5話 バルクリ村襲撃事件その後

 あれから数日が経った。俺は今自分の部屋にいる。ここ数日は籠りっきりだ。ずっと考えていた。俺の判断は正しかったのかと。


 俺にとってこの事件は多くの悲しみと経験をもたらした。正当防衛と言えば聞こえはいいが明らかにやりすぎである。過剰防衛と言えるだろう。俺にとって初めてのそして最後にしたい殺人という行為。拘束という回避できる行為があったのにも関わらずだ。


 当然の如く俺は悩んだ、しかし悩んだことで過去が変わるはずもない。そんなことが起きたら奇跡としか言いようがない。しかし悩んだ。無駄だと知っていながら悩んだ。こうすればよかったという後悔だけが生み出された。


 この事件で俺は軽々しく命を扱った。本来してはいけない行為である。しかし人間というのは非常に不思議で初めてというのは言うならばストッパーである。どうせ一回やったしという思考に陥る。万引きを繰り返すのもこれが原因である。1回目の罪悪感はものすごく重いしかし2回目からは次第に軽くなっていく、そしてその行為がもはや当たり前になる。


 それだけは避けなければならない。俺は力を持ったことによりどうせなんとかなると言う油断があった。こんなことが起きるなんて予想していなかった。予想外だった。だからストッパーが一時的に消失した。


 結果としてそこには後悔と酷い経験と酷い惨状が残った。慢心であった。何が起きても大丈夫だと高を括っていた。しかしダメだった。救えなかった。時すでに遅しとはまさにこのことだと。


 外のことはアリスたちから聞いた。今からは迷宮ダンジョンで遊ぶらしい。


 内容はこんな感じだ。


 偶然通りがかった冒険者たちのおかげで復興もはやかったが、血だらけになった家などもありまだまだ時間がかかるらしい。死体の方は墓地に全て埋葬した。方法はゾンビやスケルトンになる可能性があるためこの世界では火葬し小さい入れ物にまとめて入れるのが常識である。土葬などはこの世界ではあり得ないのだ。


 当然シルフィたちの両親も火葬である。葬式などという文化はこの国にはないため、極めて事務的に行われ火葬された。


「ボラン大丈夫?」


 突然声をかけられた。相手はシルフィだった。


「ああ、大丈夫だ」


 実際は大丈夫ではないがここでそのこと言ったら心配されるだけだ。俺の方が長く生きてるから心配させたらダメだ。


「本当に?」

「もう大丈夫」


 疑われてるな…。当たり前か誰だってこんなこと経験したら大丈夫じゃなくなる。


「母さんは?」

「リビングにいるよ」

「他に誰か一緒にいた?」

「ボランのお父さんも戻ってきたみたいだよ」

「そうか。シルフィたちはどうするんだ?」

「領主の家に行くんでしょ?だったら一緒に行くよ。アンジュも心配だし」

「そうだね…。一緒に来てよ。ここにいるのも大変だろうし」


 あいつのところに行くのは嫌だが行きたくないと言ってもアンジュは行くだろうし、はんば強制的だな。拒否されるのは予想外だろうがな。そう考えるとあいつがいるのは大変都合が良い。


「多分準備期間が短くなると思うよ」

「え?長くなるんじゃないの?」


 ここではあえて言わないがこんな事になったのはあいつがここに来たからである。領主なのだから恨みを買っているからだろう。派閥抗争の可能性もあるけどな。つまりいつ来てもおかしくないってことだ。あれが第一陣の可能性だってある。だとしたらまたすぐ攻めてくる。早く行かないとダメである。


「まあとにかくいつ行くかのは聞いてみないと分からないけどな」

「そっか」

「じゃあとりあえずアリスたちを呼びに行くか。今後の予定を話し合わないとな」

「わかった」


















 迷宮ダンジョンの中に入るとどうやら射撃訓練?をしているようだった。最初に銃を作り始めてから3年、俺たちはいろいろな銃を作った。


 まず最初の1年はコルト M1911という名銃(ピストル)を作った。汎用性が高いからよく使うことになるだろう。現代も活躍しゲームにも多く登場していることもあってもう少しで一年立つぐらいはかかった。


 次はショットガンを作ることにした。作ったのはレミントンM870だ。これも有名な銃だ。FPSとかよくやってる人はわかるじゃないか?これももう少しで一年ぐらいかかった。


 最後はアサルトライフルだ。作ったのは89式5.56mm小銃だ。日本の銃だ。完全に見た目で選んだ。なんか文句あっか?


