―14― 〈極めの書〉入手!

 報酬エリアには例のごとく、外へ出るための転移陣と宝箱が置かれていた。


「ホント生きた心地がしない……」


 報酬エリアに着いた僕はドスンと床に腰を下ろす。

 もし、黒の人喰鬼ネグロ・オークの攻撃をうまく誘導できなかったら、吹き飛ばされる角度を間違えたら、〈回避〉のタイミングを間違えたら、などなどどれか一つでもミスをしたら命を落とすような攻略だ。

 よく一回もミスせずに成功できようよなぁ、と自分でも思う。

 とはいえ、これだけのことをやる価値はある。

 そう思いながら、僕は宝箱に手をかけた。


「これがパイラルダンジョンの初回クリア報酬か……」


 手にしていたのは一冊の書物。

 効果は事前に調べているので知ってはいるが、念の為ステータスを確認する。


 ◇◇◇◇◇◇


〈極めの書〉

 ステータスの中で最も数値の高いステータスを10上昇させる。(パーティー全員に効果あり)(譲渡不可)


 ◇◇◇◇◇◇


 うん、事前に調べた通りの効果だ。

〈極めの書〉は最も数値の高いステータスを10あげてくれるという優れもの。

 僕の場合は敏捷があがる。

 プラス10もしてくれるというのは中々強力な効果だ。そのため、このパイラルダンジョンはどんな冒険者でも一度は必ずクリアしに来るほど。

 ただし二回目以降の報酬は大したことがないので、一回クリアしてしまうとこのダンジョンに立ち寄ることはない。


 僕はもったいぶる必要もないため、早速〈極めの書〉を使ってみる。

 効果を発動させると、〈極めの書〉は宙を浮き光を放つながらパラパラとページをめくる動作をする。そして、最後までページをめくり終えると、その場で消えてしまった。

 途端、僕の体が光に包み込まれる。


 ◇◇◇◇◇◇


 敏捷が10上昇しました。


 ◇◇◇◇◇◇


 と、ステータス上昇の報せがダイアログとして表示される。

 一度もレベルアップをしたことがない僕にとって初めてのステータス上昇だ。

 本当に敏捷が上昇したのか、念の為ステータスを開いて確認してみる。


 ◇◇◇◇◇◇


 アンリ・クリート 13歳 男 レベル:1

 MP:90

 攻撃力:10

 防御力:50

 知 性:60

 抵抗力:60

 敏 捷:150→160(UP!)

 スキル:〈回避〉


 ◇◇◇◇◇◇


「うん、ちゃんと敏捷が10あがっている」


 狙い通りことが運びほっとする。

 この〈極めの書〉は僕の知る限りでは、レベルアップ以外で強くなる唯一の方法だ。

 本当は攻撃力を強化してモンスターを倒せるようになりたかったが、できないことを求めても仕方がない。


「次はパイラルダンジョンで初回クリア報酬を何度でも手に入るのか確かめないと」


 ファッシルダンジョンでは初回クリア報酬であるはずの〈旅立ちの剣〉を何度でも入手できた。だが、このパイラルダンジョンでも同様なことが起きるとは限らない。

 とはいえ、ダンジョンごとに仕組みが違うとは考えられないし、あまり心配はしていないが。


「よし、これからはパイラルダンジョンの周回だ!」


 僕は気合いを入れるため、拳を掲げてそう宣言していた。


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