次の10年も君と

土蛇 尚

今日から

二人の生活


お互いの職場からほぼ中間の位置にある新しいアパート。実は私の職場の方に寄ってるんだけど彼は気付かないふりをしてる。そう言う所が良いと思った。ここが二人で住む新しい家だ。築7年だし結構綺麗、それぞれ本棚もおける。


「俺の実家さぁ高層マンションで防火カーテンが義務化されてるからその習慣で選んじゃった、防火カーテン。普通のだったらもう少し安いのに。」


「私が任せるって言ったんだから良いよ。ラインで送ってくれた写真よりもずっと良い。良いセンスしてるね。ありがとう。でも私たちの家カーテンが防火でも燃えやすい物いっぱいあるよね。」


燃えやすいもの。本の事だ、私達は図書館で出会った。本が好きで二人とも結構な蔵書がある。でも余りお互いの読書には触れない。こう言う距離感が心地よいと思う。少し変かもしれないけど。


「引っ越しって疲れる〜。ここから近いお寿司屋さん美味しかったね。また特別な事あったら出前お願いしよう。」


「うん、美味しかった。俺さ木製の寿司桶初めてみた。プラスチックのやつしか見た事なかった。」


「古いお店みたいだからね。お爺さん一人でやってるみたい。じゃあもう寝よ。おやすみ。」


「うん、おやすみ」


枕を二つ並べて寝る。こう言うの良いなって思う。


そうやって2年が過ぎた。お互い仕事が忙しくて最近余り話せてない。そんなある日、電球が切れた。彼が脚立に乗って交換してくれる事になったけど。


「ねぇ気をつけてよ。」


「いいから押さえてて。疲れてんだからもう少し早く言って欲しかったな。」


「ごめん。」


なんか最近いつもこんな感じ。


「ほら出来たよ。すぐ切れる電球からLEDにしてみた。ちょっと高かったけど。俺、余計に良いの買っちゃうんだよね。カーテンも電球も。」


「疲れてるのにありがとう。ごめんね。」


「俺こそ嫌な言い方したと思う。ごめんなさい。あのさLEDって寿命が10年あるんだよ。次の10年もこうやって電球を交換して偶にお寿司食べて枕並べて寝て一緒に生きていこう。」


「なんかプロポーズみたい。もう結婚してるのに。」


「プロポーズは何回したっていいさ。」


生きていこう。一緒に。

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次の10年も君と 土蛇 尚 @tutihebi_nao

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