第2話

結果周囲と関わりを持てなかった僕は本に逃げるように莫大な量の本を読んだ。

文字が読めるようになるのが異常なまでに早かった僕は施設の人からも恐ろしい物を見るような目で見られるようになった。

最初の頃は絵本を読んでいたが、本を読み始めたのが早かったからか、精神の成熟も早く4歳になる頃には小学生向けの本を読むようになり、5歳の頃には中高生が読むような本を読んでいた。元々施設にあった本ではなく施設の人が本を読ませておけば危害を及ぼさないと判断し、与えてくれていたのだろう。そう思えば優しくしてもらっていたとも取れるかもしれないが、この辺りが僕の人生で最も幸せな時期だった。

6歳の誕生日の2ヶ月ほど前に僕に里親が現れた。その人たちは長年子供を欲していたが、母体となる女の人の体力を考えて里親となって子供を育てる決断をしたようだった。長年かかってしまったことで2人の年齢はだいぶ高かったが、その分長年培った子育て欲は僕に向けられて爆発するはずだった。

しかしそうは行かなかった。僕と数日過ごした彼らは僕の精神が成熟し、異常なまでに大人びていることを恐れた。結果彼らはまた新しい子供をもらってきた。僕が兄弟を欲しがったと言う体裁を取り社会の批判の目が向けないようにしながら僕の代わりを用意したのだった。

その子は僕の一つ上の年齢の子でその歳らしい振る舞いだった。あれが欲しい、これが欲しい。あれがやりたい、これは食べたく無い。子供ながらの我儘を里親の2人は困りながらも愛くるしくてたまらないと言うような目でその子を育てた。そして僕の存在を忘れるように3人で思い出を作っていった。

外食や旅行も3人で行き、僕には最低限の食料を残してやりたいように過ごしていた。

里親の2人は世間体を気にしていたこともあり、側からみれば僕は他の子供たちと同じように育てているように振る舞っていた。。しかし実情は、僕との会話やコミュニケーションはなく、自分のことは全て自分でやらざるを得なかった。

更に拍車をかけるようにその家での生活を息苦しいものにしたのは2人目の子供の存在だった。彼もまた施設を支配していた男の子と同じように暴力で僕を下に置いた。里親から愛情を向けられていないことは子供の彼でも理解していて、それ故に僕に何をしても里親に怒られることはないと幼いながらに感じた彼は僕の体でやりたい放題に遊んだ。

体中があざだらけになったが彼は顔だけは手を出さなかった。しかし、それも里親のせいだった。里親の「おかげ」だと思うかもしれないがそうじゃ無い。

一度だけ彼に「そうやって暴力を振るうだけの馬鹿な生活をしていて楽しいのか」と挑発した際、彼は怒り、僕の顔を2、3発殴った。それを見た里親が「どんなにムカつくことを言われても顔を殴るのはやめなさい。他の人にバレてしまうかもしれないから。だから服に隠れる部分だけにしなさい」と嗜めた。

まるで陰湿なイジメのような台詞を吐いた里親を僕はその瞬間に決定的に嫌うようになった。そして、それ以来子供の彼も里親の言いなりである人形のようにしか捉えられなくなり、僕と三人の家族の溝はそれまで以上に深いものとなった。


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