11話 商業区にて

ー買取場ー


「思ったよりも早かったですね。もう少しで終わります」


 それから少し経った後呼ばれた。


「こちらが買取金額です」


 そう言われて渡されたのは白金貨が複数入っている袋だった。


「若干多い気がするのだが…気のせいか?」

「いえ、これであっています。ただ土竜ソロウドラゴンなのですが普段はオークションにかけることはしないのですがあまりにも綺麗な為、オークションにかけることになりました。そのため、土竜ソロウドラゴンの買取金額が不透明なため、最低金額のみ入れてあります。後日またオークション後に金額を上乗せしようと思います。領主館に届けようと思うのですがそれでよろしいですか?」

「はい、それでいいですよ」


 まあ、せやな。傷ないもんね。ドラゴンともなればたとえワイバーンのような最下級のドラゴンでも傷なしで倒すのはなかなか難しい。それをワイバーンはA級でそれよりも強いA +級である土竜ソロウドラゴンで成し遂げたのだレアなんて物じゃ無いウルトラレアとかスーパーレアとかの類だ。俺以外でも達成できる人たちはいるようだが、スーパーレアとかウルトラレアの類なのは間違いない。


 今更…今更気付いたのだがこれ拙くね?非常に拙い。完全に国王とかに目をつけられることをしてる。むしろ他国介入もあり得る?10歳という子供がこれを成し遂げるのは非常に話題性があるのでは無いか?現代社会だと即ニュースもんでは?


 やらかしたな。まあ済んだことをクヨクヨしててもしょうがない。過去はどうにもならんのだ。むしろ開き直るのも…それはダメだな。冒険者生活が消えちゃう。


 これはあれだね。思いついたら即行動をやめようか。そうすれば無くせるはず。栄光なんていらない。むしろ積極的に隠そう。その為には代わりに俺がやったことを言い方はアレだが、なすりつける人が必要だ。


 行動せざるを得ないときはその人になすることにしよう。問題は誰になすりつけるかだ。アンジュ、シルフィ、アリス、ソフィアの4人はやめておこう。自分の都合で迷惑かけるのに巻き込むのもどうかと思うからな。


 どうせなら調子乗ってる頭悪いやつがいれば1番なんだが。生憎そんな知り合いは前世も含めいない。いや、前世はいたか。軽く首締めてやろうかと思ったことが何回かあった気がする。


 そんなことはどうでもいい。なすりつける奴がいないのが問題である。どうするべきか。いや、そんなに急ぐこともないな。学園にいたらそんなやつ探さなくても見つかるか。


「では俺たちはこの辺で」

「ええ、またのご利用お待ちしております」


 用が済んだので俺たちはさっさと商業区に向かおうとしたが、もう少しで昼飯の時間だということに気づいた。一旦帰るか?いや別に昼飯は来なくていいって言ってたな。外で食べてもええってことだ。帰るのめんどくさいし近くに良さそうなのがあったらそこで昼飯を済ませよう。









ー数時間後ー


 無事に食事を済ませた俺たちは商業区の露店が立ち並ぶ商店街に来ていた。片っ端から大賢者で鑑定をしているがあまり良さそうなものはない。妥当な値段かぼったくりのどちらかだ。掘り出し物があったら買おうかと思っていたがいいのはなかったな。普通に使う日常用品でも見るか。服とかが欲しいな。


「良い物なさそうだな。服があまり種類ないから見に行きたいがどうする?」

「私も服見に行きたい」


 アンジュと別れることになるのか。まあ大丈夫だろう。そこらへんのチンピラなど敵ではない。


「ソフィアは?」

「じゃあアンジュの方ついて行くわ」

「わかった。女子服の店はあまり行きたくないから助かる。いつ、どこで合流する?」

「終わったら片方の方に行くでいいんじゃないかな?」


 そうなるとすれ違いが起きるかもしれないな。しかし集まる場所がないのも事実。広場に集合だと街の真ん中だから遠いからね。ん?確か‥あった。


「じゃあこれ持ってきなよ」

「なに…これ?」


 これは腕輪型のGPSでそれぞれの位置が確認でき、会話もできる優れものである。数がある程度必要なためか2つで10DPと結構安い。しかし一つずつは出せない。操作方法も簡単で腕輪にある紅玉をさわると地図が出てきてそれぞれの位置が丸で示されている。緑は自分、青は仲間、赤は登録されていない物、つまり敵が持っているということ。付けなくても触れているか、動いていれば機能する。登録も簡単だ。再登録は難しいけどな。コール機能も付いており、音が鳴る。もちろん鳴らせたくないとき用に切ることもできる。履歴は残るので大丈夫だ。


