第12話
「泣き疲れて少年が眠ってる今話しておいてやるよ。これは爺さんを含め誰にも話してないことだ。アタシが生まれてから300年、アタシが疑問を持ってたことだが今日少年を見て確信したよ。アタシと少年は亜人の特性が影響しない。」
「...どういうことだアリア。」
「そのまんまだけどな。なぁ、爺さん突然空から人が現れたらどう思う?夢か幻か。もし現実だったとしてもそいつを疑わずにいられるか?怪しまずにいられるか?」
「少なくとも全力で警戒するだろうな。」
「あぁ、それが普通だ。少年も初めはそうだった。アタシ達を警戒してた。でも少年はすぐにアタシ達の話に耳を傾けだした。その話をしっかり受け止めしまいにはアタシの胸で泣き疲れて眠ってる。ファーストコンタクトがそのままその後を決めると言っても過言ではない亜人同士のコミュニケーションにおいてこんなことが有り得ると思うか?」
「それもそうだな。彼は私達の人柄をしっかり見た上で私達の話を聞き、信じている。もちろん嘘は言っていないが今さっき会ったそれもどうやら怪しい存在の話をすんなり受け止めているなんて冷静に考えれば異常だ。」
「それとな爺さん。これは気づいてるかもしれんが亜人を産む両親には共通点がある。」
「それは何となくだが心当たりはある。心が壊れかけている。あるいは過去に壊れそうな程に辛い体験をしている。」
「そうだ。これはあくまであたしの推測だけどなそういう心の中の暗い部分が混ざりあった結果が亜人だ。人と人との間に生まれた闇を持った存在それが亜人。どう思う?」
「事実だけを見ればそこに違和感はないな。だが何故急にそんな話を始めた。」
「爺さん、あんたならもう解ってるだろ?アタシと少年は亜人の間に生まれた。爺さんたちが生まれて少しは亜人も生きやすくなったかもしれねぇ。だけどな爺さん達に出会うまでは亜人は皆少年のような扱いを受けてる時期がある。そこに大小の差はあれど虐げられたという事実に変わりはない。つまりどういう事か解るなよな?」
「...半人半妖の私達亜人の中には人間と同じ、もしくはそれ以上に心が傷つき、暗くなってしまっていることがある者もいる。と言いたいのだろう?」
「そうだ。人間が抱えた闇が交わっただけで亜人が産まれたんだぞ?亜人の抱える闇が交わったらどうなるか想像に難いことはないだろう?アタシと少年は人間でもなければ亜人でもない。正真正銘、純度100パーセントの悪魔さ。」
「亜人や人間にはそこまで興味が無い。だからこそ最初の疑念や警戒心が彼の中からはすぐに消え、同族に出逢えたという本能的なものでアリアは彼の力になろうとし、彼はアリアを信頼したと言いたいのか?」
「話が早くて助かるぜ。アタシが伝えたいことの1つはそれだ。」
「...もう1つは?」
「アタシはもう爺さん達の仲間じゃ無くなるかもしれんということさ。」
「何が言いたい?」
「アタシが爺さんの話に従ってたのはどん底から掬いあげた爺さんが亜人だったからだ。亜人と、人のために尽くすあんたに付き合って上げてたのはアタシも亜人だと思ってたからだ。でも今日少年に会って気が変わった。少年の心持ち次第では、アタシと少年は人間と亜人両方の敵になる。」
「自分が何を言っているのか分かっているのかアリア。私達亜人にできることなどたかが知れているぞ。」
「それはあんた達亜人だからだ。半分人間が入っちまってる爺さん達とは違う。アタシ達はホンモノだ。」
「最後のチャンスをやろう、アリア。考えを改めろ。」
「まだ少年には今話したことを含め全てを伝えていない。しかし、爺さんと共に亜人のコミュニティに戻ったら下手をすればアタシと少年は二度とかかわれなくなる可能性もある。それは困る。のでひとまずあんた達の前から姿を消す。少年共々ね。」
「待て!アリア!」
「少年の気持ち次第で次に会う時は敵か味方か。じゃあな。」
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