第6話 女性警察官とアクマ
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
俺は曲刀を振るう。
何処から出したのかって。
勿論タキシードの中からだ。
紳士の嗜みだろう。
刃物の一本位は服の中に隠しておく物なのだ。
女性警察官の上半身が斜めに切断。
左肩から腹に向かって、奇麗に切れた。
ズルリと頭と肩が落ちていく。
中から血と体液がこぼれ、カフェの床を濡らす。
「ぁあああああ、ぁやぁあああ」
もう一人の警官が呻き声を洩らす。
後ろにいたカフェの店員らしき男が叫び声を上げる。
「うわっ、わあああああああああ!!!」
五月蝿いな。
男のダミ声は聴きたくない。
女性の奇麗な悲鳴が聴きたかったのに。
俺は曲刀を投げつける。
男の顔面に奇麗に刺さった。
男の後頭部から刃が突き出る。
信じられないような血の量が流れ出る。
男はバタンと後ろに倒れた。
「キャアアアアアアアアアアアアァアァ!!」
そう、それそれ。
女性警察官が悲鳴を上げる。
カフェ中に響き渡る甲高い声。
俺はカフェの机に飛び乗る。
マントを翻し、ステップを踏む。
両手に拳銃を持つ。
タキシードの裾から現れたのだ。
左右に腕を伸ばし、両手に拳銃、回転する俺。
カフェが騒然とする。
悲鳴を聞いて立ち上がる男を女を狙い撃つ。
「ヒュウ、ヒュウ」
喝采が入る。
見ると小鳥遊リリスが親指を突き出してる。
グッドのサイン。
俺は回転しながら華麗に頭を下げる。
個室スペースから出て来る寝ぼけたサラリーマンの眉間に穴が開く。
立ち上がった中年女性の心臓部を銃弾が貫く。
腹を撃たれた大学生風の男が物も言わず倒れる。
見るとカウンターの奥に女性店員がいる。
俺は空中を歩いて、カウンターに辿り着く。
店員は何かのボタンを押そうとしていたみたいだったが、押す前に腰が抜けたらしい。
座り込んで震えてる。
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい」
「そのボタン、非常ベルか何か?」
「すいません、何か有ったら押せって言われてるから、つい。
店長に言われてるので本当にごめんなさい・・・」
俺の前で震えながら謝る女性。
興奮するなぁ。
俺と同じく位の年頃。
一つ下辺りかな。
「警察に繋がってるのかな?」
「警備です。押すと警備の人が来るって」
へぇ、そんなの有るんだ。
「押してみてください」
「えっ、でも良いんですか?」
店員が俺の方を見る。
下から上目使い。
少し脅しちゃおうかな。
「押してください。
押さないとどうなるか」
俺は銃口を女性店員に向ける。
「ヒッ、止めて止めて。
押します、押しますから」
店員がボタンを押す。
何だか音声が流れる。
良く見るとボタンの横に小型のマイク、スピーカーらしいのも有るな。
「事件ですか?、事故ですか?
応答できる状況ですか?
今、カメラを確認しています」
カメラ?
何処だろう。
見回す俺の視界に有った。
カウンターの奥、天井近くに。
他にもいくつか店内に有りそうだな。
俺は華麗に空中を回転して見せる。
イェーイ、見てるかい。
そのまま拳銃を構える。
店員さんに向けて。
分かり易いように。
サービス精神豊富な俺だ。
「キミ、止めなさい。
凶器を降ろしなさい。
カメラで姿は捉えています。
今、警備員がそちらに向かっています。
凶器をしまいなさい」
へー。
こんな仕組みが有るんだ。
いいなぁ。
俺がバイトしてたファミレスには無かったぞ。
畜生、ケチったな。
従業員の安全の為だろ。
この位は付けてくれよ。
「お嬢さん、ここで話した声は向こうに聞こえているのかな」
俺は店員に訊く。
店員はビクビクしながら答える。
「分からないです、聞こえてると思います。
使うの初めてなんです」
「はーい、カメラの向こう側。
警備会社の人聞こえてるかな」
俺は作り声を響かせる。
低音を聞かせて、我ながら良い声。
「聞こえている、すぐ凶器を捨てたまえ」
おお反応した。
後ろで何か聞こえる。
「主任、あの人アレです。『狂った奇術師』です。
今朝からニュースで流しっぱなしの」
「何だ、それは知らんぞ。
今、大事な所だ。
話しかけるな」
知らないのか。
ガッカリだな。
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
「私をまだ知らないですか、残念ですねぇ」
俺はカメラを睨み低音を効かせる。
「お前のせいだぞ、覚えておけよ」
俺はいきなり拳銃の引き金を引く。
女性店員さんの胸に穴が開く。
「あ、ぁぁぁぁぁぁ」
店員さんは自分の胸を眺めながら何か言っていたがそのまま崩れ落ちる。
装置が騒がしい音を上げる。
「きゃぁあああああああ」
「うわっわわわっわあわ」
「キミ何をする、や、止めなさい。
死んでしまうぞ、分かってるのか、殺してしまうんだぞ」
「もう完全に死んでいますよ。
心臓を撃たれたんです。
生きてる訳無いでしょう。
さっき言いましたよね、貴方のせいですよ。
貴方が私を知らなかったから彼女は死んだんです」
「わ、私だと…」
「そうです、貴方のせいですよ」
「もう一人の人。
私を知っていた方の人。
録画出来てますか。
映像をどんどん流しなさい。
テレビ局に提供なさい。
ネットに上げなさい。
これは要求ですよ。
従わなければ、もっと人が死ぬ」
「は、はい」
女性の声が聞こえる。
「キ、キミ。
防犯カメラで撮った映像は守秘義務がある。
勝手に流出など許されんぞ」
「だってやらなかったら…」
うるせーな。
俺はボタンの着いた機械を銃で撃つ。
向こうの声は聞こえなくなった。
さあ、警備の人は映像を流してくれるだろうか。
不安が残るな。
インターネットカフェを見渡す。
机の下や、個室に隠れてる人間がまだいるな。
カフェを出て行こうにも出口はカウンターのそば。
カウンターに俺がいるのだ。
逃げ出す事も出来なかったのだろう。
女性警察官が震えているのが目に入る。
小鳥遊リリスに質問していた方。
俺の肩を押してきた女を先輩と呼んでいた後輩ちゃん。
カフェの床にペタンと座り込んで震えている。
その視線の先には先輩ちゃんの死体。
上半身が取れちゃったヤツ。
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
俺は笑いながら彼女に近づく。
「そこの後輩警察官の方」
「ヒッ、ヒッヒィヒィッ」
「立ちなさい!」
俺は彼女を立たせる。
女性警察官はパンツスタイル。
ダボっとした作業着みたいな野暮ったい服装。
残念だな。
コミックだったら絶対スカート姿だろう。
んんん。
もしかして出来るかな。
「レディース&ジェントルマン。
隠れている方々。
カメラの用意は良いですか。
『狂った奇術師』のサービスタイム!
