第2話 大勝利!クーデター成功。明日に向かってレッツ☆ゴー!!!

 雷のエフェクトを使って登場したバトルマスター。

 全長15mの巨体に分厚い装甲をまとって顕現した姿は神仏が降臨するが如き尊い姿だった。(※特殊な個体の感想です

 自分の持っていたプラモが巨大ロボとして現れたのだ。

 これに興奮しない日本男児がいるだろうか?いや、ない(反語)。


 そんな、記念すべき光景を前に異世界の連中は

「あはははははははは!!!!!!!」

 大笑いしていた。

「なんだ、あのちんちくりんな巨人は」

「頭に対して背が低すぎだろう!4頭身しかないぞ!」

「あんな不格好な生き物見た事がないw」

 散々な言いようである。


 バトルマスターはデフォルメされたロボ、俗に言うSDタイプと言うやつだ。

 頭に対し、胴体は短く足と手がでかい。

 しかし、その姿は20年の鬨を経て洗練され、アニメの本放送を見た事が無い俺がプラモを買い集めるほどには恰好良かった。それに 

「このバトルマスターの機能美がわからないとは、流石悪役。性根だけじゃなくて、脳みそまで腐っているようだ」

 この姿は巨大ロボとして実に理に適っているのだ。

 その凄さを貴様らの体に教えてやろう。


「おい。ハレン。相手がどれだけの強さだとか、この世界がどんな場所なのかも分かってないのに戦うのは危険だ。敵が大笑いしているうちに一旦退かないか?」

 大神が耳打ちする。

「大丈夫だ」

 俺は明快に断言する。

「なんだ?なにか勝算が有るのか?」

 勝算?愚門だな。


「バトルマスターは…無敵だ!」


「「「「それはお前の感想と願望じゃねぇか!!!」」」

 クラス中から突っ込まれた。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「いけ!バトルマスター!斬岩剣 十字切りだ!!」


 その言葉とともに、2本の刀がひらめき10mはある巨大な城門がまっぷたつになる。

「バカな!鋼鉄の門を岩ごと切断しただと!!」

 仕上げとばかりに門の上のブロックも時間差でまっぷたつとなり、下に崩れ落ちる。

 がれきの上を悠々とあるくバトルマスター。

「くっ!!!弓兵!応戦せよ!!!」

 先ほどまでこちらを見下していた司教が苦し紛れの攻撃を命じる。

「魔法付与!食らえ!チャージアロー!!!」

 大仰な炎のエフェクトがついた無数の火の矢がバトルマスターを襲う。しかし

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!!」

 厚さ1mの鎧に炎の弓矢などなんの意味もない。

 つまようじのごとき脆弱さでバトルマスターに当たった矢はへし折れた。

 何の効果もない矢を無視してバトルマスターは進んでいく。


「おい!雷だ!あいつが乗り込んでないって事は、あれはコンピューターで動いているんだ!だったら雷に弱いはずだ」

 と住人の一人が言う。どうやら先にこちらに召還された地球人らしい。

「なるほど。流石は異世界の方」

 この国で優秀と認められた人間なのだろう。したがって優秀でない人間を見捨てた人とも言える。


 つまり敵である。


 よし、バトルマスター。少しこらしめてやりなさい。

「GAOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」

 こちらの意思に反応するようにバトルマスターは咆哮を挙げる。

「魔法隊前へ!」

 ローブに身を包んだ魔法使いたちが40人ほど進み出て詠唱を始めた。

「サンダーストーム!!!」

 半径10mの雷が落ちてバトルマスターの身を包む。

「ハハハっ!どうだ化け物め!」

 と高笑いする司祭。だが

「何だと!!!」

 機械というのは雷に弱いと言われている。

 確かに電子機器は雷が落ちると動きが止まる。

 だが、それは大自然の起こした雷の話だ。

 ほんの一瞬の、それも回避可能な雷などで倒れる訳がない。

「無傷…だと…」

 第一巨大なロボにたかが半径10m程度の電力でショートなど起こせるわけがない。バケツの水と川の水をいっしょくたにするごとき暴挙である。

 とはいえ、魔法使いというのはなにをされるかわからない未知の存在だ。

「バトルマスター!あの人たちをやっつけろ!」

 その号令にバトルマスターは足を動かす。

「王国騎士団の名に賭けて!あのゴーレムを止めろ!!!」

 と無謀な命令を出す人間が行く手に立ちふさがる。その中で立派な槍を持った人間が先頭に立ち

「ははは!我がスキルは『貫通』!どんな堅い鉄だろうが貫けないものはない。そしてサブスキルとして『100人力』もある!この怪力にかかれば貴様ら下等人種などひとたま「バトルマスター!サイドキックだ!」」

