矛盾

食事を済ませて図書館で缶詰め状態になっていたおかげでなんとか終わった。

「終わった事だし遊ぼうよ。」

ようやく読みたい本が見れる。僕は倫理の本を持って来て読んでいた。最近は何が正しくて何が間違っているのか分からないから。少なくとも今の僕は間違いだらけだ。朱芳理は心理学の本を読んでいた。

「ねえ此処に書いてある事面白くない。何故人は嘘をつくか。」

その朱芳理の声が僕の心臓を早めた。

「どういう観点で面白いんだ。」

その場を凌ぐために苦し紛れの質問をしてみた。どうやら焦っているのは分からない様子。

「人は生きてると必ず嘘をつく。でも善悪あるってとこかな。」

「人はペルソナというものがある。だから都合がいい時と悪い時がある。そう僕は思うな。」

「じゃあその本に書いてある性悪説と性善説どっちが正しいと思う。」

少しだけ言うというのは躊躇ったが答えるとしよう。…少しだけペルソナという仮面を被って、嘘をつく。

「人は多分一色なは染まらないと思う。だからどっちが正しいかは分からないけど。多分境界の周辺に人はいると思う。」

朱芳理は納得して本を読み続けた。たまにこうした矛盾を僕にぶつけてくる。こんな事をするのは久しぶりで本当に楽しかった。

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