~胸の高鳴り~

翌日、普通に家を出て学校に向かっていると、






「藤宮さん!」






後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきたので、振り返ると、






「まじか・・・」






てっきり私は、千翔くん一人でいるのかと思ったら、その隣に理人くんと、あの時一緒にいた女の子もいた。






「お?千翔、お前友達出来たのか」

「え、友達なの?」






口から不意に出てきた言葉に、「友達です」とすぐに千翔くんが反論してきた。

純粋に嬉しい。






「俺、白崎理人な。普通に理人って呼んでくれて構わねえから」

「わたしは田中愛衣。よろしくね!」

「藤宮鈴音です。よろしく」






一通り自己紹介した後は、自由に会話が始まる。






「ね、理人。今日も部活見学して帰る?」

「おー・・・そうだな」






理人と愛衣ちゃん、仲いいな。

中学の時から一緒とか?






「二人は同じ部活に入るの?」

「うん!バスケ部!わたしはマネージャーだけどね」

「鈴音は何部に入るか決まってんのか?」






ちょっ・・・やばい!今、鈴音って呼び捨てで!






「おい、鈴音?」

「鈴音ちゃーん?」






・・・はっ!いけないいけない。自分の世界に入りすぎてしまった。






「しっかりしてください。藤宮さんは何部に入るんですか?」

「ああ・・・私はまだ特に・・・」

「え、バスケ部に興味あるんじゃないんですか?」

「鈴音ちゃん、バスケ好きなの!?」






千翔くんの言葉に、愛衣ちゃんが食いつく。






「好きっていうか・・・。そんなに本気でやったことないし」

「は!?お前、もったいねえよ!スポーツは本気でやってなんぼだろ!?」






理人は、信じられないといった様子で声を荒げる。

それだけでスポーツが好きだと伝わってくる。






「こら!誰もがあんたみたいにスポーツしか考えてないような馬鹿じゃないんだから!」

「でも・・・何事にも一生懸命って、それだけでなんか魅力的だよね」






私は、ただ普通に言っただけなのに、周りの空気が固まる。






「ご、ごめん!別に愛衣ちゃんの言葉を否定しようとしたわけじゃなくて・・・」






やってしまった。こういうところが、友達が離れていく理由なんだろう。

中学の時もそうだった。

私は、自分の意見を言っていただけなのに、周りからしてみればそれが気に食わなかったんだと思う。

まあ、考えてみれば当たり前か。

自分を否定されるのって、悲しいことだもん。






「鈴音ちゃん、可愛い!」






・・・は?愛衣ちゃんは、私が思っていたことと全然違うことを口にした。

どこをどうとったら可愛いになるんだ。






「鈴音ちゃん、わたしのことは愛衣でいいよ!」

「じゃあ、私のことも呼び捨てで」

「わーい!」






愛衣は子供のように手を挙げてはしゃぐ。

何がそんなに嬉しんだか・・・。

でも、ここの空間の音色は、好きだ。






「・・・」






気づくと、隣にいる千翔くんは無言で私を見つめていた。






「どうかした?千翔くん」

「いえ、何でもないです」






心配だったが、有無を言わせないようなその強い口調に、押し黙ることしかできなかった。






「ところで鈴音さ、バスケに興味あるなら一緒に入らねえ?」

「え・・・いいの?」






まさか理人から誘われるとは・・・。私は理人の顔を見る。

近くで見ると、やっぱりかっこいいな。






「?」






あ、目が合った。すぐ逸らそうとすると、理人がふっと笑った。






_____とくん






胸の奥が、高鳴った。

ああ・・・もう・・・好きだな。そんな笑顔を見せられると、ほんとやばい。

もともと好きだったけど、もっと好きになっちゃったじゃないか。






「いいね!わたしももっと鈴音と話したいし、一緒にマネージャーしよ!」






これまた天使のような笑みで。そんなこと言われたら断れないよね。

私は、男子バスケ部に入ることに決めた。

登校時間、だいぶ理人たちと仲良くなれた気がする。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る