 話が長い。

 話の途中ではあるが、俺の言葉にバトルマスターは足の内側で軽くキックした。

「ぐおおおおおおお!!!!!」

 SDタイプゆえに足が大きいバトルマスターのサイドキックは家一軒分の大きさがある。重量にすれば10tトラック3台分だろう。

 そんな鉄の塊の家がぶつかってきたので、ちっぽけな人間たちは空の彼方に飛んでいった。

 さようなら、名もなき騎士団の方々。

「あの…、殺しちゃったの?」

「いや、大丈夫だ」

「何で?」

「バトルマスターはよい子が見る楽しいアニメだったからな。敵を倒しても死にはしないし、勝利の後には改心して「これにて一件落着」と笑いあうアニメなんだ」

 その証拠に、先ほどの騎士が

「話の途中で攻撃するのはマナー違反だろぉぉぉぉぉ!!!!!」

 と言いながら飛んで行っている。

「変な所だけ倫理が働いてるんだね…(※本作に暴力描写はありません)」

 というか、建物とかめちゃくちゃ壊れてるんですけど…との声が聞こえたが、まあ明日には戻ってるんじゃないだろうか?多分。


「くそっ!よくもセインを!喰らえ!メテオ!」

 その言葉で直径5mほどの隕石が落ちてくる。

「危ない!バトルマスター!」

 その言葉で、近くにいた兵士を蹴りとばすと、自分も八艘飛びの要領で壁を蹴って隕石をかわす。

「嘘だろ!何であんな鉄の塊が身軽に飛べるんだよ!」

 魔法を使った一人が叫ぶ。

 飛行機も自動車も鉄の塊だけど、人間より早く走れるし、なんだったら空だってとぶじゃないか。

 機械の可能性を過小評価しすぎである。

「この世界、飛行機とか自動車とかあるのかな?」

 とつぶやく奴がいたが、知らん。いたら、多分地球人が異世界をのっとっていたんじゃないだろうか?

 そんな事を考えていると、バトルマスターの背中で爆発が起こった。

 魔法使いの攻撃のようだが、厚さ50cmを誇る装甲には傷一つ付かなかった。

「レンガの城から魔法を撃ってきてるのか」

 と大神が攻撃された方角を見る。レンガ造りの尖塔に数人の人影が見える。

「やれ!バトルマスター!」

 次の瞬間、バトルマスターの刀が一閃し、塔が城から切り離され、落ちた。

「おい、ハレン。あれ大丈夫なのか?」

「ああ、安心しろ。みね討ちだ」

「……いや、むっちゃ建物切断してるし、ぶっとい鉄の棒でぶっ叩いているからね。めっちゃ建物ふっとんで墜落してるからね。20mくらいの上空から」

 まあ大丈夫だろう。……………………多分。

「隊長!塔が壊れました!」

 慌てる兵士たち。

「クソ!バリスタ兵、射撃用意!」

 全長3mはありそうな大型の弓10本がバトルマスターを狙う。

「よし、バトルマスター!擦り足で走れ」

 その言葉とともにバトルマスターがムーンウォークのように走る。

 一歩二歩三歩。走る度に道路に布陣する兵士たちが吹き飛ばされる。

 全長15mのバトルマスターの一歩は約5m。

 秒速なら約 10m。

 分速で 約600m

 時速だと約 36となる。


 車に比べるとゆっくりと感じるが、バトルマスターは15mの巨体である。

 そんな6階建のビルが原付バイクと同じスピードで進んでくるのだ。

 まあ、普通の人間ならかわしようがない。

 敵の軍隊はあっと今に瓦解した。


「どうやら、あそこが本拠地のようだな」

 立派な3つの塔を持つ城が見える。

 そしてその門の前には国中の兵士を集めたような集団が立っている。

「我が国始まって以来の危難である!あのデク人形を倒した者には褒美は思いのままだぞ!!!」

 と偉そうなおっさんが叫ぶ。

「あれが、王様かな?」

「なるほど。あれが悪の親玉か」

 あれを倒せば良いのだろう。

「おおおおおい!能力はどうであれ、国のトップだぞ!捕虜にして交渉した方が得だろう!」

 なるほど。それもそうか。

「よし!バトルマスター!一旦ストップだ!」

「ものども!いまだ!持てる技の全てを打ち出せ!!!」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「おおおおお!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 数千の衝撃派や投石、よく分からない攻撃がバトルマスターの足に集中する。

 急ストップした所に思いも書けない攻撃を受けて、流石の安定性の良いバトルマスターもバランスを崩し、攻撃者たちの方向へむかって………こけた。

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ぐぽおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

 地震のような地響きを立てては城に倒れこむバトルマスター。

「ぎゃあああああああああああああああああ!!!!」 

「城が…城が…」

 この国の城は高さ20mくらいの立派な建物だったが、耐震設計がされてなかったらしい。

 鉄骨も無ければ鉄筋もはいってないレンガ造りの建物はあっさりと崩壊した。


「………これ、弁償したらいくらに成るんだろうな」

「いやな事言うなよ。むしろ敵の施設を破壊したんだからボーナスポイントゲットだろ」

「お前はゲーム世界の住人か」

「そのまえに、敵の心配をしてやれよ」


 俺と大神の会話に山田がツッコミを入れる。

「ああ、それは大丈夫だろう。ほら」

 みれば、埃のあがる瓦礫のむこうで、馬で逃げ出す王様や司教たちがいた。


「お前たち!覚えてろよぉぉぉぉぉ!!!!!」

 見事なまでの捨て台詞を吐いて逃亡する悪い国の王様たち。


「よくわからんが、勝った!!!第三部 完!!!


 俺は、バトルマスターと夕陽をバックにガッツポーズを決めた。



「転移早々国のトップを追いだして国を奪って、これからどうすればいいんだ…」

「それよりも、この国の復旧って俺たちがしないといけないのかな?」

「これで余所の国が攻めてきたら後味悪すぎじゃねぇか?」

 と後ろで学級委員長や先生が頭を抱えていたけど、まあ後で考えればいいじゃない!!!(良い笑顔で)


 実際に口にしたら先生からグーで殴られた。ひどい!暴力教師!


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 くぅ~疲れましたw これにて完結です!

 ………というネタでも長長と入れようかと思いましたが、冷静に考えたら寒いでやめときます。


 本作はモデルとなったプラモを横に置きながら脳内麻薬を出しながら書いているので、プラモネタが有る間は書けそうな気がします。

 先日も2体ネットで注文しちゃいましたし…

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