2話 最悪の出来事の正体

─村人sied─


「あれはなんだ?」

「あれは…おい!盗賊だ!盗賊が出たぞ!」

「狙いは!」

「わからん!」


 なぜ盗賊が来る。今まで一度も来なかったのに、それくらい貧しい村だということは知られている。それなのになぜ!


「もしかして…」

「そのもしかしてかもしれん。多分盗賊の狙いは領主様だ!普段ガードが硬い領主様がここに来るために護衛を少なくしたときを狙ったんだ!」



 領主様は人柄がいいからみんなに慕われる。それをよく思わない人が暗殺を目論んで盗賊に見せかけた暗殺者を送り込んでくる。しかし今まで一度も成功していないから護衛が少ない時を狙ったに違いない。


「すぐにみんなに連絡しろ!」

「おう!」


 数は…ちっ!馬車で移動してやがる。中に何人いるのかわからねえ。普通、盗賊は馬に乗ってやってくるからやはり暗殺者の可能性が高い。捕まえても自殺するから黒幕も誰かわからねえからタチが悪い。防いだとしても口を割らない上に隙を見て自殺しようとするから結局全員死んでしまう。開放したところをついていっても転移結晶使って逃げるから追えねえ。


 おそらく上位貴族の誰かだがそれ以外の証拠がないので誰かわからねえままだ。


「数は!」

「わからん!連中馬車使ってやがる!」

「馬車の数は!」

「1…2…3…4」

「数は!」

「4台だ!」

「何人馬車に見える!」

「6人馬車だ!結構でかい!」

「なら24人ぐらいか?」

「食料も乗ってるだろうからもっと少ねえぞ」


 それから少しすると仲間が現れた。まあ数人だがいないよりはマシだろう。


「行けると思うか?」

「いけねえと思うから領主様だけでも逃す準備しておけ」

「ああ、わかっている」

「弓は…あまり意味がねえな」

「やらないよりはマシだ」

「それもそうだな」


 連中は馬車を使っているからどこにいるのかがさっぱりわからねえ。普通の盗賊だと盾で防ぐってのに。

 まずは狩人の先制攻撃だ。こっちは見張り台に乗っているから相手よりも遠くから撃てる。


「そろそろか?」

「いやまだだ」

「そろそろ行かないとまずいんじゃないのか?」

「いや大丈夫だ。ん?!今だ!」


 1人顔を出していたな。おかげで少しだけだが中が見えた。多少場所は変わっているだろうが大体同じ場所だ。


「二発目用意」

「「「おう!」」」


 一回目で倒せたのは見えるだけで1人のみ。他はかすり傷だろう。死体なんかは邪魔だからすぐに落とすはずだ。奴らには感情というものがねえ。1人だけなら残りはまだまだいる。


「撃て!」


 シュンっと音を立てて矢は放射線状にあがってあたる。しかし今回は倒せたのはなし。これが普通だ。さっきのは運が良かったんだろう。おそらくこれで最後だ。


「近接戦の用意をしろ」


 かくして負けるとわかっている戦闘が始まるのだった。


















─主人公sied─


 ん?なんだか騒がしいな。なにが起こっているんだ?


『盗賊だと?!そうか…俺の命か…』

『逃げましょう!』

『しかし…俺には…ここは逃げるしかないか…。すぐに支度をしろ。俺もすぐに行く』

『はっ!』


 何かを惜しむような声がして支度し始めている音がした。それにしても盗賊だと?俺のお父さんだという人の命を狙っているのか。思ったよりも大変なことが起きているようだ。


「盗賊が来てるらしいな」

「え?!一大事じゃん!」

「ああ、俺も行く」

「私も行く!」

「ダメだ。俺1人で行く。お前たちはここで待ってろ」

「そうですよね。死なないでください」

「心配しなくても俺は死なねえよ」

「それでも…です」

「行かなきゃならねえからな」

「いってらっしゃい…」


 このときこんな選択をしなければこんなことにはならなかったのかもしれない。あいつらに辛い思いをさせなかったのかもしれない。真実は神のみぞ知るだ。
















─村の門の前─


 門の前に着くとなかなかひどいことになっていた。こんなに小さな村だからみんな知り合いだ。だから余計酷く見える。


「おい!子供がこんなところにくるんじゃない!」

「もう死なせないためにも俺が出なければ…」

「おい!聞いているのか!」


 このときの俺は知り合いが殺されていて気が動転していたのかもしれない。


轟氷槍グレイトアイスクルランス


 しかし不幸中の幸いで敵にしか当たっていなかった。味方には当たってもかすり傷程度で問題がなかった。敵には頭に当たっていたり心臓に当たっていたりもした。


「なんだこのガキ!こんなの聞いてないぞ!なんでこんなところに水の魔術師がいるんだよ!」

「クッソ!早く行くぞ!さっさと終わらせねえと俺らが死んじまう!」


 逃すかよ。クソが!


