3話 最悪の出来事の正体・続
─数分後─
「ぎゃあああああ!!!」
ようやく倒せた。体力だけはあるやつだった。早く戻らないと。
《空間転移》
移動距離分魔力を取るために量が多いが今は仕方ない。
転移した場所は自分の部屋だ。ここなら
《殺気感知》
この魔法は害意がある奴を見つけられる。ならばあの盗賊も見つけられるだろう。早く見つけて殺さなければ。
「いた!」
場所は…シルフィたちの家…?!馬鹿な…クソ。
俺はすぐに窓から飛び出した。窓から飛び出さないとシルフィたちはまだいいが母さんにバレるからな。まあもう無駄かもしれないが。やらないよりかはマシだ。シルフィたちはここにいたからおじさんたちがいるはずだ。シルフィたちに悲しい思いさせたくない。
《身体加速×2》
速く!もっと速く!もっともっと速く!俺は急いだ。今までで一番急いだかもしれない。それくらい俺は焦っていた。
シルフィたちの家に着くと間に合わなかったらしい。血の匂いがする。あいつは一度も攻撃を喰らってない。だとしたら…考えたくはないがおじさんたちの臭いだろう。いやまだだ…まだ息があるかもしれない。きっとまだ間に合う。
「おじさん!おばさん!」
「こいつっ!もう帰ってきやがった。クソもっと遅いはずなのにこれだと俺が逃げれねえじゃねえか。あいつ20分は持つとか嘘つきやがって」
おじさんたちは…もう…既に事切れていた。それは見ればわかることだった。身体中に無数の傷。さらにおじさんは心臓を貫通していた。
「クソが…」
「ひぃ!これは違うんだその…」
落ち着け俺、復讐は何も生まない。そんなことはわかっている。わかっているのに…!クソ…どうしても憎い。心の奥底から殺してしまえと囁いている。今の俺はまだ若干マシになった。ここで踏み止まらないと悪い道を突き進んでいつか俺の精神が壊れる。
落ち着くんだ俺…!クソクソクソ。心の奥底から囁いてくる…!悪魔の囁きが…聞こえてくる…!踏みとどまるんだ俺…!復習なんてしてもなんの意味もない。残るのはただ後悔のみなのに。そんなことはわかっているのに。
「やめてくれ…!どうか命だけは…」
声を聞くとイライラする…!もう喋るなよ…!今この状況で殺せば俺の何かのブレーキが壊れる…!戻れなくなる…!復讐者なんかには絶対になってはいけない…!そうゆうのは悲惨な結末を迎えると相場が決まっている…!踏みとどまるんだ俺…!
「あれ?今のうちに逃げれば助かるのでは…そうと決まれば少しの可能性に賭けて逃げるのが正解だ」
「逃すかよ」
冷たくヒヤリつくようなドスの聞いた声を俺は出す。自身でもびっくりするほど周りの空気は凍りついた。それくらい怒っていたのかもしれない。関わりの深い人が死んでしまったことで今まで以上に怒りが湧いてきた。
こいつらがここにきたのは領主の暗殺目的だったな。俺の父親らしいが俺はあんな父親なんかごめんだね。自分だけせっせと逃げやがって。結局盗賊はこいつを残して全滅。俺たちにとっても村の仲間が消えた。その元凶が父親らしい
対策もしないで逃げて、最悪の人物だ。父親じゃなかったら間違いなく関わらない。いや…貴族はこれが当たり前なのか。戦略結婚などは当たり前にやる人たち…いやそうゆう時代だからか。この時代はこれが普通だ。俺が前の世界の基準で考えてるのがおかしいのかもしれない。
そんなことは今はどうでもいいか。後で考えればいい。問題はこいつの処遇だ。拷問でもするか?俺としてはスプラッタは好きじゃないから遠慮したいが。いや
《
ほんとは×20にしたかったが足らなかった。意外と魔力が減っている。それにこの魔法は毎秒5消費するからそんなに多くは出せない。今の残りは…3000か。じゃあ1分だな。
「さて、お前らは誰の指示で来た?」
「ひぃ!い、言えない。言ったら殺される…」
