#代行サービス

QR

 「なぁレン、知ってるか?あのうわさ・・・」

 「ん?うわさ?」

 昼休みぼーっとしている俺に同じクラスのケンが話しかけてくる


 「『#《ハッシュタグ》代行サービス』だよ」

 「#代行サービス?」

 なんだそれは?

 

 「知らないのか?レン」

 「あぁ、初めて聞くな・・・何なんだ#代行サービスって?」

 俺がそう聞くとケンは俺の机の前に椅子を置き、そこに向かい合うように座り話し始める


 「都市伝説レベルの噂なんだけどさ・・・何でもそれはカイッターで『#代行サービス』と一緒に同じように#をつけて自分の望みを書くと、なんとその望みを叶えてくれるらしいんだ・・・しかも何でも・・・」


 「何だその馬鹿馬鹿しい噂は・・・」

 「でも、実際に叶えて貰ったって人もいるんだぜ?」

 「どうせ、デマだろ?」

 「そうなのかなぁ・・・・?」


 「おまたせ!レン君・・・!」

 俺達がそう話していると俺の犬であるタキオがパンを抱えて走って来る

 「おう!お疲れー、ちゃんと俺が言ったもの購買で買ってきたか?」

 「うん・・・」


 「どれどれ・・・よし、ちゃんと買って来てるな・・・よし、じゃぁ今回は腹パン一回で済ましといてやるよ」

 「えっ・・・」

 「俺、言ったよな?3分で買って来いって・・・でも、10秒も過ぎてるぞ・・・」

 俺はそう言ってタキオにストップウォッチを見せる


 「たった10秒で、そんな・・・」

 「何なら増やしてもいいんだぞ?」

 「ひっ・・・!!」


 「今のお前に残された選択肢は2つだ・・・1、俺に気絶するまで腹パンされるか・・・2、それともたった1回の俺のフルパワーの腹パンを食らうか?」


 俺はタキオの耳元に近づきつぶやく

 「どっちを選ぶ・・・?」

 

 「2番で・・・・」

 「よろしい・・・・」

 俺は微笑みながらタキオの肩を持つ


 「いつも、サンドバックになってくれてありがとう!!忠犬タキオ君・・・・!!!」

 そう言って俺は思いっきりタキオの腹に拳をめり込ませる


 「ぐ・・・ぼぉろろろろろ・・・・・・」

 俺の拳がきれいに入ったタキオはマーライオンのごとく口から吐き出す

 

 「うわっ、こいつ吐きやがった・・・・!」

 「うっわ、汚ねぇー・・・」

 「行こうぜ、ケン」

 「あぁ・・・」

 そう言って俺とケンは教室を出る


 「おっと、その前に・・・」

 俺は引き返すと用具入れからバケツとぞうきんを取ると廊下に行き、バケツに水を汲み教室に戻る


 「ちゃんと後始末しとけよー?」

 俺はそう言いながらタキオの頭の上でバケツをひっくり返す

 「マーライオンのタキオ君」

 

 「うわっ、その例えマジいいじゃん!!レン、芸人みたい!!」

 「マジ!?俺、芸人目指そうかなー?」

 「イイね!俺、相方に立候補するわ!」

 「よし、じゃぁ2人でOSC行くか!」

 俺達はそう言いながら教室を出て行った


 


 あの後、タキオの胃液まみれの教室に戻るのが嫌になって学校を早退した俺は家に帰り自分のベットで横になっていた

 「あぁー腹減った・・・・」

 

 時計を見るともう夜の8時をまわっていた


 俺は1階に降り、キッチンに向かう

 「なんか、食べるもん・・・っと」

 俺はそう言いながら冷蔵庫を開けるが中には何も入ってなかった

 「くそっ、何も無しかよ・・・!!」

 そう言いながら俺は冷蔵庫の扉を蹴る


 ここ1か月、レンの両親は仕事で海外に行っているため家を不在にしている――――つまり冷蔵庫の中身がないのは買い出しをさぼったレンの責任だ 


 「痛ってー!!」

 そんな事にも気付かずレンは足を抑えてうずくまる


 「あー、くそっ腹減ったな・・・そうだ」

 レンはある事を思い出した―――――それは今日の昼、ケンが言っていた事だ


 レンはスマホを取り出しカイッターを開く

 「えーっと、確かカイッターに#代行サービスて書いて願い事は・・・・#かつ丼食べたいっと・・・」

 レンはとりあえず大好きなかつ丼を頼む事にした

  

 「まっ、こんなのホントに来るわけないか・・・」

 そう言いながらレンが買い出しに行く準備をしていると


 (ピンポーン・・・!)


 「はーい!」

 レンは玄関に向かう


 「どちらさんでしょうか・・・?」

 そう言いながらレンが玄関を開けると


 そこには胡散臭い笑みを浮かべた男が立っていた

 「初めまして!私、#代行サービスのカバタと、申します」

 「ご注文の品を届けに参りました!」

 「ご注文の品って・・・?」


 「カイッターの方で書かれましたよね?」 

 「はい・・・確かにってことは・・・」

 「はい、お届けに上がりました!こちらかつ丼になります!!」

 そう言ってカバタはオカ持ちからかつ丼を取り出す


 「マジかよ・・・」

 レンは今、目の前で起きている事が信じられないでいた

 

 「あの、お客様・・・お受け取りになられないのですか・・・?」

 カバタが困ったように言う

 「あっ、もちろん受け取ります!!」

 

 「良かったです!それではこちらかつ丼です・・・!」

 「あのお代は・・・?」

 レンが財布を取り出すと

 