獄水城壁ヘルウォーターランパート×4》


 これでどうだ!ダメだ。何人か漏れてやがる。


「これは!おいおい。あいつの魔力量どうなってんだ!上級魔法5回も使ってやがる」

「それどころじゃねえ!あいつ複数起動持ってやがる!」


 時空操作を発動!


[了、時空操作を発動します]


 時空ごと飛ばしてやる!


「これは…無茶苦茶なことしやがる」

「なにするんだこれは!」

「あいつ、俺らを時空ごと消すつもりだぞ」

「なん…だと…?」

「止めなければ!」


 そう聞こえると複数人が斬りかかってきた。遠距離戦は無理だと悟ったのだろう。


 しかし俺はノータイムで魔法を放てる。丸腰でも大丈夫だ。


火矢ファイヤーアロー×10》


 牽制用だから少し多めに放った。そのあとはこれでトドメだ。


水龍ウォータードラゴン×5》


 龍は日本の方の龍だ。某龍玉アニメのあいつみたいなものだ。これには殺傷能力は低いから窒息死に向いている。苦しみながら死ね!


「こいつ!上級魔法を詠唱無しで放ってきやがる!魔力量もやっぱりおかしいぞ!」

「詠唱は!」

「もうそろそろ終わりそうだ!」

「クッソ!早くしろ!」

「わかってる!」


 早く動け!クソ!やはり5体も動かすとなると難しいし、早く動けねえ。聖級の水龍乱舞ウォータードラゴンフェスティバルなら早く動けるし簡単に操作できるのに。


《████ █████████ █████炎龍乱舞ファイアドラゴンフェスティバル


 相手は聖級を使ってきた。これは相殺されるな。捨てるか。大賢者、自動追尾モードに変更しろ


[了、自動追尾モードに変更します]


 数は相手の方が下だが威力は相手の方が上だ。だから相殺されるはずだ。とはいえできない場合もあるな。


『グアァァ!!!』

「おい!大丈夫か!」

「大丈夫じゃねえ!とうとう発動しやがった!」


 ようやく時空操作の影響が出始めたようだ。強力なのは良いが発動まで時間がかかる。そこが傷だがうまくいけば罠にもなる。初見殺しは一度使ったら同じ相手には出来ないし見たものにも効かないくせに一度に1人しか持っていけない。今一番強いのは時空操作なのだ。これなら時間はかかるものの発動すると止められず一気に何十二もの相手を倒せる。


 それよりも敵の魔法の対処だ。


対魔法障壁マジックバリア×100》


 これで大丈夫だろう。


「なんだよこいつ。こんなの作りやがって」

「おいあんなので止めれるのか?」


 そのとき俺の出した障壁に敵の魔法が当たった。割れていったが43枚割ったところで消滅した。


「やはりか…逃げるぞ!」

「おう!」

『おい!俺たちは!』

「知らねえよ!自分たちのことで精一杯だ!」

『お前ら!!クッソが!!地獄に落ちやがれ!』

「ふん!俺たちは逃げるぞ!」

『依頼はどうする!』

「忘れてた!クッソ逃げれねえじゃねえか」

『早くこれをなんとかしろ!』

「無理だよ!そんな時間あるか!」


 行かせるかよ。これでもくらいやがれ。


《原子変換×5》


 地面の土から鉄剣を5本作る。そのあとは


《無重力×5》


 これで飛ばす!


「おいおい出鱈目デタラメすぎる!どうなってんだあいつ!」

「こんなの命がいくらあってもたらねえ!さっさと行くぞ!」

「当たり前だ!」


 逃げられる!さらに追加してやる


《原子変換×5》

《無重力×5》


 クッソ2人に逃げられた。追わないと!別れやがった。1人は村の中もう1人は森の方だ。どっちも逃すのはいけない。森に入った方を追うぞ。


ーークッソ2人に逃げられた。追わないと!別れやがった。1人は村の中もう1人は森の方だ。どっちも逃すのはいけない。森に入った方を追うぞ。ーー

 この最後の場面ですが普通に考えれば逃すのはいけないけど、これ以上の犠牲者を出す方がいけないですよね。このとき主人公は怒りで思考力が下方面にカンスト(−100とかまでいってそう(小並感))しているのでこのような考えに至ってます。以上補足説明でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る