20枚目 いとしきいいとうさん
幼少期の好奇心を、大人は塞いではいけない。
子どもの興味・探究心は追求させる事で、人間的成長を促し、神童や天才が出現する礎を作る。勉強、運動、音楽、絵画、ダンス、研究、読書…なんでもいい。
とにかく好きに学び、遊ばせてあげよう。
ではこの子はと言うと、なんでも鼻の穴に突っ込むのが好きなのだ。
素晴らしい個性じゃないか。誰にも否定する権利は無いし、例え肉親であっても
その行為を辞めさせては勿体ない。
なるほど、最初は自分の小指を入れて、今じゃ親指も余裕で入ると。
すごいぞ!努力したんだね、えらい!この調子だ。
なに、BB弾を突っ込んで?セロテープを切ったものを丸めて詰めて?
大いに結構!事故にならなければ、過去の出来事なんか笑い話さ。
次はなんだい?
おっとホラ、天命が来た様だよ。
「ぎぃ痛い痛い痛い痛い痛い!!!ちょっ!ま、マジで痛いって!!!
千切れちゃう…おでこ千切れちゃうからぁああ!!」
フンガフンガ鼻を大きく広げた5歳児は、ティッシュに興味を示した。
「パーツがっ…顔の全パーツがっ!う、上に引っ張られる…た、助けてっ!
誰かぁぁぁあああぁああ!!」
サッと軽妙な音を上げ、ティッシュ箱から引き抜かれるタスク。
「ゼェ…ひでぇ…いてぇよぉ。眉間から…破れちまうところだったぜ…」
そんなタスクの姿をインプットして何かインスピレーションが湧いたのか、
不器用ながらもクルクルと上手に捻り上げていく。
「…!だからぁあイダイイダイ!!じぬっ!じんじゃうよぉぉぉ…!!!」
細い螺旋状に成形したタスクを見て、満足そうな表情を浮かべる。
なんというクリエイティビティ、だから子どもは天才なのだ。
イメージ通りに創り上げたら、次にやることは唯一つ。
右鼻の穴にその先端を持っていく。
徐々に、慎重に…最新の注意を払いながらタスクを鼻に入れる。
「へ、ふぁ…ぶぃえっっくしぃっゆぅうううううううう!!!!!!」
ブレスユー。
肉体から魂が飛び出てしまう程、ワイルドでセクシーなクシャミだった。
「のぉぉうおおおおわぁああっぁおあああっ!!!!!!」
轟音と突風と唾液をゼロ距離で浴びながら、自己の運命を呪うタスク。
「そんなことに…お、俺を使うんじゃねぇよぉおおおぉおおっ…!!!!」
彼の声も虚しく、大した役割も全う出来ぬままゴミ箱に捨てられるのであった。
5歳児は満足したのかスッキリしたのか、布団に戻り昼寝を再開するのであった。
・死因:溺死
・来世:トイレットペーパー
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