 「頂いておりません、私共は皆様の望みを叶えるお手伝いがしたいだけですから!」

 「そうですか・・・・」

 「それでは私はこれで、今後とも#代行サービスをごひいきに!」

 そう言うとカバタはレンの家を去って行った



 「・・・・・・・・」

 レンは空になった丼を前にしばらく考える―――――そして、


 「これは使えるぞ・・・」

 レンは悪魔の笑みを浮かべながらつぶやいた


 

 それからレンは頻繁に#代行サービスを利用した

 

 遊ぶ金が無ければ#100万欲しいと書き、学校のマドンナと付き合いたい時は#学校のマドンナと付き合いたいと書く―――――そして、書いたことは全て現実になる・・・・

 レンにとって#代行サービスは無くてはならない存在となっていた



 「さて、今日も頼むか・・・」

 そう言うとレンはスマホを取り出しカイッターを開く


 「#代行サービスで・・・」

 (今日は寿司だ!)

 「#特上寿司が食べたいっと・・・・よし!」

 レンが書いてから少しして


 (ピンポーン・・・!)


 「きたきた・・・!」


 「はーい!」

 玄関を開けるとそこにはいつも通りカバタが胡散臭い笑顔が立っている


 「毎度ありがとうございます!#代行サービスです!」

 「いつも、ありがとうございまーす!」

 「いえいえ、こちらも今日ごひいきにして頂いて・・・・」

 カバタはそう言うとレンに特上寿司を渡す


 「ありがとうございます!」

 「それでは私はこれで・・・!」

 そう言うとカバタは足早に去って行った



 「おすし!おすし!」

 この時レンは気付いて無かったいつもなら最後にカバタが「今後ともごひいきに」と言うのに今回は言わなかった事を


 「頂きまーす!!」

 そんな事も知らずレンは寿司をすべて平らげた





 「そろそろ時間かな・・・・」

 そういうとカバタは懐中時計を閉じレンの家の玄関の前に立ち、手をかざす

 (カチャッ・・・)鍵が開く軽い音を確認したカバタは玄関を開ける 


 「うんうん♪ちゃんと効いてくれたようだね!」

 カバタは台所で倒れているレンを見てうれしそうに言う


 「よし、まずはレン君を椅子に座らせて・・・っと」

 カバタは手際よく一連の作業をやっていく

 

 「あとはこのレン君の筆跡と100%一致する遺書を置いて・・・完成!いやー、我ながらいい仕事したな―・・・」

 カバタはうんうんとうなずく


 「そろそろ、失礼させてもらうかな・・・」

 そう言ってカバタはレンに向かって頭を下げると

 

 「#代行サービスをご愛好いただき誠にありがとうございました!ぜひとも地獄にて今まで自分がしてきた事を後悔なさってください!・・・・まっ、言っても聞こえないけどね♪」

 そう言うとカバタの体はもやのようになりやがてカバタの姿は消えていった

 


 「続いての特集です、先日発見された農薬をかけた寿司を食べ自殺した高校生について―――――河原さんどうでしょう、現場では遺書とみられる物も発見されていますが・・・・」

 「そうですねぇ・・・さしずめ今回の自殺は『最後の晩餐自殺』と言ったところで―――――――」


 テレビではレンの自殺の事についてメディアが取り上げている

 

 「今回は当サービスをご利用いただきありがとうございました―――――――タキオ様、様・・・・」

 カバタは目の前にいる2人に頭を下げる

 「いえいえ、こちらこそありがとうございます」

 「本当に・・・・あいつを殺ってくれてありがとうございます!」


 「それにしても意外ですね・・・」 

 「何がですか?」

 「タキオ様はレン様によくいじめられていますが、ケン様はどちらかというとレン様のご親友のように感じましたが・・・・」

 カバタがそう言うと


 「あいつが親友?そんな気持ち悪い事言わないでくださいよ・・・・・あいつは昔小学校の頃に俺をいじめてきた奴ですよ?そんなやつが親友なわけないでしょ――――っていうかあいつがうちの学校で何て呼ばれてるか知ってます?」

 「はて?」

 

 「校内で殺したい奴NO.1!」


 「ハハハッ、ここまで人望が無いとはあの人も不遇ですね~」

 そう言いながらカバタは出された紅茶を上品に飲む


 「ともかく、今回はあいつを殺していただきありがとうございました!!」

 「ありがとうございました」

 「いえいえ!こちらこそご利用いただきありがとうございました!今後ともごひいきに!」

 そう言うとカバタは靄のように消えていった




 カバタが去った部屋にはケンとタキオが残された


 「ありがとうケン君――――――協力してくれて・・・」

 「なぁに、こんなのお安い御用だよ――――俺があいつに#代行サービスについて話してあいつが利用しているのを確認した上で噂が本当だと分かったら、お前が『#レンを自殺に見せかけて殺して』って書く・・・まさかここまで上手くいくとは思わなかったけどな!」

 ケンが大声で笑う


 「本当にね!」

 それにつられてタキオも大声で笑う


 「「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっっっっっっっっっっ・・・・・・・・・!!!!!!」」

 2人の狂ったような笑い声が部屋中に響き続けた





 #代行サービスのご案内

 ~どうも、#代行サービスのカバタです!あなたも当サービスをご利用になりませんか?今すぐ、カイッターにて#代行サービスと書きその後に#を入れ願い事を書いて投稿してください!どんな願い事でも承ります!~

 #代行サービス カバタ

  

 



 

 


 


 

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