第9話
突如として話題の中心になったことで話の内容が頭から飛んでいきそうになったけど何とかこらえて理解した。ファーストコンタクトの感情が強く表に出てしまうという亜人の性質上、お互いの境遇を察することが出来てしまう亜人同士が夫婦になりづらいのは何となく理解出来た。それにしたって500年で2回だけとは少ないようにも思えたけれど、事実そうなのだとしたら仕方がない。僕が困惑している内にもう1人話の中心となった人が目を輝かせた。
「ここからはアタシが話してもいいな?」
「あぁ、構わないよ。時間がかかってしまって悪かったね。」
僕とアリアさんに向けてシャロンさんが軽く頭を下げたがアリアさんは気にもとめずに僕に向かって話し始めた。
「この爺さんの言った通り亜人の歴史の中で亜人同士の子供として生まれたのはアタシと少年だけだ。何が特殊なのか気になっているだろう?教えてあげよう。」
アリアさんはシャロンさんのことを『爺さん』と呼んだ。確かに500年も生きていればそう呼んでもいいのかもしれないけれどシャロンさんの見た目は白髪の補正があってもお爺さんのようには見えない。せいぜいイケおじとか呼ばれるくらいじゃないだろうか。と、思考が逸れてしまったけれどアリアさんはいよいよ僕が気になっていたことを説明してくれるようなので思考を切り替えてしっかり話を聞かなければ。
「アタシ達の特殊性を語る前に亜人の子供について言おう。アタシは爺さんみたいに話は長くないから安心しな。亜人が子供を産んでもその子供に亜人の能力が引き継がれることは無い。これがルールだ。つまり亜人は突然変異のように普通の人間の両親から生まれ、普通の子供を産んで死ぬ。まずはこれを理解しな。」
シャロンさんは『爺さん』と呼ばれることに抵抗は無いのかとチラッと見てみたらしょうがないなと言った表情で苦笑いしていた。
また話がブレてしまった。しっかり聞いておかなきゃなのに。
「亜人の子供はあくまで普通の子供ってことですね?」
「そうだ。だけどアタシと少年はそこが違う。亜人同士の子供は亜人になるというのがアタシと少年の存在でほぼ確定した。」
衝撃の事実だった。
「つまり僕も亜人と言うことですか?」
「そうだ。しかも興味深いことにアタシと少年は同じ種類の亜人だ。アタシと少年は共に“吸血鬼”の亜人なのさ。」
「で、でも僕はフィクションなんかでよく見る吸血鬼の特性はほぼ無いですよ?」
「少年が知っている吸血鬼の特性は?」
「えーと、日光に当たると燃えるとか、十字架が苦手とか、ニンニクが苦手とか、鉄の杭を心臓に刺されると死ぬとかですかね。」
「その中でアタシに当てはまるのは日光で燃えるということだけだ。十字架なんて見ようがなんともないし、ニンニク入りの料理はむしろ好きだし、アタシは鉄の杭が心臓に刺さった程度じゃ死なない。それに日光に当たった部分が燃えたって燃えたそばから再生するから死にはしない。まぁ、死ぬほどしんどいけどね。」
「そ、そうなんですか。でも僕は日光に当たってもなんともないですよ?確かに日に当たるのは好きでは無いですけど。」
「そこもまた両親が亜人であることの特殊性が関係している。さっきの説明では不十分だったな。片親が亜人なだけでは能力の引き継ぎは起こらない。しかし、両親共に亜人の場合はその両親の亜人の特性を引き継いで生まれる。アタシもそうだったし、少年もそうだったからこれまたほぼ確定と見て間違いないだろうね。但し、その能力は子供が成体になるまでしか残らない。少なくともアタシはそうだった。つまり少年はまだ17、18歳だからギリギリ吸血鬼の能力が表に出てないだけでそろそろ完全に吸血鬼となるってことだ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます