第3話 友人編

高校生としての生活はまだ落ち着かない。

 授業オリエンテーションに体力測定、クラス分けテスト、クラス内コミニケーション。

 同中で固まったり、よく知らん人の中に飛び込んだり、皆慌ただしく動いている。

 かくいう俺も頑張って新しく誰かと仲良くなろうとしている最中である。

 一応一人(光弥)いるものの、他にも仲良くなっておかないと色々と不便が発生する。

 教科書忘れたときとか、突然保健室に行かなければならなくなった時など、ちょっと頼める友人がいないと困るのだ。

「………不純な動機が顔に書かれているぞ」

「え?」

 教室の隅の席で一人黙々と読書をしている眼鏡男子に話しかけようと腰を浮かしたところで俺は隣でふんぞり返るようにして背もたれにもたれかかる幼馴染に呼び止められた。

「お前、打算的にものごとを考えるくせに思ったことが顔に出すぎなんだよ。そんな顔で話しかけたら相手ドン引きするぞ。」

「俺、そんな顔してた?」

「してたね。困ったときの伝手ぐらい作っとこうみたいな顔してた」

 思っていたことを完璧に言い当てられ、力の抜けた俺は椅子に倒れるように座りなおした。

「………そっかぁ、俺そんな顔してたんだぁ」

「お前、そういうの相手に失礼だからやめろよ」

 いつも自由奔放で俺のことを顧ないこいつに言われると余計心をえぐられる気がした。

 

 こうして俺の「レッツ! お友達大作戦!!」は幼馴染の諭し《妨害》により幕を閉じた。 

 ただ、俺と似たことを考えていたのであろうクラスメイトが3人ほど話しかけてきたので、固い握手を交わしておいた。

 オーバーじゃないかって? 全員俺のことを戦友みたいな目で見てきていたから問題はない。

 光弥なんか肩組み始めてたし。 






 友人もでき始めて、明日には授業も本格的に動き始める。

 授業が楽しみなわけではない。

 むしろ勉強は苦手だ。

 それでも、少しずつ高校生らしくなっていく生活に、高校生らしくなっていく自分に、着慣れていく制服に、心が密かに踊っていたのは確かだった。

 きっとその時が一番幸せだったんだと思う。

 幸せが、何気ない日常に隠れているのだとしたら。

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