第3話 ロボットバトルやろーぜ(強制

「俺たちこれからどうする?」

「追放物の最終目標の復讐は2話で達成したし、相手を国外に追放したし、元の世界に帰る方法を探すくらいじゃね?」

「帰りたいか?」

「全然」

 巨大ロボが理論無視で動く上に、置き場所の事も考えずに取り出せるのだ。

 こんな天国すぐ帰るのはもったいない。

 もうすこし現実離れした力を楽しませてもらおう。

「ところで」

 大神が瓦礫と化した城下を見て言った。

「この国どうする?」

 王様が逃亡して市民たちは阿鼻叫喚に陥っていた。

 とりあえず、市民か地球から来た人間を探して情報収集をするか。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「どうやら、この国はマルナーゲというらしいな」

 ここに連れて来られた地球人が「問題ごとは全て丸投げの国だな」と言ったのが定着したらしい。

「最悪のネーミングだ」

 その名前に負けず、国民は政治を全て王に丸投げ。その王様は責任を放り投げて逃げ出した。

「俺たちは身の安全を確保したかっただけで、国を乗っ取るつもりはなかったんだけどなぁ…」 

「だいたい、こういう時って王様の悪政に反対して投獄されている人とかいるんじゃないか?その人に政治を任せれば良いんじゃないかな」

「いるのか?」

 国民の一人に聞いてみたが

「いえ、この国では異世界人を使うのは当たり前の事でしたから反対するような者などいません」

 との答えが返って来た。

「最悪だな。この世界。」

「滅ぼしていいんじゃね?こんな国」

 ぶっそうな事を言い出す大神。

「いや、それはだめだろ。人として」

 と窘める、マイルドヤンキーの森山。

 さて、どうするか…


 ▼▼▼話者変更▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼


「なるほど、この世界は地球とほぼ同じ。すんでる住人が違うだけですか…」

 王様が逃げ出した都市で集めた情報をもとに地理教師である天瀬赤石はそうまとめた。 

「まるで、俺はビックリネタが書きたいのであって、世界設定が書きたい訳ではないっていわんばかりの設定ですね」

 と山田がいう。

「ふむ。だとすれば影の長さから推測するに今は正午に近いようですが、太陽の位置、そして夏のように暑いのに乾燥した空気、これは地中海性気候の特徴ですね」

「おお、さすが教師。良い線ついてるねぇ。ここは地球でいうところのイタリア中部に当たるよ」

 と、同じように召還された男性が言った。

「だとすると、まずいですね」

「え?何がですか?」

「イタリアは長靴のような地形と言われますが、陸路だと袋小路です。仮に外国から攻められたら逃げ場がありません。おまけに、南北の道のりは遠く、北に移動しようとすれば南から攻められる形になります」

 戦略ゲームでも、戦力を移動させるとき、後背部から攻められるのはよくある話である。

「あの王様が北と南、どちらに逃げたのかはわかりませんが、どちらにしても二面から攻められるのは確定となるでしょう」

「なるほど、だったらどちらか一方と手を結んで戦わないようにできれば良いんですね」

「いえ、それは難しいでしょう」

「どうしてですか?」

「北と手を組んで南を平定すれば、北の国が今度は攻められると警戒するでしょう。逆に南の国と手を結ぼうとしても、我々は南が勢力を拡大するのに邪魔となります。それなら、北の国と手を組んで両面から攻めようと持ちかけるでしょう。わたしが好戦的な指導者ならそうします」

「先生は物騒だなぁ…」

「事態というのは楽観よりも悲観で見た方が破滅を回避できますからね」

 

「ところで、刃連君はどこにいますか?」

 他の生徒たちの能力が個人戦闘に特化している中で、刃連の能力は戦術兵器並の力がある。

 悪用する気はないが、生徒を守る上で必要な力なのはたしかだ。

「そういえば、この国の情報屋にいろいろ聞いてたな」

 と森山は言う。

「なんか『この世界のロボってどんな感じかなぁ?ゴーレムとかないのかなぁ?』って聞いてたんだけど、『北の方にエルフの魔法王国ならあるから、そこにゴーレムならいるんじゃないか?』って言ったっけ」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