 この三つの銃はそれぞれ10丁。マグナム銃とかSRとかも作る予定だったが時間がなかった。弾は拳銃が作った銃の装弾数が7発だから各10回装填分で700。SGの方は16ゲージ7発で各10回装填分で700。ARは30発(拡張済)で各10回装填分で3000。


 銃を作ったとき一年掛からないぐらいだったので余りが出た。その時間を弾の製造に使った。


 まあ銃に関してはこんな感じだ。この世界の銃の威力がどれくらい発揮できるかはまだわからんがまあ雑魚モンスター当たりならアサルトライフルARで掃討できそうだがまあそこは日本の技術だし信頼できるだろう。作り手は俺だが。まあ今はこんなことを気にしても仕方ない。


「アリス、アンジュ、リビングへ行こう。これからのことで話がある」


 まあまだ10歳だしアンジュに関してはまだ一桁だしあまり話してもわけわからん状態になると思うが一緒にいないよりかはマシだろう。


 まあ多分俺とシルフィとあいつと母さんで話し合うことになると思う。アンジュとアリスは聞いてるだけかな。

















 リビングに着くと聞いた通り2人がいた。あいつの後ろには執事?のような服装の人物が立っていた。十中八九あいつの従者であろう。


「話があるんだ」


 やつは突然のことに驚いた様子だったがやがて納得するような表情になり口を開いた。


「いつここを出て領主館に行くのかという話かな」


 やはり思った通りの反応を見せ、やつが落ち着いているのに気がついた。つまり盗賊に扮した者に襲われるなど日常茶飯事であるということだ。流石に領主館に盗賊は来ることはないが暗殺者ならきているのだろう。


 そうなった場合こちらにも被害が及ぶ可能性が出てくる。人質として誘拐されないとは限らないのだ。俺自身は別に誘拐されても自力で抜け出すことは可能だがアンジュたちに関しては自力で抜け出すなんて芸当はできるわけがない。


 つまりアンジュたちが誘拐されたら洒落になんないというわけだ。そうだとしたら行かない方がいいわけだが盗賊(正確には扮したやつ)に襲われると知っていながらここまできたのだ。何かしらの事情があると考えて良い。事情によっては強制的にドナドナされるのは間違いないだろう。話を聞かないと進まないので俺は口を開いた。


「ああ、そうだ。こんなことがあったんだ復興には時間がかかる。その手伝いをするつもりだから少し遅れるというわけだ」


「ふむ、確かに言い分は通っているように見えるがお前は今まで何をしていたんだ?とても復興に手伝っているようには見えなかったが」


 痛いところをつくやつだ。ここ数日は家を出てない俺は全く復興に貢献していない。まあだからこそこれからやるのだが。


「だからこそだ。今までやってない分やらなきゃいけないだろ」


 このような言い合いが続き最終的には数日出発を遅らせるということだ。まあなぜ行かなきゃならんのだという問題は聞けなかったが、生活としてはそっちの方がいいだろうという判断だ。そもそもアンジュたちが攫われるのは可能性の話で警備がしっかりしていればそんなことないしそもそもそんな簡単に入り込めたら大問題である。あっちではうまい飯も久々に食えそうだし、何より風呂に入れるだろうどのくらいの大きさかはまだわからないが大浴場並みとまではいかないけども大人が一気に4人は入れるぐらいの広いだろうでデメリットとメリットを考えたらメリットの方が上なのだ。それに家族といってもせいぜい三男だろう。当主になるのは長男で予備として次男がいる。そう考えると長男と次男はどちらも大切となるためこんなところに送らないだろう。そもそも迎えに来てそれで盗賊来て死にましたでは本末転倒である。


 つまり俺は三男以下の地位だから領主館に行っても領主にならなくてデスマーチを回避できるのだ。誰があんなのやるか。それに貴族というのはあまり好きじゃない旅をできなくなるからな。せっかく異世界に来たのに世界一周的なのやらなくてどうするんだ。貴族のしかも当主だと旅に出れないからな。そう考えると今は貴族だけど大人になったら元貴族になる三男以下がちょうどいいのだ。


 まあそんなこんなでこれから数日間は村の復興を手伝うことにした。流石に今までやってなかったからね。人の倍は働かなくきゃな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る