~白崎双子は正反対~
「で、二人は双子って、本当?」
「はい」
なんで、こんなことになったんだろう。
思いっきり叫んでしまった私は、もちろんあの後三人に怪訝な顔を向けられた。
しかも、好きな人からは「誰だ?」なんて言われる始末。まあ、仕方ないよね。覚えてる方が奇跡。八年も経ってるんだから。
で、今は家の方向がたまたま一緒だったから、部活見学はせず帰ると言った千翔くんと帰っている。
とりあえず、自己紹介はさっきした。
まあ、双子なら千翔くんがあの人の音色と似てたのも納得できる。
「でも、信じられないなあ・・・。性格とかは正反対っぽい」
「そうですね。何もかも、正反対ですよ」
「やっぱり」
顔はあんなにそっくりなのにな・・・。
「理人は僕の憧れなんです。いつも周りには人がいて、明るくて、馬鹿ですけど、その分運動神経はすごいんですよ。その点、僕はまじめすぎてつまらないとよく言われます。僕が理人に勝てることといえば、勉強くらいです」
千翔くんの言葉で思い出す。
そういえば、入試トップがやると決められていた新入生代表挨拶をしてたな。
私は、気づくと言っていた。
「でも、私は千翔くんの性格好きだよ?」
「え・・・」
「会ったばかりだけど、今日一日だけで千翔くんは優しい人だってわかった」
「僕は優しくなんか___」
「優しいよ」
私は、千翔くんの言葉を遮って、少し強めの口調で言う。
「どうしてそう自分のことを悲観するの?千翔くんは十分優しい。朝、私が体調悪そうに見えた時、声かけてくれた。私が転びそうになった時、助けてくれた」
少し沈黙があって、千翔くんは言った。
「あなたはそんな軽いことで人を判断するんですか?」
なんだよ・・・。お礼とか言ってくれるのかと思ったのに、可愛くない奴。
「そうだけど、悪い!?」
「良いか悪いかは知りませんが、そんなふうに第一印象で人を判断してると、騙されますよ。少しは疑ってください」
そう言った千翔くんからは、悲しい音色が流れていた。
千翔くん、過去に何かあったんだ・・・。
直感的にそう感じた。
「うーん。でも、私にはそれは難しいかなあ」
私は少し速足で前に進み、振り返る。
何を考えてるのかわからない、無表情な顔が、目に飛び込んでくる。
聴くに堪えないほどの痛々しい音色が、耳に入ってくる。
「私は、疑うなんてできないよ、そんな難しいこと。それに、人を疑いながら生きるより、信じる方が楽じゃん?」
私が言って、しばしの沈黙の後、千翔くんはふっと笑った。
「・・・そうですか」
え、それだけ!?
ま、まあ別に私の考え方に共感してほしいとまでは思ってないけどさ・・・。
もー、ほんと、可愛くない奴。
「あ、ばいばい。ここ、私の家だから」
いつの間にか着いたみたいだ。
「藤宮さん・・・!」
「!?」
家に入ろうとドアノブに手をかけたところで、急に名前を呼ばれた。
私の苗字、知ってたんだってことにまず驚く。
振り返ると、
「・・・あ、ありがとうございます」
最後の方は照れているのか、ごにょごにょしていた。
まあ、お礼とか言い慣れてなさそうだもんなあ。
「どういたしまして・・・かな?」
「では、また明日」
「また!?」
「どうかしましたか?」
「いえ、何でもないです・・・」
びっくりした・・・。てっきり私たちが話すのはもうこれが最後だと思ってたから・・・。
「じゃあ!」
私は、千翔くんの返事も聞かず、家の中に入った。
ていうか、私千翔くんとしか喋ってない・・・。肝心の理人くんとは何もない・・・。
・・・ていうか、あれ、双子なら千翔くんとも小学校同じだったと思うんだけど・・・。
全然記憶にない。どこかで見かけてると思うんだけどな。
ま、影薄いからな!
結局はその答えに行きつく。
また明日・・・か。
不思議と楽しみにしている自分がいた。
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