「・・・先生。ものすっっっっごくイヤな予感がするんですが」

「・・・奇遇ですね。私もです」

 山田と天瀬は顔を見合わせる。

 修学旅行とかで予想以上にはしゃぐ奴がいる。知らない場所に来て気分が浮ついて危険な場所にも平気で入って来る奴とか。

 異世界ならなおさらだろう。

 嫌な予感がして先ほどまで刃連がいた場所を見ると


『俺より強い奴に会いに行く』


 と書かれたメモが残されていた。


「「あの馬鹿を止めろぉ!!!!」」

 2人の声がこだました。

 

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「うぉぉぉ!!!!高ぇぇぇ!!!!怖ぇぇぇ!!!凄ぇぇぇ!!!!」

 俺こと刃連は移動力に優れた鳥型ロボット スカイキングに乗って空を飛んでみた。

 アニメだとロボットが空を飛ぶのは当たり前なのだが、実際に飛んでみると感動した。

 阿蘇山から地上を見下ろしたような光景が360度全てに広がっている。

 北東には高い山が広がっているし、北か西には大森林が、南には広い海と、砂漠が見える。

「飛行機だとこんな光景は見えないよなぁ…」

 今の状態で落ちたら確実に死ぬほどの高さにいるのだが、そんな恐怖を感じないほど凄い光景だ。

「感動しているところ悪いんだが…」


「なんで俺まで連れて来られないといけないんだ?」

 と大神がいう。

「戦うんならギャラリーは必要だろう」

「そんな理由で俺は連れて来られたのか…」


「お、あそこに何かいるぞ」

 二つの川に挟まれた豊かな森林の中、2000人位の一団がいる。

「あれがエルフたちじゃないのか?」

 金色の髪に白い肌。聞いた特徴とぴったりだ。

 俺たちは少し離れた場所に降りて彼らを待つ。


「こんにちは」

 返事はない。

「おいっす!」

 言い方を変えたが、やはり返事はない。

「……………お前たちは人間か?」

 お、やっと返事が来た。なので、俺たちは異世界人である事を告げ、どこに行こうとしているのか聞いてみた。

「早馬で、人間の王国が攻撃を受けたというのでな、こうして来ているわけだ」

「へー、人間を助けに?」

「そんなわけ、ないだろう」

 即答だった。

 まあ、あの最悪な王様たちを救おうなんて奇特な人はいないだろう。

「じゃあ何で、こんなに大勢引き連れて来てるの?泥棒でもすんの?」

「泥棒ではない。愚かな人間どもが不法に占拠していた土地を取り戻すのだ」

「不法?」

「元々、この世界は我らエルフのものだったのを他の種族が不当に占拠しておるのだ」

 ああ、脳内で世界のすべては自分のものと思いこんでいたらしい。

 救いようのないバカだ。この世界にはこんなやつらしかいないのか?

「ああ、それはダメだ」

「ダメ」

「あいつらは俺のロボを見て一度逃げ出しただけだ。また戻ってくるかもしれないぞ」

「おまえみたいな子供たちを見て逃げ出したのか?人間と言うのはだいぶ衰えたみたいだな」

 バカにするようにエルフが見る。

「いやいや、あいつらが見たのはコイツだよ」


 そう言って、俺は相棒を呼ぶ。

「来い!バトルマスター!!!」

 空には急に雷雲が立ちこめ、まばゆい光とともに、全長15mの巨大なロボットが現れる。

 10mを超える長い日本刀に炎をイメージした真っ赤な外装。武士をイメージした素敵なフォルム。

 アニメに登場した主人公機が1体 バトルマスターが目の前にいた。(※バンクシーン)


