第10話

「つまり僕がこれまで日光に当たっても何ともなかったのはあくまで両親の亜人としての能力が残っていたからで、今後は僕も夜に生きるようになるってことですか?」

「あぁ、そうだ。見たか?爺さん。長い話は理解しづらいんだよ。その証拠にアタシの話はしっかり少年に伝わってる。」

アリアさんは自慢気にシャロンさんを見た。

シャロンさんは頬を掻きながら

「確かに僕の話は長くなりがちだからねぇ。でもまぁ、彼に亜人について理解してもらうためだったから致し方なしって感じかな。」

と言った。この二人の関係生は少し羨ましいなと思った。親子のように感じたからだ。アリアさんが1人で出来るってことを認めて欲しい子供で、シャロンさんはそれを優しく見守るような父に見えた。親子の愛情を知らない僕には酷く眩しいものに見えて、ともすれば彼等に八つ当たりしてしまいそうになり慌てて話題を作った。

「僕が亜人であること、僕の両親が亜人であること、僕がこれから日中に活動が出来なくなることは分かりました。でもなぜ最初にシャロンさんが謝ったのかが分かりません。」

「そうだね。その説明をしていなかった。ここから先、君にとって少し辛い時間になるかもしれないけれどそれでも聞くかい?」

「...正直分かりません。もしかしたら理不尽に御二人に怒鳴ってしまうかもしれません。でも理由も分からず謝られたままでは混乱するだけです。教えて欲しいです。」

「感情というものは自分自身でも理解出来なくなることがままある。それでも聞きたいという君の勇気に敬意を表して話させてもらおう。それにもし怒鳴られてしまっても仕方がないような立場に私達はいる。では、本題に入るよ。君の人生のターニングポイントは大きく分けて3つ。孤児院に入ったタイミング、里親の手に渡るタイミング、そして働き始めたタイミングだ。」

何となく予想はできていた。そこから先に出会った人達のせいで僕の性格は今のようになって行った。

「まず、1つ目。孤児院にはいるタイミングだ。そもそも、あそこの孤児院は私が亜人として生まれた子供を集めるために作った孤児院なんだ。亜人を産んだ母親は亡くなってしまう。そして亜人が生まれたことはそのタイミングで残された父親や親族、に話される。つまり産まれてきた子供が母の命を奪ったと言い換えても差異がないように感じてしまう人も多い。結果亜人の子供を恨むようにしてネグレクトしてしまう人も少なくない。そこにすぐ気づいて育てていける施設を私は作ったんだ。君の場合は御両親が亜人だったことでそもそも君を育てようというほかの親族がいなかった。君の両親は我々と同じ亜人のコミュニティの中にいて今の君のように里親から見放された状態にあった。結果君はすぐさま孤児院に入ることになった。そこで君にとって最初の辛いことがあったね?」

「...はい。孤児院の中の子供の1人が僕の存在を疎ましく思い孤立しました。」

「そうか。ここにも亜人の特性が関わっている。先にも言った通り亜人はファーストコンタクトで強い感情を持ってしまう。亜人である以上ある程度仕方のないことであるが恐らく君も精神の成熟が早かったのだろう。君を遠ざけた子には心当たりがある。その子もまた亜人であるが彼は精神の成熟はそこまで早くなかった。だからこそ本能的に君に対して恐怖のようなものを感じそのまま忌み嫌うようになってしまったのだろう。これがそのまま1つ目の君に対する私の落ち度だ。こういうことが起こるのは予想出来た。にもかかわらず君を守ることが出来なかった。すまなかった。」

深々と頭を下げるシャロンさんに怒りの感情は湧かなかった。ただ、やはりトラウマをえぐられた辛さが心に響いた。







【あとがき】

この話を書いているタイミングでこの作品のPVが100を越えました。読んでいただいた皆さんのおかげです。この作品が自分の初投稿作品なのでとても嬉しいです。ありがとうございます。

この作品はまだ続きます。これからもよろしくお願いします。もし良ければ♡マークや感想なども頂けるとより嬉しいです。拙い作品ですがもう少しお付き合いください。

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