初めましての三種族


 自動操蟲との戦闘のあと、ポロン達、妖精の学生たちは今後の対応を考えていた。


 まずは、国に報告をということでニックがテントーをかっ飛ばしていったのだが……。


 ほどなくして帰ってきたニックは顔を青ざめて言い放った。


「世界が……途切れてた」


 ニックが言うには、この学校からある程度離れるとまるで切り取られたかのように、風景が見えなくなる境界にぶち当たるとのことだった。


 信じがたい話だが……そんな嘘をつく理由もない。


 ポロン達がこの異常事態に頭を悩ませてた時だった。


 ふと、ポロンが窓を見ると中庭に奇妙な物体を見つけた。


「あれは……カエル? 女神石もチカチカ光ってるような……?」


 窓を開けて、更に観察をする。


「おい、ポロン。どうしたいきなり?」


 隣にいたニックも覗き込む。


「ニック……あそこからなんか声が聞こえない……?」


 何やらぼそぼそと声が聞こえて、その度に女神石がチカチカと光る。

 まるで、会話をしているかのようだ。


「……まじだ」


 どうやらニックにもちゃんと聞こえるらしい。


 二人のただごとじゃない様子を見てクラスメイト達が集まってくる。



『ポロンちゃん、どうしたの~?』

『ニック、なにか見つけたのかい?』

『え? 声だって……? ……驚いた。こりゃあー、どうなってるってんだい?』

『……確かめにいくべきだ。……敵かもしれん』

『ふむ。その通りだな。総員、出撃だ!』


 ポロン達は、作戦準備室を出て全員で中庭に向かった。



 そこで目にしたのは奇妙な生命体だった。


 カエルのようだが……それにしては丸い。

 デフォルメが効いたマスコットキャラのようだ。

 そして……なんと喋る。


「あ……どうも。皆さんこんばんは! 僕、春日 響って言います」


「あ……これはご丁寧にどうも……。私達は妖精防衛養成学校の最上級生です。私はエリト。この学年の委員長をやらせてもらっています」


 流石はエリト君だ。

 未知の生命体に対しても礼儀正しい。


 それにしてもあのカエルちゃん……なんだか見てると懐かしいような……というか会った事あるような……。


「ところで、ヒビキさん。あなたは一体何者でしょうか……? ただのカエルではないようですが」


 エリト君がどこかズレた質問を投げかける。

 そりゃそうだろ……と誰かが言葉をこぼしたのを契機に、みんなの感想がポロポロと漏れていく。


『あんな気味が悪いカエルいませんわ……』

『そうかい? 僕は良いフォルムしてると思うけど』

『カスガ・ヒビキって変わった名前っスね』


「カエル博士のポロンちゃんはどう思いますか?」


 オットーの質問にポロンは顎に手をあてて考える。


「うーん。わたしは可愛いと思うけどなー。あと丸々としてて美味しそうかも! シチューにしてもいいし……」


「いやいや!! ポロンさん……だよね? 一緒に戦った仲だから食べないで!?」


 カエルちゃんが会話に割り込んでわたしの想像を必死に振り払っている。

 ん? 一緒に戦った……?


「みなさん! 僕はこういうものです!」


 カエルはそう言い放つと、隣に鎮座していた勇神に飛び掛かった。


「あっ、勇神様になんてことを!?」


 思わず口が出たが、次の瞬間には言葉を失った。


 なんと勇神様の身体に張り付いたカエルちゃんはそのまま勇神様に吸収されていったのだ!


 そして……吸収された場所に出来たカエルのシルエットから声が聞こえる。


「ポロンさん! 電気をください!」


「あ……! もしかして! えいっ!!」


 ポロンはとびっきりの電気を勇神に放出した。


 すると、封印が解かれたかのように勇神の手足が動いた。

 勇神はそのまま両足を広げてしゃがむと、両手を地面に当てる。

 このポーズは……。


「カエルちゃんだ……!?」


 そして、今度は勇神の身体からシュポンと先程のカエルが飛び出てきた。


「はぁはぁ……電気キッツ……。……どうですか、みなさん。僕はこの世界に騙され……いや、この力で、この世界を救いにきたんです」


 全員、言葉も出なかった。

 目の前の現状をどう認識してよいか分からないのだ。

 だが、その中でポロンだけは行動が早かった。


「ぎゃああああああああああああああああ!!!!! 勇神様が喋ってたんだねぇぇぇ!!!!!! 可愛いいいい!!!」


 ポロンはカエルを抱きかかえて、感激の余りその場でクルクルと回る。


「ちょっ……目が回る……いやまじで離し……力強っ! ギブッ、ギブッ! 女神様助けて! さっきので女神力貯まったでしょ!!」


 カエルちゃん改め、勇神様が何故か助けを求めてる。

 女神様……って創造主のベルン様のことだろうか?

 瞬間、不思議な声が心に響く。


(女神の加護を授けます! 『神との交信者ゴッドトーカー』発現!!)


 ポロンを含めてその場にいる全員の身体がほんのりと輝く。

 一体何が起きたのだろうか。


 困惑するポロン達に先程と同じ声が今度はしっかりと耳に響いた。


「こんばんは。私の愛しい妖精ちゃん達。私はこの世界を創造した女神ベルンです。先程、あなた達には女神を認識して喋れる加護を与えました」


 全員が息を呑む。

 本能で、いや、魂が肯定している。

 この声は間違いなく自分たちを創った創造主だと。


「あなた達にお願いがあります。私とそこのカエル……響と一緒に30日の戦争を戦い抜いてほしいのです」


 この夜、チカチカと光る女神石に勇神様にわたし達妖精、奇妙な連合が誕生した。




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