「「「「ぶはははははははははは!!!」」」」

 大笑いされた。

「こんな、こんなちんちくりんの不細工を見て、人間、逃げた、はっはっは、お腹、痛い、こんなので、人間あははははは」

 まあ、バトルマスターは子供向けアニメのロボだ。

 頭身は低い。 だが、これはそれから10年後に作られた豪華版。造形は洗練され面白カッコよさに磨きがかかっている。

「そこまで笑うのなら、そちらはさぞかしすごいロボを呼び出せるんだろうな」

 と言うと。ぴたりと笑いが止まった。

 姿かたちはどうであれ、ここまで大きな存在を呼び出せるとは思えなかった。

 しばらく、バトルマスターを見ていたエルフは

「当然だ」

 と言った。そして、魔術師の恰好をしているエルフたちに

「あの醜いゴーレムを呼び出した醜い人間たちに、我らエルフの美しいゴーレムを見せてやれ」

 と言った。

 言われた魔術師たちは『え?マジで、アレ以上の大きなのを造らなきゃいけないの?』って顔をしたが、大笑いした手前ひっこみがつかないようで、50人ほどの集団で頷き合い、

「出でよ!ゴーレム!!!」

 と叫んだ。

 そういって召還されたのは、全長20mくらいの岩をまとめた岩人形だった。

「おお!!ファンタジーっぽいな!」

 見た目は岩の固まりだが、八頭身で足が長くスタイルがよい。さすがはエルフの美意識と言ったところだろうか?ついでに耳が長い。


「なるほど。ゴーレムといってもその造形はエルフに近い姿になるのだな」

 機械というのは人間のように決まった完成図というのがない。

 腕が4本有ってもよいし、もろい首を無くして胸のあたりに目を付けたり、背中にも目を設置してもよい。

 ただ、操縦者の体とあまりにも違いすぎると動かす際に感覚的な問題が生まれるのだろう。

「たとえゴーレムでも、あの長い耳がないと違和感が有るんだろうな」

 エルフの姿を模したゴーレムは、髪こそ生えていないものの頭の両側には長い耳がついている。

 足はすらりと長いし、腕は細い。

 敏捷性を重視したタイプなのだろう。


「よし!じゃあ勝負だ!」


 こうして国をかけた戦いが始まったのである。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・


「行きなさい!ゴーレム!!!」

 エルフのかけ声とともに、一歩。また一歩と歩き出すゴーレム。

「…………………」

「…………………」

「………なんか、ゆっくりだな」

「うるさいわね!こんな巨体、維持しながら動かすだけでも大変なのよ!!!」

 と女性魔術師っぽいエルフが言う。

「なあ、とりあえず倒せばいいんじゃないか?」

 ゆっくりうごくゴーレムを見て大神が言う。

「いや、岩は鉄より硬度で言えば堅いというし、油断は禁物かもしれん」

「でも、バトルマスターって岩を切る必殺技あっただろ」

「ネタバレするなよ」

 そんなことを話しているとゴーレムが近くまで来た。

「さあ!超巨大ゴーレムよ!そのちんちくりんをぶったたいてやりなさ「バトルマスター!斬岩剣だ!」い!」

 ゴーレムがパンチの構えに入った瞬間にバトルマスターの日本刀が閃き……巨大なゴーレムはまっぷたつになった。


「………………………」

「………………………」

「………………………」

「………………………」


「「「「えええええええええええええええ!!!!!」」」」


 現実に帰ったエルフたちが叫ぶ。

 

「全力で…全力で魔力を注ぎ込んだのに…」

「嘘だろ…」

 後ろにいたエルフたちが脱力して倒れる。

 まるで、進水式と同時に沈没した船をみるかのような光景だ。

「まだまだ!!!」

 魔術師のリーダーらしきエルフが気力を振り絞って叫ぶと、切断されたゴーレムが立ち上がる。

「おお!そうだよな!あの程度で終わるわけがないよな!!!」

 きっとさっきのはデモンストレーションだろう。

 もっと徹底的に倒さないとこうして何度でも復活するというのを見せつけるようとしていたに違いない。

 たとえ復活したゴーレムがフラフラで、すぐにでも崩壊しそうなのだとしても、その後ろで「リックが耳から血が出ました!」とか「魔力枯渇!7人が倒れました!」とか言っているが、それは演技なのだろう。

