第2話 帰ってアニメみたい。。。

1章 2話 帰ってアニメを見たい

「じゃあちょうどいいね!うちのサークル入ってよ!」


俺に向けられた言葉が頭で反響した、頭の中に言葉が響き続ける中なんとか声を紡ぐ。ここで無視すると大抵面倒なことになるを知っている、この瞬間も声をかけて来た美人を周りが見つめているのだから。

「なんのサークルなんですか、、、?」

「ボランティアサークルの””青い鳥””っていうの!まぁ名前なんて何でもいいから一度部室に来て」

俺がなんとか捻り出した言葉を凄まじい勢いで上書きしながらその女は歩き出した、まるで着いて来るのが当たり前かのように。

「お疲れ様です〜」

ギリギリ女に聞かれることのない声でお別れを告げ、俺はお目当ての教室へと歩を運んだ。

春休みから目をつけていた木曜3限だ、流石にこちらの方が優先されて然るべきであろう。皆と俺では講義の情報量が段違いなのだから。

お目当ては去年発掘した単位をすぐくれる教授の講義だ。

1回目の講義では出席と毎講テストを行うと説明をして ””そういう人たち””を追い出し実はという神みたいな教授なのだ。

「出席カードだけではなく毎講義小テストを行いそれを出席のカウントとして利用します」

「もちろん小テストはレジュメからだけではなくその講義を聞いていればわかる内容から出題します」

去年聞いたのと全く同じ説明、そしてそろそろこの講義は面倒と気づいた奴らが退出して行くであろう。

ガタガタ……

ほらね?後ろの方でスマホを弄ってた連中が動き始めた。本当はこの大学随一のありがた講義であることを知ることもなく。

所謂落単と呼ばれる講義では、講義中くっちゃべってる奴らも居る中この講義では1回目の講義にふるいにかけてくれるありがたい限りだ。

「それでは初回は成績の付け方の説明のみで終了します次講義からはレジュメを配布しての講義になりますのでよろしくお願いします。」

「こんな面倒な講義受ける奴いるの?w」

「怠過ぎだろ〜違う講義入れるわ」

「ウチがテストとか無理でしょw」

教授が退室した瞬間吹き上がる文句の嵐、大学に何しに来てるのか?という人のことをまるで言えない疑問を飲み込みながら格好だけのノートと筆箱を鞄にしまい込み教室を出た。

今日はこれで帰れると思うと足も軽くなる、帰宅したらインスタント麺でも食べて昨日のアニメを見ようそんなことを考えていたら。

「こんにちは♪」

周りの喧騒から浮き出た俺へと向けられたであろう言葉が耳に突き刺さる。

恐る恐る顔をあげるとそこには先程声をかけてきた美女が居た。悲鳴が出そうになるのを抑え顔が引き攣らないよう無理やり声を出す。

「こんにちは〜お疲れ様です〜」

お疲れ様です便利な言葉だ、都合が悪い時は大体これで逃げられる。

「はい、お疲れ様じゃあ部室に向かいましょうか」

先程を学んだのか今回は逃さないとばかりに手を握って来る。

「おい!」

あ、そう思った時には既に振動は喉を通り過ぎ声となっていたし、握られたはずの手を振り解いていた。

鳩が豆鉄砲を食ったようとはこの事かとばかりの顔を晒した美女だったが、何事もなかったかのように歩きはじめた。

「サークル棟の2階なの、こっち」

「ああ。」

やらかしたという事実だけが巡り、帰るという頭はなく俺は項垂れながらもサークル棟へと歩を向けた。

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