~瓢箪から駒が出る 3~
思ってた通り、愛衣はすぐに見つかった。膝に顔をうずめて、座り込んでいた。
「愛衣?」
声をかけると、ピクッと動き、ゆっくりと顔を上げた。
その顔は、涙でくしゃくしゃになっていた。
せっかく可愛いのに・・・。
「誰も探しに来てくれないかと思ったあ・・・」
やっぱり。
自分から飛び出していった人は大体、誰かが探しに来てくれるのを待ってる。だから、そんなに遠くには行かないんだよね。
「ねえっ・・・ど、どうしよう・・・。わたしっ・・・なにが、いけなかったんだろう・・・」
愛衣はまだ落ち着いていないのか、声を詰まらせながら泣いている。
[
「わたしっ・・・こんなにっ、好きなのにい・・・。理人は、何が嫌なの・・・?」
途中ゴホゴホと咳き込みながらも、必死に言葉を紡いでいる。私は、少しでも楽になるように、愛衣の背中をさすいでやる。
仕事をしなかった愛衣も悪いけど、同じ恋をする者同士、こんなに泣いているのを見ると、いたたまれなくなる。
愛衣は、本気で好きなんだ。胸がきゅっと締め付けられるような気分になった。
「辛いね・・・」
「・・・ん」
「私にも、理人の気持ちはわからないや。でも、それとなく愛衣の何が原因なのか、聞いてみるよ」
言った後に、しまったと思う。ああー・・・千翔に怒られる。
「え・・・!いいの!?」
けど、愛衣のその満面な笑顔を見ると、もう断ることはできない。
「ああー・・・ははは・・・うん。できる限り、協力するよ」
「ありがとう、鈴音!」
そう言い、愛衣は私の手を取る。
もう仕方ない。何が原因か聞くだけだし・・・。
「まあ、とりあえず戻ろう?仕事、美奈先輩に任せたままだし」
「あー・・・うん・・・」
途中で飛び出したことに罪悪感があるのか、愛衣は少し言葉を濁した。
「大丈夫だって!みんな、ちゃんとわかってるから!」
「そう?」
「そうだよ。はい、行くよ!」
このまま続けてもらちが明かないので、腕を引っ張って体育館に戻る。
「美奈先輩、すいません!終わりました!」
「お。やーっと戻ってきたか」
私は、愛衣の背中を軽く押す。
「あの、すいませんでした」
「んー?心を入れ替えてくれたのなら、それでええよ」
「ほらね?」
「・・・うんっ」
やっと涙も引いたと思ったのに、また泣き始める愛衣。
まあ、何はともあれいろいろあったけど、なんとか落ち着いたかな。なんとかね。そこは強調しとく。
さすがにその後は何もなく、部活は終了した。
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