―13― 黒色のオーク
「今のところ順調だ……」
僕は、下層へと続く階段を下りていた。
この調子のまま進むなら、パイラルダンジョンを選んで正解だった。
僕の足があれば、
敵を一切倒さないでダンジョンを進む。
ソロだからこそ、できる戦法だな、と思う。これが足の遅いタンクや魔術師がいたら、モンスターから逃げ続けるのは難しい。
「と、今のうちにMP回復薬を飲まないと」
ポケットに入れておいた小瓶を入れ、中の液体を口に含む。
こうしてパイラルダンジョンを進むことができているのは、MP回復薬のおかげといっても過言ではない。
「とはいえ、モンスターを倒せていないからこのままMP回復薬を使い続けていたら金がなくなるんだよなぁ……」
MP回復薬は安くない。たくさん入手するにはお金が必要だ。
やっぱりお金稼ぎならファッシルダンジョンを周回して〈旅立ちの剣〉を手に入れるのが一番いい。ファッシルダンジョンに行くのはやめた、とこの前決意したけど、たまになら行ってもいいかなー、とか思ってみたり……。
「やっと、着いた」
目の前にはボスの部屋へと続く扉が。
この扉をくぐれば、ボスを倒さない限り出ることはできない。
まぁ、僕の場合は壁をすり抜けることで出ることができるんだけど。
とはいえ緊張はする。
失敗したら、死ぬんだから当然だ。
とはいうものの、冒険者は常に死と隣合わせな職業だ。ここまで来てから、くよくよしても仕方がない。
ギギギギッ……と重い扉を両手で開けた。
「グゴォオオオオオオオッッッ!!」
うめき声と共に僕のことを出迎えてくれる。
「うわぁっ」
急なうめき声に思わず僕は声を上げてしまう。
手には鉄製の棍棒を持っている。
「大丈夫、倒す必要はない。攻撃をうまく受けるだけでいい……」
そう自分に念じて、恐怖を和らげる。
「グギャッ!」
速い……ッ!
鈍足だった
「〈回避〉」
すかさずスキルを使う。
すると、僕の体が敵の攻撃をすり抜けるように動いてくれる。
その隙に、僕は
僕の不可解な動きに、
よし、この攻撃を受ければ僕は報酬エリアに接している壁に叩きつけられる。
〈
「ぐはッ!」
だから、狙い通り一撃を耐えつつ、僕の体は壁へと一直線に投げ飛ばされた。
「〈回避〉ッッ!!」
さっきの攻撃で肺が押しつぶされて喋るのが困難だったが、それでも必死に声を発してスキルを発動させる。
スーッ、と体が壁に吸い込まれた。
どうやら成功したようだ。
安堵しながら、僕は報酬エリアへとすり抜けた。
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