―22― お金稼ぎ&敏捷あげ

「わー、糸に絡まっちゃって動けなーい」


 うん、やっぱりひどい演技だな、と客観的に思う。

 すでに、巨大女王蟻ジャイアント・クイーン・アントを何回も相手にしているが、わざと糸に絡まった際の演技は一向にうまくなる気がしないや。

 それでも人間の演技力を見抜けるわけがないモンスターは迷いなく僕に対して鋼鉄の球を噴射する。


「〈回避〉ッッ!!」


 と、壁抜けをして報酬エリアに辿り着く。


「流石に、飽きてきた……」


 まだ、今日は一回しかプランタダンジョンを周回していない。

 けど、プランタダンジョンの周回を初めて七日目だ。流石に飽きてきた。


「うん、次はパイラルダンジョンに行こうかな」


 別にプランタダンジョンを周回すると決めたからといって、他のダンジョンを行ってはいけないわけではない。

 気分転換にパイラルダンジョンに行って、ステータスの敏捷を上げてこよう。

 まぁ、パイラルダンジョンのほうがこのプランタダンジョンに比べて難易度が高いため、気を引き締める必要があるのだけど。


 ◇◇◇◇◇◇


 敏捷が10上昇しました。


 ◇◇◇◇◇◇


 パイラルダンジョンの初回クリア報酬、〈極めの書〉を使って敏捷をあげる。


「流石に人喰鬼オーク相手にするほうが疲れるな」


 狭い通路で巨体の人喰鬼オークが棍棒を振り回してくるのだ。すでに何度も人喰鬼オークの攻撃をかわしているとはいえ、大変なことには変わりない。

 これが巨大蟻ジャイアント・アント相手なら、ジャンプして飛び越すだけでいいのに。

 ともかく、これからは基本はプランタダンジョンでお金稼ぎ。飽きたらパイラルダンジョンで敏捷をあげるようにしよう。



 パリンッ、と音が鳴った。


 パイラルダンジョンで黒の人喰鬼ネグロ・オークの振り回した棍棒を盾で受けた瞬間だった。

 ついに愛用していた〈岩の巨兵ゴーレムの小盾〉が砕けたのだ。


「〈回避〉!」


 とりあえず、壁に叩きつけられる瞬間〈回避〉を使って報酬エリアまで壁抜けする。


「ついに壊れちゃったか……」


岩の巨兵ゴーレムの小盾〉はまだ原型は留めているとはいえ、大きなヒビがはいっており、もう使い物にならないとわかる。

 以前〈岩の巨兵ゴーレムの小盾〉にヒビが入ったときから、いつか壊れることはわかっていたが、それでも愛用していた盾なんだ。やっぱり悲しい。


「とはいえ、落ち込んではいられないか……」


 僕だって冒険者だ。

 これからも装備が壊れることは何度だってあるに違いない。そのたびに落ち込んでいたらやってなんかいけないだろう。


「よしっ、新しい盾を買いに行こう」


 そもそもプランタダンジョンでお金稼ぎを始めたきっかけが、盾が壊れたときに備えて、新しい盾を買えるようにってことだったはずだ。

 十分お金も溜まったことだし、〈岩の巨兵ゴーレムの小盾〉よりもいい盾を買える可能性だって高い。

 そう思うと、わくわくしてきた。


「と、その前に初回クリア報酬を貰わなきゃ」


 盾のことで頭がいっぱいで忘れるとこだった。

 あぶない、あぶない……。



 ◇◇◇◇◇◇


 アンリ・クリート 13歳 男 レベル:1

 MP:90

 攻撃力:10

 防御力:50

 知 性:60

 抵抗力:60

 敏 捷:370(UP!)

 スキル:〈回避〉


 ◇◇◇◇◇◇



 記録:パイラルダンジョン総周回数:計22回

    プランタダンジョン総周回数:計34回

    合計獲得金額:68万イェール


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る