~黒い影~

数日前に、それまで付き合っていた女を捨てた。

その女とは二ヶ月ほどの付き合いで、今までで一番長かったように思う。






鈴音ちゃんと出会ったのは、次の遊び相手を探している最中で、初めて見た時、すっげー美人だと思った。

それだけじゃなく、他の女とは違う何かを持ってる。そう感じた。






今まで遊んできた女は、馬鹿でうるさくて子供で、正直言って顔だけだった。






けど、鈴音ちゃんは二歳下とは思えないほどの大人っぽさがあり、千翔に聞いたところ頭も良いみたいだし、なにより気が回る。






たぶん、今までで一番落としがいがあると思う。






最初はその程度だったのに、話していくうちにどんどんと目が離せなくなっていて、気づいたら頭を撫でている自分がいた。






だから、今日品定めしようとした。






千翔と帰ろうとしてたことは予想外だったけど、そこは気を回してくれて、一緒に帰ることができた。






まあ、鈴音ちゃんは何か話があると勘違いしてたみたいだったけど、俺にとっては好都合。

結果、びっくりした。

何より、俺が可愛いとか好きとか言って照れない子は初めてだったから、興味が湧いた。

そればかりか、この俺に“かわいそうな人”なんて生意気な口を利いたと思ったら、今度はあんな真っ赤な顔を見せて。






不覚にも、どきりと心臓が波打った。






それより、鈴音ちゃんの好きな人って誰だろう。

理人には愛衣ちゃんがいるし・・・あ、でも今喧嘩してんのか?

まあ、俺にとっちゃどうでもいいけどな。






___『好きっていう気持ちは、とても素晴らしいものですよ!』






鈴音ちゃん。

俺は、その言葉を否定するよ。

どうせ、好きになっても裏切られるだけなんだ。






俺は、絶対に父さんみたいにはならない。

女に裏切られて死ぬだけの、惨めな人生は送らない。

人を好きになって辛い気持ちになるなら、俺が先に裏切ってやる。






決めた。

次のターゲットは、あいつだ。

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