第3話 変化
「江嶋さん」
ドキッ
胸が大きく跳ねた。
「何?」
「最近どうですか?」
「えっ?別に、これと言っては」
「そうですか?あの、江嶋さんって、お酒飲むんですか?」
「お酒?前よりは飲まなくなったよ」
「へぇ~。じゃあ、好きな食べ物とかは?」
「好きな食べ物?基本、何でも食べるけど」
「そうなんですね!」
「うん」
「俺、友達と良く行ってる店あるんですよ。すっごい美味しいから是非、江嶋さんにも食べて欲しいです」
「そうなんだ」
「最近、仕事も江嶋さんのお陰で落ち着いて来たし出掛けません?」
「そうだね。機会があったらね」
「ヤッターっ!」
「えっ?」
凄く喜んでいるのが分かった。
《社交辞令だよね?》
私は深く考えないでいた。
ある日。
「江嶋さん」
「あっ!中常君」
別の女子社員から声をかけられ呼び止められた。
「ここ、間違ってるよ」
「あっ!本当だ!」
中常君は、私に軽く会釈をし、彼女に呼び止められた為移動。
《何だったんだろう?》
結局、その後、何も変わらないまま月日が過ぎる。
別に期待している訳じゃないけど私の心は異変が起き始めていた。
彼に対する想いだ。
最初は、『また新しい人。若いから大丈夫かな?』なんて思っていた。
だけど、彼は違った。
社交的でムードメーカーで。
明るくて、彼がいるだけで場の雰囲気が変わる。
だけど、時折、無理しているなって思う時がある。
みんなのアイドルみたいな彼だから。
そう彼の雰囲気に気付く自分に驚いている。
何度か一人でいる所を見かけては辛そうにして、ぼんやりとしている所を見かけた。
「江嶋さん?」
「あれ?中常君、まだ帰ってなかったんだ」
「はい。そういう江嶋さんは残業ですか?」
「あ、うん…」
私は突然の出来事に胸が大きく跳ねる中、私の側に歩み寄る中常君に私の胸はうるさい位ドキドキ加速していく。
「手伝いましょうか?」
「えっ?あ、ううん、大丈夫。これは私に任された仕事だから」
「そうですか?」
「うん。ありがとう。さあ、帰った帰った」
「それじゃ、お先に失礼します。お疲れ様です」
「うん、お疲れ様」
中常君は、帰って行く。
「絶対、心臓もたない…」
この想いは認めざるをえなくて
私は彼の存在が
私の胸をぎゅうっと締め付ける。
他の異性と話をしているのを見ると気になってしまう。
誰にでも対等な彼。
しかも最初は、気にも止めていなかったけど、彼は良く見るとイケメンだ。
だからモテる。
だけど最近、みんなに向ける笑顔が私にだけ特別なら良いのに…と…
そして私は彼が好きなんだと………
私から色々話をかけたいけど、近付く事が出来ない。
自分の家庭の環境とかあって一歩が踏み出せない。
バッと書類が取り上げられる。
「えっ?」
振り返る視線の先には
「中常君っ!?」
「一人よりも二人でやった方が早いでしょう?一応、俺、江嶋さんの部下ですよ」
「そうだけど…」
「江嶋さん、一人で頑張り過ぎちゃうから」
ニコッと微笑む中常君に胸が大きく跳ねる。
「……………」
そして……
「終了!」
中常君は終わったようだ。
「江嶋さん、終わりました?」
「あ、もう少し」
気付けば私の側に中常君がいた。
私の胸が大きく跳ねる。
すると、振り向く中常君と視線がぶつかり私の胸は再び胸が大きく跳ねた。
私は、すぐ視線を反らす中、身体全身が熱くなったのが分かった。
《絶対に赤いよ…》
スッと背後から手が伸びてきたかと思ったらパソコンのキーボードを打ち出す人影。
中常君だ。
まるで背後から抱きしめられているようになっていた。
私の胸は更にドキドキと加速していく。
全て打ち込んだ中常君。
「はい、終了ですね!」
「う、うん…そうだね…あ、ありがとう…」
「いいえ~」
スッと背後から離れる。
「さあ、帰りましょう!」
「う、うん…」
ヤバイ…!
ドキドキが収まらない。
「あっ!そうだ!江嶋さん、今度の週末空いてますか?」
「えっ?週末?あ、うん大丈夫」
「じゃあ出掛けません?」
「えっ!?」
突然のお誘い。
《えっ!?》
《つまりそれって…ある意味デートなんじゃ…》
「はい。連絡先です」
「えっ?」
メモ書きされた電話番号。
私も渡す事となり、まさかの電話番号交換。
「職場では話す機会ないし、こんな時じゃないと渡せないから」
「中常君」
「詳しい事は連絡しますから登録しておいて下さいね」
「う、うん」
私達は会社を後に帰る事にした。
その後、すぐに連絡が入り日程と時間を綴ったメッセージが届いた。
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