―104― 初めての共闘

 早速、僕は名称未定と共にコンプレジョダンジョンに来ていた。


「それじゃあ、今から中に入るけど、僕より前にはでないでね」

「はいはい、わかりましたですよー」


 念を押すように言ったつもりだが、ちゃんと伝わっていないのか名称未定はいい加減な返事をする。

 うーん、心配だけど、今は彼女を信じてダンジョンに入るしかないか……。


「グルルッ!」


 ダンジョンの中に入って早々、早速モンスターのお出ましだ。


 ◇◇◇◇◇◇


火を吐く猟犬フエゴ・ハウンド

 討伐推奨レベル:74

 口から勢いよく火を吐き続ける番犬


 ◇◇◇◇◇◇


 現れたのは火を吐く猟犬フエゴ・ハウンド。このダンジョンにて、何度も倒したことがあるモンスターの一種。

 火を吐く猟犬フエゴ・ハウンドは素早い動きができるくせに、火を放つという飛び道具を持っている非常に厄介なモンスターだ。

 ただ、火は口からしか吹き出さないため、横に回ってしまえば、その攻撃を受けることはない。

 そんな攻略法を頭に浮かべながら、地面を蹴ろうとして——


「きひひひひっ! いっただきま〜す」


 グシャリ、と口の形状をした巨大な触手が火を吐く猟犬フエゴ・ハウンドを丸呑みにした。


「え……っ」


 と、一瞬だけ困惑して、すぐに名称未定によるものだとわかる。


「僕より、前にでるなって言ったじゃん」

「名称未定ちゃんの触手が前にでたのであって、名称未定ちゃんはちゃんと後ろにいたのです」


 と、名称未定は触手を普通に腕に戻しながら、そんなことを口にした。


「それに、これで名称未定ちゃんが強いってことがおわかりいただけたと思います」

「それは、そうかもしれないけどさ……」


 非常に強いはずのモンスターを一瞬で丸呑みにしたのだ。名称未定が強いってことは認めざるを得ない。


「それに、壁抜けをするには、何体かのモンスターを捕食する必要があるんです。だから、許してくださいな。お兄様」


 おちゃらけた調子で、そんなことを言う。

 しかも、俺のことを兄と呼ぶとか、完全にふざけている。普段は、そんなこと絶対に口にしないのに。


「僕はお前の兄じゃない」

「きひひひひっ、それは失礼いたしましたぁ」


 にしても、普段以上に名称未定は機嫌が良いような気がする。

 もしかしたら、ずっと部屋にいた生活が案外ストレスをためる結果になっていたのかもしれない。

 ダンジョン攻略でストレスを発散してくれるなら、悪いことではないか。


「わかった。必要なことだって言うなら、モンスターを捕食することを許す。けど、危険なことは絶対にするなよ」

「はぁい。わかりましたぁ」


 おちゃらけた調子の返事を聞きながら、僕たちはダンジョンの奥へと進んでいった。



────────────────────


【★あとがき】


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こちらもよろしくお願いします!

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