あたしは、隱岐おきコハルだよ」

「オレは、楠堂くすどうミズチ」

「わたしは、小村崎こむらさきネネ」

「せっかくだから、四人でどこか行こうよ」

 コハルの提案で、四人で遊びに行くことになる。

 こっそりと、リクがあとをつけていることを、知る者はいなかった。

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