「ここで答えなくても死ぬぞ?」
「くっ…」
これは
「おい!坊主どうなってやがる?」
その時だった。謎のおっさんが現れた。ゴツい体をしている。
「ああ、初めましてですね。ここに来たのははじめてですか?」
「そんなことはどうでもいい。どうなってるんだと聞いている」
「盗賊に襲われました。それだけですよ」
まあこの村は盗賊に襲われただけでも大事件だ。それに今この家にいる2人以外にも十何人も死んだ。
「それだけって…おいおい大変じゃないか。何か手伝えることはあるか?」
「そうですね…。なら死体の処理をお願いしますね」
死体の処理は早くしたほうがいいだろう。疫病が流行るかもしれないしな。これ以上の被害なんてごめんだ。
残ったこいつは…気絶だけさせとくか。俺は残った唯一の盗賊に手刀を首筋に当てて気絶させた。
「ああ、わかった。仲間にも手伝わせる」
「仲間ですか。何人ですか?」
「三人だ。1人は男でもう2人は女だ」
なるほど、男が2人いるなら足りるか?女性の方はご飯でも作ってもらおう。非力だと思うし。
「なら女性はご飯を作ってもらおうか」
「ん?!ああ、それは無理だ」
「ん?何故だ?」
「あいつらは料理ができないからな。料理はもう1人の男の方だ」
「そうか…」
そういう系かよ。まあ典型的だな。あり得る話だがそれは流石に想定してなかったな。なら女性が死体処理にするしかないだろう。死体とかは冒険者だから見慣れてるはずだ。
「じゃあお前はどうなんだ?料理はできるのか?」
「口調が変わったな…。まあいいか。俺は料理なんかできない。せいぜい手伝うぐらいだ」
料理は1人か。まあ村に料理が作れる人も残っているだろう。それに最初に見た感じは男性しか死んでなかったから料理は足りるか。問題はその家族だな。夫が死んだのならば悲しい思いもするだろう。
まあそんなことよりシルフィたちをどうするかだ。村の人よりもそっちを俺は優先する。両親が死んでしまったから。彼女たちは親族がいたらいいのだが、死んでいる可能性が高い。何人死んでいるのかはわからないが死んでいない可能性は低いだろう。
あるとしたら俺たちが引き取るのだが、俺たちは領主館に行かなければならないだろう。つまり村を離れるのだ。それにあいつがいるらしい。貴族は優しいとかの妄言がラノベとかであるのだが貴族は貴族で大変だ。派閥もあるだろうし何より政戦があるだろう。
そうなれば暗殺とか金目的とか、何より上級貴族なのが痛い。公爵や侯爵じゃなく伯爵なのが幸いだ。流石にそこまで高いと危険すぎる。プライドとかもあるだろうし俺にも兄や姉はいるだろう。そいつらにいじめられないとも限らない。
だが結局は本人の意思に任せる。一度は聞いたが状況が変わった。もう一度聞いたほうがいいだろう。今考えても仕方ないな。死体処理は冒険者らしいこの人に任せるとしよう。名前は…まだ聞いてないな。
「お前は名前なんて言うんだ?」
「俺か?アイザックだ。残りはアデン、ミリィ、アリアだ。今はみんな別れて状況を見てる。たまたまここに来てな。この先のところに用があったんだがこの様子じゃ今日はいけないな」
「そうだったのか。ありがとな。あとは任せてもいいか?」
「いいが…お前は何するんだ?」
「いろいろやることがあってな。すまんが頼む」
「ああ、任せてけ」
おそらくこいつなら大丈夫だろう。シルフィたちのこともあるし何よりみんな心配してるだろうからな。それに…今回は結構な経験をした。初めての人殺しもしたし初めて使った魔法がいくつかある。イメージ通りの保証もないのに…やはり少し落ち着いたほうがいいな。この後も大変そうだ。
さてと、家に…帰るとしようか。
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