~巻き添えのクラス委員長~

朝、学校に来て最初に耳に入るのは、クラスの子たちの明るい音色。でも、私にとってそれらは雑音でしかない。

明るすぎてもうるさいってことあるじゃん?

正直、昨日のテレビの内容とかどうでもいいし。

ていうか、もうクラスの中で半分くらいのグループができてる。

早くないか・・・。まだ二日目だぞ。

私は、一度クラスを見まわしていると、






「あ・・・」






一か所だけ、他とは違う空間があった。






「千翔くん・・・」






誰と話すわけでもなく、黙々と勉強していた。

別に、変なことじゃない。中学からの友達、とかは別にして、むしろたった一日であんなに仲良くなれてる他の子たちの方がおかしいと思う。

なのに、なんでだろう。千翔くんだけが浮いてて、あそこだけ、奇妙な空間に感じてしまう。

私は、自分の席に着こうと千翔くんの前を通ろうとした。






「おはようございます」

「うえええええ!?」

「どうかしましたか・・・?」






私の大声で、クラス中の皆がこっちを向く。けど、しばらく経つと興味がなくなったのか、それぞれの話に戻っていく。






「あんたねえ・・・。どうかしましたか、じゃないわよ!急に話しかけないで!びっくりするじゃない!ただでさえ、あんた影が薄いんだから!」






言ってしまって、あっと思った。別に、影が薄いは口に出さなくてもよかった。

本人も気にしてるかもしれないのに・・・。






「ご、ごめん」

「すいませんでした」






え・・・?

私の謝罪は、彼の言葉と重なった。






「なんであんたが謝んのよ」

「だって、驚かせてしまいましたし」






そっちかよ!確かに驚いたけど!






「気にしなくていいですよ。影が薄いのは自覚してますし、逆にこんなに関わったのは藤宮さんが初めてなので、嬉しいです」

「・・・あっそ」






もう少し女の子らしいことを言いたいのに、無意識に出たのは不愛想な返事。

だって、しょうがない。あまりにも千翔くんが素直で裏表ない笑顔を見せるから、なんか直視できなくなって・・・。

顔は普通にイケメンだし。

きっと、もっと目立ってたらすごくモテるんだろうけどなあ。

一人で悶々と考えていたら、いつの間にかチャイムが鳴ってしまった。

あ、結局挨拶返してないわ。







「では、多数決の結果、クラス委員長は藤宮さんと白崎君に決まりました!しっかり、みんなも協力してあげてください!」






私の隣には明らかに不機嫌な千翔くん。なぜ不機嫌かというと、






___『まず、クラス委員長なんだけど、男子は白崎君に頼んでもいい?』

___『え・・・。いや、僕そういうのは・・・』

___『そう・・・。じゃあ、男子は保留で、女子は藤宮さんに頼みたいんだけど・・・』

___『え!?わ、私!?』






まさか自分の名前が出てくるとは思わなかったから、素っ頓狂な声を上げてしまった。






___『なんでですか・・・』

___『だって、入試の順位、二位だから。ごめんね?最初だから、決める材料がそれくらいしかないのよ』






先生の言葉に、周りのみんながざわざわする。

あ、私二位だったんだ。ていうか、先生がバラシてどうすんの・・・。

んー・・・。私は千翔くんを見る。

あ、そうだ!






___『いいですよ。あと、朝白崎君と少し話したんですけど、彼、クラス委員長やりたいって言ってましたよ。多分、勇気が出ないだけです』

___『!?僕はそんなこと一言も___』

___『そうなの!?じゃあ、白崎君、お願いね?』






ということがあったのだ。

ふっ、悪いね、千翔くん。私一人が犠牲になるのが嫌だったんだよ。






それ以外は特に何もなく、嬉しい嬉しい下校時間がやってきた。

さあっ!かーえろー。






「あ、藤宮さんと白崎君。さっそくなんだけど、放課後仕事頼まれてくれない?」






・・・うそー。初日からそんなすることある!?帰りたーい・・・。






「はい」






千翔くんは快く引き受けた。あ、これは私も残らなきゃいけないやつね・・・。






「わかりましたー・・・」

「ありがとう!」






先生はめちゃくちゃ良い笑顔で私たちに仕事を押し付け、どこかに行ってしまった。

いや・・・これ絶対先生がやるような仕事だよね!?

しかも、「適当でいいからプリント綴じて」って、無理やり仕事作ったようなもんじゃん!






「さっさと終わらせましょう」

「あ、うん・・・」






わかってたけど、ほんと、まじめだなあ。まあ、良いことなんだけど。


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