第11話 歌姫<ディーバ>
アストロアークは自分の特技が生かせるゲームでもある。絵が上手ければ絵師として将軍などのキャラクターデザインの仕事が入る。計算に明るければ商人として富を築くことも出来る。
ウチの家族は特定の商人に農作物を納めて富を得ている。市場価格より少し色を付けたほどの値段だがこの商人とは古くからの付き合いで信頼関係が築けていると思う。信頼は金では買えない。自分で作り自分で売る人も居るが、ウチは商人に納品して安定した収入を得る事にしている。画面越しの信頼関係だが壊されて困るのは商人の方なので家族の会話でお金をどう使うか話し合う事が多々ある。
「農場はこれ以上増やしてもしょうがないから家畜でも飼う?」
妹の美玖の意見に誰も意見しなかった。誰も家畜を飼った事が無いからだ。
「兄さん、畜産コースでしょ? なんか意見ないの?」
「羊がいいけど……。高いんだよな……」
「用途が多いからね」
「牧草地ってあったけ?」
「柵を立てれば牧草地扱いらしいよ」
弟の隆二がスマホでアストロアークの公式ホームページを見ながらそう呟く。
「美玖の副業の稼ぎから柵代出して」
「嫌よ、兄さんの絵を売ればいいじゃない!」
アストロアークではリアルマネーが使えるのだが用途は限られている。アストロアークで使える通貨が稼げる妹の美玖はアストロアークで希少な歌姫の仕事をしている。戦地に赴く兵士たちを鼓舞する役割だ。昔はボカロがやっていたのだが、人間の女の子が歌った方が士気は上がるらしい。
「俺の絵は運営の好き嫌いが激しい。採用率十パーセントだぞ」
「採用されるだけ良いじゃない。私だってディーバだって学校で自慢してみたいわよ!」
「アストロアークで喧嘩しないでよ」
弟に窘められて矛先を納める。
「すまなかった美玖」
「うんん、私こそ」
「あなた達学校は?」
慌てて学校の支度を始める俺達。パソコン部の部活にバイト。しばらく絵を描くのは無理だな~。そう考えながら家を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます