第7話 ネットオークション
「パソコンを買うためにパソコンを売りましょう」
「何言ってるのツムちゃん?」
紬は佐々木からツムちゃんと呼ばれている様だ。
「あれか? 部室のレトロPC売って最新のあったま悪いくらいゲームに特化したパソコンを買うって事か?」
「イクザクトリィ‼ 正解よ、孝一君」
部室のパソコンはかなり古い。骨董品と言ってもいい。五・二インチフロッピドライブを搭載したパソコンなんて初めて見た。パソコンの博物館にあってもおかしくない。
「レトロPC……。売れるの?」
「どこの世界でもマニアは要る。一万は固いだろう、どこのネットオークションに出すんだ?」
「そうね、釣りで大事なものと言えば?」
「エサだな、なるほど情報を流すのか」
「孝一君は頭の回転が早くて助かるわ!」
「ちょっと二人だけで盛り上がってないでチャンと説明して!」
「難しかったか? レトロPCが市場に出ますよって多くの人に先に知ってもらおうって話さ」
「そう、フリマもいつどこでやるか告知出すでしょ? ネットの住人にレトロPCの情報を流せば良い値段になるかも知れないわ」
「はぁ、霜月君は釣りだけでそれだけの事が分かったの?」
「俺は一応パソコン部だよ。バイトの意味くらい知ってなきゃ格好つかないだろ?」
「バイト? アルバイトの事?」
「望、アップル社のロゴがリンゴが欠けた形なのは知ってるでしょ?」
「うん私のスマホ、iPhoneだから知ってるよ」
「バイト、この場合はパソコンの容量の単位を一バイトと呼ぶのよ。孝一君、英語で一口かじるはなんていうのかしら?」
「バイト」
「あ⁉」
アップル社のロゴが欠けているのは、バイトつまりリンゴを一口かじった様な形なのは創始者達のユーモアからだ。
「私パソコン部失格だぁ~」
「いやいや、俺も名前貸してるだけだから」
「部長は私。部費を何に使うか決めるのも私。望は間違いなくパソコン部よ」
とんだジャイアンである。
「それにしても意外と孝一君はパソコンに詳しいわね」
「まあ、家にまだMS-DOSで動くパソコンあるからな」
「じゃあ部室のパソコンも使える?」
「これ、無理やりWindows3.1入れてるから重いんだよな」
「あ、そなの。ますます売らなきゃ場所を取る箱ね」
「全くだ。デスクトップパソコンでこんな遅さじゃ草生える」
「上手い事いうわね」
「偶に二人が何言ってるか分からない」
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