第6話

「しっかり順を追って説明しろと言っただろうが」

彼女に見蕩れていたのかあるいは圧倒されていたのかいずれにせよ気づいた時には彼女の後ろに背の高い男性がいた。和服の似合う長髪の白髪の男性は見た目こそ若く見えるもののその白髪が年齢を分からなくさせていた。彼女と同じようにどこか不思議な魅力があるような雰囲気だった。

「急に現れて混乱しているだろうが私達の話を聞いてくれないだろうか。」

低いのに聞き取りやすい声で丁寧に質問され、戸惑ってしまった僕は「はぁ」としか言えなかった。

「ありがとう。早速で申し訳ないが君に謝罪をさせて欲しい。君の人生がここまで歪んだものになってしまった原因は、私と彼女を含め“我々”にある。」

唐突にそう切り出されても何が何だか分からなかった。

「訳が分からないだろうが、ひとまず聞いてほしい。君は相槌をうつなりあるいは聴いていてくれるだで構わない。」

状況は理解出来ないが僕の知らない何かを知っていると言った雰囲気のある男性にとりあえず頷いておいた。

「ありがとう。そう言えばまだ名を名乗っていなかったな。私はシャロン。そして彼女は」

「アリアだ。」

彼、シャロンと名乗った男性が現れてから言葉を発していなかった彼女が彼の話を引き継ぐように名を教えてくれた。名を教えて貰っておいて黙っておく訳にもいかないと思ってた僕も慌てて「あ、えーと翔です。」と名乗った。

「気遣ってくれてありがとう。話しやすくて助かるよ。さて、君の人生について語る前にこの人間社会全体について話させてもらおう。今この世界で人間として生活している存在は2種類存在している。1つはただの人間。君がこれまでの人生で学んできた人間という認識で構わない。そしてもう1つ、それは“亜人”と言われる存在だ。この“亜人”と言う呼び方は通常の人間達がつけたものだ。最初に亜人が生まれたのは今から500年ほど前。現在のイタリアにあたるエリアで生まれた。最初の亜人は龍と人間が混ざった亜人だった。生まれた瞬間の見た目こそ人間と同じだったがその子供が亜人だと分かったのはそれからすぐのことだった。理由は簡単で成長スピードが異常だったからだ。見た目は人間とほぼ同じにも関わらず成長速度は他の動物たちと同じように2、3年で成体へとなって行った。つまり2、3年で人間で言う成人と同じ容姿に成長して行った。その子供は街中から恐れられ、酷い言葉と暴力を受けた。そんな環境から逃げ出すように街を出た彼は生物学的に言えば既に成体となっていたこともあり、精神の成熟も知能の発達も早かった。どこに逃げていくべきか迷い続けた彼は彷徨い続け、挙句の果てに海に落ちてしまった。しかし、ここで亜人としての能力が発揮された。龍の亜人出会った彼は水中で呼吸ができ、かつ水中をもの凄いスピード移動することが出来た。その結果イタリアから遠く遠くへと逃げることができ、最終的にここ日本へ辿り着いた。ちなみにその龍の亜人は今なお生きている。容姿は100年で人間の見た目で10年ほどの歳をとっている。つまり今は50代か、60代ほどの見た目だろう。どうかな?ちょうどそのぐらいに見えるかな?そう、隠すことでも無いから言っておくとその最初の亜人というのは私だ。」

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