「紅玉を触ってみて」

「なに…これ?」

「そしたら…



ー説明中ー



「これがあれば安心ね」


 服は俺の方はすぐに終わるだろうし、奥の方行ってみるかな。奴隷がいるが他にもいろいろある。面白いものも奥にあった方がありそうだな。










 このぐらいでいいか。

 ある程度の服を忍び込み用の平民服と貴族服の二種類をそれぞれ複数買い、今着ている服は借り物で、また貴族だと騒がれるのも困るので平民服に着替えた。とはいえみる人が見れば良い値段のするものだとわかるだろう。


 掘り出し物が見つかるといいな。奴隷商はある程度固まっていると言う話を道すがら聞いたからその部分以外に行けば見ることはないはずだ。










 考えが甘かったな。固まってると言うのは嘘だったようで当たるところに奴隷が売られている。軽く吐き気がする。見つけてすぐやめればよかったのだが、たまたまだと思い、そのまま進んでしまった。


 ドンと、近くで音がして、そのあと少し遅れて随分汚れたフードを被った人がそばを通り過ぎて行った。身長的に年齢があまり変わらない人なのは明らかだった。

 その後数人の男性がこちらにやってきた。


「人影を見なかったか?」


 見た感じ統一されていない鎧をつけているので兵士ではなく、奴隷商の雇った傭兵で、あの逃げていた人は奴隷なんだろうとこととは想像がつく。さすがにここで半端見殺しのようなことはしたくない。とはいえここで嘘を言えば今はいいが後々騒ぎになるのは火を見るよりも明らかである。

 ここでの最善策は…これだな。


「多分あの人ならあっちに行きましたよ」

「そうか。ありがとう。行くぞ」

「おう」


 俺は正直にいった方へ指を刺した。

 みんな変なことをしていると思っていると思うが黙ってみていて欲しい。何も俺も見殺しにするつもりはないといったばかりだ。


 『きゃあ!』


 少しすると遠くの方で甲高い叫び声が聞こえた。どうやら捕まえたようだな。叫び声からして少女か。…流石に少年ではないよな?


『グアアア!』


 …え?やられたの?と、思っていたらどうやら違う人らしい。紛らわしすぎるだろ。

 ん?もしかして?アンジュが返り討ちにしたのか?誘拐でもされそうになったのだろうか?いやそんなわけないか。


 それから数分が経ったのち、先程の傭兵らしい格好をした人たちがやってきた。


「おや?先ほどはありがとうございました」

「いえ、それほどのことはしてないです。奴隷商の方で?」

「ええ、実際には雇われの身なんですが。見にきますか?」

「奴隷ですか。少し興味がありますね。お願いします」

「わかりました。ついてきてください」


 ここからが本番である。






  少し歩くと大きめの建物が見えてきた。二階建ての建物である。2階は高級な奴隷がある場所らしい。奴隷の建物など地下の収容所しか知らなかったので初耳である。

 あの奴隷の名前はセリアと言うらしい。高級ではないので地下の収容所しかも地下3階にいたのにいつのまにかいなくなってしまったらしい。Lv1らしいが偽装でも持っているのか?それとも何か特別な力や物を持っているのだろうか?


 まあいいか。後で直接本人に聞けば良い。


「お、帰ってきたか。次の収容所を決めるまで二人で監視してなさい」

「わかりました」

「いらっしゃいませお客様。何をお探しで?」


 傭兵の相手をするとすぐに客の対応に入る。しっかりしてそうだな。普通、客が先だとは思うが。


「そこにいる人を買いたくてな」


 そう、正規の方法でやれば何も問題はない。当たり前か。

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