~本気の恋~

“恋”。






それがどういうものなのか、俺は今までずっと知らなかった。知ろうともしなかった。

人を好きになっても、意味がない。どうせ父さんみたいに最後は捨てられるんだと思っていた。






父さんは会社の社長だったから、金目当てで寄ってくる女ばかりだった。やっと結婚までいって、俺という子供が生まれても、やはり離婚され捨てられた。その後も再婚しては離婚、再婚しては離婚の繰り返しで、毎回騙されている父さんを、俺は惨めだと思っていた。

そして父さんは、金を全部女に持っていかれて、自殺した。






父さんの遺書には、俺に父親らしいことをしてやれなかったという自責の念と、俺を残して自分で命を絶つことへの躊躇い、そして人生は幸せだったということが書かれていた。

その遺書を見た途端、俺は鈍器で頭を殴られたような衝撃にみまわされた。






何が、楽しかったんだよ!?女に弄ばれて、捨てられて、金を持っていかれただけの人生の、どこが楽しかったと言えるんだ!女なんてみんなどれも同じだ。糞みたいなやつしかいないんだ。俺は、絶対に父さんみたいにはならない!






そう思っていた。そう思っていたのに、凍りきった俺の神経や心を溶かしてくれた奴がいた。






鈴音ちゃんは、やっぱり不思議な子だ。俺は、鈴音ちゃんの言葉や仕草、その一つひとつにだんだんと惹かれていった。そしていつの間にか、恋をしていた。今までのような偽りのものじゃなくて、本気の恋。






___『好きっていう気持ちは、とても素晴らしいものですよ!』






鈴音ちゃんの言う通りだ。あの時の俺は、その言葉を否定したくてたまらなかったけど、今は共感できる。






ふとした瞬間に頬が緩むのも、その人を見るだけで緊張するのも、話しただけできゅんとなるのも、初めての体験。それらは全部、鈴音ちゃんが気づかせてくれた。

決めた。この合宿の四日目。最終日に、人生で初めての告白をする。

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