 うん。多分そう。

「ようし!じゃあちょっとだけ本気でいくぞー!!!バトルマスター!タックルだ!!!」


「「「お前少しは遠慮しろよ!!!」」」


 大神とエルフたちが何か言ってるが気にしない。


 バコーン!!!というボーリングのような音をあげて、足下に体当たりをくらったゴーレムはパーツに分かれて吹っ飛んだ。

「…せっかくの…せっかくの魔力を送り込んだのが一瞬で…」

 魔術師のリーダーが膝から倒れた。

 まるで心がバッキリ折れたかのように。

 これは油断させようという芝居だろうか?

「おい、どうした?そこから手足が分離して飛んできたり、小さなゴーレムに分裂しておそってくるんだろ?そうか。倒れた振りして油断させようって腹だな。良いぜ、乗ってやるよ」

「ハレン、やめてやれ。現実をしっかり見ろ」

 大神が首を振る。

「え?でも俺まだ何の戦いもしてないんだぜ。こちらの世界にきてやっと夢のロボットバトルが出来ると思ったのに、流石にあれはないだろう」

 戦闘用とも思えない、ゆっくりとした動き。

 ちょっと切ったらまっぷたつになる脆い体。

 実物大ガン●ムを戦闘用に作ったらこんな感じなのかもしれないが、何でもありの異世界でこれはないだろう。

 せめてレーザーとかビームを放つくらいのギミックの一つでもあればよいが、あれではただの歩行用ロボットだ。

「貴様が規格外すぎるのだ!!!」

 たまりかねたエルフの一人が言う。

「貴様等のゴーレムに比べたら亀のごとき鈍さかもしれぬ。だがな、あれだけの巨大なゴーレムを使役できるだけでも大したものなのだぞ!!!このお方は大陸でも最強に数えられるほどの魔術を修得された魔術師なのだ!!!我らが弱いのではない!!!貴様欄らが化け物すぎるのだ!!!」

「え?これで?」

 その言葉に、魔術師のリーダーらしきエルフが膝を抱えて泣きだした。

「やめてさしあげろ…」

 と大神がたまりかねたように言う。


 嘘だろ。あれで全力なのかよ。

「俺が戦いたいのはもっと素早いギリギリのロボットバトルなんだよ…これじゃ、物足りないな」

 これではのんびりすぎる。何とかして勝負出来ないものか?

「なあ…」

 俺はエルフのリーダーに話しかける。

「なっ!なんだ!」

「お前の理想とするロボット…巨大ゴーレムを想像してくれるか?」

「なぜ?」

「ストレートに言うなら、弱すぎるんで俺の能力でもう少し歯ごたえのあるゴーレムを生み出す手伝いをしてやろうと思ってな」

「貴様!我々を愚弄するのか!」

 エルフたちが怒り出す。

「バカか、ハレン。ハレンのバカ。あいつらは敵だぞ。敵を加勢してどうする。バカ」

 大神もバカを連呼して俺を止める。

「え?でも、あれじゃ相手にならないじゃん」

 そう言ってエルフたちをみると、肩が小刻みにふるえていた。

「おい、ハレン。エルフってのはプライドの高い種族らしいぞ。それじゃ了解しないんじゃないか?ほら、相手のリーダーが怒ってる。耳がピンと立っててむっちゃ怒っていそうだよ」

 むう。そうか。作戦の練り直しを考えていると。

「わかった」

 と先ほどの女性魔術師であるエルフが言う。

「貴様の提案を飲もう。その力とやらを貸してもらおう」

 あくまで偉そうに言うが、やる気なのはよいことだ。

 俺はスキルを使って女性魔術師の想像するゴーレムを作った。


 こうして、異世界初のロボットバトルが始まったのである。


 さっきの戦い?だろ。

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