オタクなりの幸せを求めることは罪ですか?
@FRE0012
第1話 愛の数
この世界の愛の数は不変で一定である
——by 俺
多くの人に愛される人間は、多くの人を愛することが出来る。逆に愛されることが少ない人間は人を愛することが出来ない。
じゃあこういう場合は?などと聞かれるかもしれないが、そんなものは知らない。
所詮は俺みたいな、人間を信用し切れないキモオタが自分に言い訳するためだけの戯言だ。
「火曜2限の中村落単らしいから一緒に取ろうや」
「マジ?出ないで良い系!?」
「テスト前だけ出ればおっけーらしいw」
「取りますか〜w」
教科書どころか、大き目の筆箱すら入らないような手提げを下げた2人組の会話が耳に飛び込む。
2限の中村先生ね、と脳内にメモを残す。
友達のいない俺みたいなボッチ大学生の情報源は、眩しい人たちがする会話だ。
「そろそろ行かないと」
誰に話しかけるわけでもなく呟いた。1人に慣れると1人でに声が出てくるのだ。身体が声の出し方を忘れないようにする為の反応なのかもしれない。
なんてカッコつけたことを考えニヤニヤしながら、余裕があるかのように食堂をでる。
人より1年余計に時間をかけてここに来た自分の特権であるかのように堂々と。
それは人より劣ってると自分を隠すように、態度で上書きして行った。
「これどうぞ!」
食堂から出て少し歩くと、サークル棟前で新学期特有のサークル勧誘が行われていた。
そういえば去年もこういうのを見たな、とオタサーの新歓に行って撃沈した苦い記憶をもみ消す。
「色々わからないことあるかもだから私たちが教えるよ!」
「ちなみに新歓とかって」
「するよー!ビラにも書いてあるけど今週水曜の18時から駅前集合だから来てね!」
目の前で行われる眩しいやり取りを見つつ、この人たちは多くの人を愛せるんだろうとくだらないことを考える。
「あ、これどうぞー!」
やりとりを終えた勧誘係と思わしき女の子はまたビラを差し出した。
もちろん俺にではなく、その後ろにいた派手な格好をした男子学生に。
当たり前だ、こんなのは慣れてるどころか日常特筆することではないとはこの事。
「A館6階。。。」
目的地を呟きながら立ち去る、皆の景色を邪魔しないように、せめて迷惑にはならないように。
「ねぇ!」
ここから一刻を早く出て綺麗にしないと、そんな思いで歩みを早める。
「ねぇ!あなた!」
「え。。。」
まさかここで声を出す羽目になるとは思わず、空気と混じった濁った音だけが出た。
「なんで無視するの!」
「すみません、まさか俺が話しかけられるとは思わなかったので」
話しかけてきたと思わしき人物をマジマジと見ながらなんとか声を出した。
めちゃくちゃ綺麗だな、なんかわからんけどオシャレだし、愛されることに慣れてそうだななんて感想を顔には出さないようにしながら。
「まぁいいや、あなたサークル入ってる?」
「入ってるわけないじゃないですか」
「じゃあちょうどいいね!うちのサークル入ってよ!」
輝く笑顔を振りまきながら、到底理解できないことを言われた。
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