良いですか、良いですね。
キチンと動画に収めて、ネットに上げてくださいね。
サボった悪い観客の皆さんは私がオシオキしちゃいまーす」
俺は天井に向けて発砲する。
女性警察官がビクッと目を閉じる。
店内のアチコチ、個室の中机の影からスマホを取り出す音が聞こえる。
よーし、いい子達だ。
「はーい、では行きますよ」
俺は曲刀を拾い上げる。
奇術師のステッキの様にそれを振る。
女性警察官の下腹部に刀の先を向ける。
「あああああああ!」
女性は悲鳴を上げるが、別に切ったりはしていない。
ポンと手品のような音がして衣服が入れ替わる。
タイトミニのスカート。
女性警察官の野暮ったいパンツがスカートに替わったのだ。
女性はそのままずるずるとしゃがみ込む。
刀を自分に向けられたのがそんなに恐ろしかったのか。
なんせミニのスカート。
しゃがみ込むと下着が丸見え。
淡い青色。
ワンポイントのリボン。
「どうだい、女性警察官の下着見せ動画はキチンと撮れたかい」
俺は店内に問いかける。
応えは無いけれど、伝わってくる。
邪念。
どぶ泥に満ちた、汚れ切った魂の叫び。
狂った怨念。
薄汚い好奇心。
暗い欲望。
集中してくる。
今ここに集まって来るのが感じられる。
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
「さあ、お嬢さん立って。
サービスシーンはこれから。
まだ休憩時間じゃない。
観客が待っているんだ」
女性警察官がイヤイヤと言う風に首を振る。
可愛い仕草だが、そんなモノに惑わされる俺じゃない。
女性のすぐ横の地面を斬りつける。
大きい曲刀で。
女性は勿論すぐに跳び起きた。
出来るんだからすぐ立てよな。
「さあ、その服を脱ぎなさい」
「何だよー、それかよ。
男の子はこれだからな」
小鳥遊リリスがブーイングを浴びせるが、知ったこっちゃ無い。
あのな、動画の再生数を上げるならこれが一番に決まってるだろ。
「ホントに~、それが目的?
自分が見たいだけじゃ無いの」
女性警察官はグズグスしてた。
脅しに机に隠れてたヤツを拳銃で撃ったら素直になった。
撃ち殺された死体を見せつけたからかもしれない。
「ほーら貴方のせいで撃ち殺されましたよ。
何の罪もない市民が貴方が服を脱ぐのを躊躇ったせいで死んでしまった」
女性が制服を脱いで、下着が見えて来る。
ブラも青。
青い下着、結構胸が有る。
ブラとパンティだけになった女性はこちらを窺がう。
これもですかと言うように。
本当は勿論それも外してと言いたい気持ちも有るのだが。
そうしたら18禁動画になっちまう。
「キチンと正面を見て、真っすぐ立ちなさい」
女性は一瞬絶望的な表情。
今この時もスマホのカメラが女性に向けられている。
誰か既にアップロードしてるかもしれない。
そこに自分の素顔を晒すのだ。
だけど俺が拳銃を振って見せたら諦めた。
先程撃ち殺した死体はまだ見える場所に有る。
脅しが相当聞いたのだろう。
先程まで後ろ向きに俯いていた彼女。
スマホで撮影されるのに警戒してたのだ。
それが店内の方を向く。
下着姿の全身を晒す。
女子の下着って奇麗だよな。
野郎のとは大違い。
スマホから視線は集まっている。
間違いない。
緊張感。
薄汚い物、汚泥に満ちた執着。
欲望。
暗い念が俺に流れ込んでくる。
少しキレイ目の女性警察官。
多分20代前半だろう。
目の前で制服を脱ぎ、下着を晒した女性。
男なら誰でも目線を奪われる。
俺は曲刀を突き刺す。
後ろから前へ大きく。
女性警察官の胸から刃物が生える。
背中から胸へ大きな鉄の刃が貫く。
あ、あ、何か言おうとしたみたいだけど声が出せない。
口から血を溢れさせる女性。
ゆっくりと後ろへ倒れる身体。
俺は刃物を抜く。
と胸の切り傷から、大量に赤黒い液体が流れ出る。
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
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