第14話
「少年の過去の話の続きを爺さんは2回に分けて説明しようとしていた。孤児院から里親の元へ行ったタイミングと、里親の元から離れ自力でいきていくようになったタイミングの2つだ。確かにこの2つの出来事の後少年は苦しむことになった。でも、爺さん達が謝ることになった理由は1つしかない。少年が里親に引き取られる1年ほど前から始まった、亜人の運動が原因だ。虐げられてきた半生を送った亜人たちの中には爺さん達のようにそれでも人間との共存を目指す者たちと人間への復讐を目指す者たちの大きく分けて2パターンがいた。復讐を目指す亜人たちの動きが少年が里親に引き取られる頃に激化し、爺さんやその他の亜人の中の纏め役をしている奴らがその対応に追われた。結果として、亜人のことをよく知らない親に少年は引き取られるという手違いが起きてしまい、そのまま少年の人生が下り坂に向かうことになってしまった。復讐を目指す奴らの運動をようやく鎮静出来たのがここ最近の出来事で、それまで少年に手を差し伸べることが出来なかった。だから爺さんは少年に引け目を感じ、出会い頭で謝ったんだ。これがおおよその全貌だ。」
「タイミングが悪かったってことですか?」
「簡単に言ってしまえばそうなる。アタシはもっと早く少年の元へ行くべきだと爺さん達に訴え続けたが、亜人全体の問題が先だと言われてしまってね。結局少年をギリギリまで追い込んでしまった。亜人を代表してアタシと爺さんが謝る。すまなかった。」
「やめてくださいよ。アリアさんも今言ってくれたじゃないですか。全てはタイミングですよ。アリアさんが頭を下げる必要はないです。」
「だが、少年の過去を考えれば謝らずにはいられなかったんだ。アタシ達も同じように辛い環境で生きてきた。だからこそ感じた痛みに共感出来る分余計にね。ところで少年、まだ何か聞いておきたいことはあるか?それと、今日は大丈夫か?その、心的に。」
「昨日は初めて理解者に出会えたことの喜びと愛情を受けた感動と、過去を振り返った辛さがぐちゃぐちゃになってただけで、今日は大丈夫です。あ、でも質問は1つだけ。僕が亜人のことをよく知らない里親に引き取られたって言ってましたけど、本来であればある程度理解のある人、あるいは他の亜人に育てられるんですか?」
「あぁ、そうだ。それがあの孤児院のを作った理由の1つでもあるあるからな。育ててもらう人からの愛情があれば世間が向かい風でも何とかやっていける。亜人の中に人間との共存を目指す者がいるように人間にも亜人との共存を目指す者がいる。そういう奴等なら亜人の子が成体になるまで預けておくことも出来る。だが少年の場合は、と言うよりあの親が特殊だった。ところ構わず手当り次第に養子を求めていた。そしてそれが亜人の孤児院にまで渡った。本来であれば爺さん達がそういう一般人の養子縁組は排除してるんだが、爺さん達が忙しかったせいでそこのチェックに漏れが出た。だからそのまま少年を引き渡してしまったということだ。これに関しては完全にアタシ達に非がある。」
「...そうだったんですね。分かりました。色々教えて貰ってありがとうございました。じゃあ、1番聞きたかったことを聞いてもいいですか?」
「なんだい?」
「なぜ突然アリアさんが亜人の集団から抜けたのか。僕に理由があるんですよね?」
「...そうだね。それじゃあ話そうか。アタシと少年の特異性を。」
生きるのが辛くなった時出会ったのは吸血鬼のお姉さんでした 唐変木 @zinseigame
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