第3話

空虚な生活がしばらく続き、僕は小学生になった。里親は世間体を保つために学校にだけは僕を通わせた。必要最低限の物だけが買い与えられた僕の小学生生活はこれまた空虚なものだった。

小学校生活では同級生に虐められることはあまり無かった。顔立ちが整っているのを隠すために伸ばした前髪が話しかけづらいオーラを作り上げたことでそもそも深い関係を築かなかったのが功を奏したのだろう。

しかし、先生はそれを良しとしなかった。

子供のうちは他の子達と協力し合い、共に成長していくべきだという信念を持った先生は僕が他の子達と関わることを強制した。休み時間に強引に僕を外遊びに連れ出したり、行事の際には目立つ役回りをされられたことも多々あった。

その都度拒否を示したものの、先生は僕の話に聞く耳を持たず、全て自分が正しく、自分は生徒のために動けるいい先生だと悦に浸るように、自分のために僕を使った。

この頃、ついに僕は社会が腐っていると思い始めていた。これまでは自分の周りの環境が他の人と違ったためより特殊な状態になっているのだと思っていたが、そうではなかった。学校には僕の他にもあまり他の子達と関わっていない子がいたにも関わらず、先生は僕を助けた気になって満足していた。それで僕は大人は自分のために、自己満足のために子供を利用しているだけの存在だと気づいた。

やりたくもないことをやらされ続けながら学校でも家でも空虚な時を過ごしながら僕の小学生生活は終わった。

そして中学生になった時、僕の新しい担任となった先生が『どんなものでも構わないから、夢を持て』と言った。その言葉を聞いて僕は初めて自分のやりたいことを考えた。自分の中に生理欲求以外の欲求が湧いた初めての瞬間だった。そして僕は自分でも物語が書いてみたいと思うようになった。変わらず好きだった読書が物語が、別の形で僕を救ってくれるかもしれないと思った僕は本を読みながら、自分だったらどうするだろうかと考えるようになった。

そして3年生になり、改めて失望することになった。変わらず担任だった夢を持てと言った先生と進路の話になり本を書きたいと話した瞬間先生は僕を否定した。本を書いて食っていけるか、生活して行けるか、なぜ他の子達と同じようにまっすぐ高校生を目指さないのか。まるでマシンガンのように僕の考えを否定する言葉を言い続けた。

あなたに夢をもてと言われたから小説が書きたくなったんだと話したらそんなバカげた夢は捨てて安定して生活して行けるような未来を目指せと、もはや鬱陶しいと感じていることを隠そうともせずに僕に伝えてきた。

正直意味がわからなかった。手のひら返しどころの騒ぎではない。滅茶苦茶だった。

この先生は自分の発言に責任も持たずにただいい先生が言いそうな言葉を生徒に投げかけ、自分の生活が崩れない程度に生徒に干渉し、平和に卒業させればそれでいいと思っている人なんだと感じた。

里親といい、担任の先生といい、まともな大人は一人もいないのではないだろうかと中学校卒業前に思ってしまった。

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