―105― モンスターの生成

 それから名称未定と共に、ダンジョンの奥へと進んでいった。

 どんなモンスターも名称未定の触手があれば、簡単に丸呑みできはてしまうので、非常に楽に進むことができる。

 ただ、水晶亀クリスタルタートルだけは非常に大きなモンスターなため、呑み込むのに苦労していた。


「なぁ、名称未定って一応モンスターなんだろ?」

「はい、名称未定ちゃんは没になったレイドモンスターですけど?」

「さっきからモンスターを食べているけど平気なの? 同じ種族同士、殺し合っていることになっているけど……」


 ふと、気になったので聞いてみる。

 見ると、名称未定は無言で首を傾げていた。自分の行動に関して、深く考えていなかった様子だ。


「人間だって、人間同士で殺し合うじゃないですか?」

「それはそうかもしれないけど」

「それとおんなじじゃないですか」

「そうなんだ……」


 まぁ、名称未定が気にしないっていうなら、僕からはなにも言うことはないんだけど。


 そして、中ボスである飛竜ワイバーンも名称未定によって、一撃で撃破。

 僕はあれだけ苦労したのに……。

 そんで開かずの扉までたどりつく。


「それで、どうするんだ?」


 名称未定がいうには、自分には壁抜けをする方法があるらしい。だが、具体的な方法までは聞いていなかった。


「きひひっ、少々お待ち下さいな」


 そう言って、名称未定は両腕を触手にし、口を開ける。


「名称未定ちゃんの能力はモンスターの捕食、そして、モンスターの生成です。食べたモンスターを性質変えて、別のモンスターとして生成できるわけです」


 そう言われて、初めて名称未定と出会ったことを思い出す。

 確か、あのときはギジェルモの一味を捕食して、不格好な巨人トルペ・ギカンテというモンスターを生成していた。


「今日捕食したモンスターを使って、壁抜けに使えそうなモンスターを作ろうと思います」


 そう言って、名称未定は両腕から伸びた触手を重ね合わせ、モゴモゴと動かす。


「きひひひっ、できましたぁ」


 現れたのは、輝く宝石の体を持った巨大な獣だった。


水晶亀クリスタルタートルの宝石のように硬い体、巨大芋虫ジャイアント・ワームの宝石を食べる性質、そして、火を吐く猟犬フエゴ・ハウンド首なしラバヘッドレスミュールの中間の体になった感じですかね。名付けるとしたら、宝石狼ジョヤ・ロボといったところでしょうか」


 ◇◇◇◇◇◇


宝石狼ジョヤ・ローボ

 討伐推奨レベル:98

 宝石のような硬い皮膚をもった巨大な狼


 ◇◇◇◇◇◇


 〈鑑定〉すると、名称未定の名付けた通りの名前がでてくる。


「それで、これからどうすんの?」

「さぁ、勝手に襲ってくると思うので、あとは、うまくやってください」

「そんな投げやりな!」


 そう叫んでいるうちに、宝石狼ジョヤ・ローボが僕目掛けて襲ってくる。

 早い——!

 流石、討伐推奨レベルが98なだけあって、スピードが他のモンスターと格が違う。


「〈回避〉」


 と、うまくモンスターの攻撃かわしつつ、名称未定の体を持ち上げる。

 ガチンッ! と、金属同士がかち合うような音が聞こえる。

 宝石狼ジョヤ・ローボの突進を僕が小盾で受け止めたおかげで、発生した音だ。

 そのまま僕と名称未定の体は開かずの扉へと吹き飛ばされる。


「〈回避〉!」


 そして、ぶつかる直前に〈回避〉を使うことで、体が壁にすり抜けていった。


「きひひっ、隠しダンジョンには一体なにがあるんでしょうね」


 楽しげな名所未定の声が聞こえた。


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