第2話 部活編2
「おはよー」
「おはよ」
一年は先輩の朝練の準備の為に朝早くに学校に行かなければならない。
これはテニス部だけでなくほかの運動部もそうだ。
眠そうにあくびをまき散らす同級生達に紛れて校門をくぐる。
家が近い俺たちは部の一年の中でも一番早く着く、と思っていたら
「おつかれ」
先客がいた。
「あ、おはようございます。早いっすね
光弥が先んじて挨拶を返す。
「おはようございます」
俺も遅れながら挨拶して素早く自分の荷物を下ろすと副部長の田辺さんからボールかごを受け取った。
「よろしく。今日は西コートだから、そっち運んどいて」
「うっす」
かごをカートに積むと光弥がベルトとハンドルにシングルスポールも持って部室から出てきた。
「朝ぐらい打っちゃダメかねー、人少ないし」
「今だけだって。ネット張り終わるころには来てるよ」
「つまんねーの」
西コートは東に比べると少し古びている。
エンドライン辺りの土が削れていてへこみが目立つし、ネットもひびが入っている。
ネットにベルトを通してシングルスポールを立ててベルトがポールの線の高さに合うように締める。
あとはハンドルを回してネットを張れば一年の仕事は終わりである。
「………先輩どころか、一年も来てないんだけど」
「確かに、みんな寝坊か? 俺も正直昨日の練習で筋肉痛がひどくて朝起き上がるのマジ辛かった………」
途中から手伝わずに辺りをキョロキョロしていた光弥を軽く小突き俺も見回すと、確かに田辺さん以外誰も来ていない。
「みんな今朝は用事あって休みだってさ。せっかく張ったんだし君達コート自由に使っていいよ」
かごをエンドラインの近くまで寄せ、サービス練習をし始めた田辺さんがそう声をかけてくれた。
「ほんとですか⁈ ありがとうございます!! 明、ラケット取りに行こうぜ!」
光弥はそれを聞いた瞬間には走り出しており、言い終わるころにはコートの出入口の外までたどり着いていた。
「ありがとうございます」
「おう」
俺は田辺さんに軽く頭を下げてから光弥追いかけると、後ろから気恥ずかしそうに小さく返事したのが聞こえた。
3面あるコートの1面を借りてアップもそこそこに光弥の提案でゲームをすることになった。
お互いコートに立つのは久しぶりのはずなのに光弥の動きには少しの鈍さも感じない。
「あれぇ、どうしたのかなぁ? ずいぶん弱くなってんじゃないのぉ?」
「うるせぇ、久しぶりなのにまともに打ててるおまえが異常なんだよ!」
対して俺は勘が戻っていないことと、もともと上手くなかったことも合わさってミスや空振りを連発していた。
それでも2ゲームもすれば勘も戻りボールとの距離感も掴めてくる。
光弥に押されていることには変わりないがいい球を打ち返せることが多くなり自然と気分が高揚してきていた。
「うお、………ドロップかよ。明のくせに生意気な」
「ふふん、ラリーじゃおまえに敵わなかったからな。三年間必死で磨いてきたんだよ」
「なんで試合で使わなかったん? 最後の試合もやってなかったよな」
「それは聞くな………、ゲームに組み込む段階には至らなかったんだよ。ってなんでそれをお前が知ってるんだ? 引退試合バックレていなかったはずじゃね」
「あ、い、いや、ビデオ見せてもらったんだよ」
「ふ~ん?」
というように所々良いところを見せつつも、終始光弥に押され気味のまま0-6で俺はストレート負けをした。
あと何度、こんな風にテニスができただろうか。何度でも出来ると俺は漠然と信じていた。
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