効力

「…ありがとう。…ねえ飲んでないわよね。」

朱芳理はペットボトルの蓋に違和感を感じたのか少しだけ疑っている。

「その間違って開けた。嫌ならまた買ってくるけど。」

朱芳理は水を勢いよく飲んだ。これで何かしら変わってくれれば本望なのだが。

「…何よそんなに私変。」

いつも通りの冷気を放ってる朱芳理で、ほっとしたのか残念なのかは僕には分からなかった。そしてまたどこかに行ってしまった。こんなのあるのが可笑しいんだよな。朱芳理は前のようにはならない。その結果が知れて良かったじゃないか。もう未練がましくしなくてもいいじゃないか。…しかし僕はいつも通りだった。微かに前みたいに何気ない話が出来ると希望を持っていた。まだ仲良かった頃に気持ちを吐けば変わっていただろうか。

そんな事を考えながら僕は帰宅した。部屋に入って自分がした事に後悔をした。あんなデクの棒に縋った自分の愚かさと朱芳理を騙した事。誰かから着信が来た。どうせあれだろうレポート見せてくれだろう。この連休終わったら提出だしな。呆れ半分でメッセージを見た。

「え。」

僕は素っ頓狂な声を出してしまった。天変地異が明日起こるのかという疑問さえ浮かんだ。その人は僕を忌み嫌っている朱芳理だった。

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