〜第弐章 少年期編〜

1話 名前の謎の正体

─3年後─


 俺は10歳になった。


 あれから特に変わったことはない。強いて言えばみんなの魔法が上級になったことだ。剣術はやってないけど。魔法ならそこら辺の魔法使いに負けることはないと思う。この異常な成長スピードは多分幼いときからやってだからだと思う。


 幼いころからやると何にでも得意になるからな。ピアノとかもそうだ。そんな感じだろう。


 そんなことを考えていたときだった。村の門の周辺が騒がしくなったのだ。俺は今は広場にいつものメンバー ーーアンジュ、シルフィ、そしてアリスーー といる。門の周辺はここからだと近いのだ。


 聞こえてくる声は…領主…様…?領主なんかがなんのようだろう。生まれてこの方、領主なんか見たこともない。確か…エルドールだったか?


「領主様?エドワード・ルイス・ヒューイットだったよね?」


 ああ、そうだエルドールじゃなかったな。そっちは公爵家の方だったな。


 それはいいか。なぜここに来たんだ?納税の関係なら役人だったから領主じゃないよな?どうゆうことだ?よくわからないが関わらない方がいいだろう。


「なんで来てるんだろうね?」

「よくわからんが関わらない方が良さそうだぞ。領主がくるなんて余程のことがあったに違いない。ここでは何も聞いてないから、ここを中継地として違うところに行くだろうし」

「とりあえず家に帰る?」

「そうするか。お前たちも家に帰るか?」

「そうだね…じゃあお邪魔させてもらおうかな」

「こっちくるのかよ」

「何よ?ダメ?」

「まあ別にいいぞ」


 家に帰るとまずは自分の部屋に行くことにした。しかしそこでお母さんから止められた。


「どこ行くの?」

「どこって自分の部屋だけど」

「人に会うから準備しておいてね」

「誰に会うの?」

「会えば分かるわ」


 よくわからんが従っておこう。損はしないだろうし。


「シルフィたちは返したほうがいい?」

「どっちでもいいわよ」


 つまり誰かにバレてもいいということか?よくわからん。


「まあとりあえず着替えとくよ」

「そうしといて、アンジュもね」

「はーい」

「お前たちはどうする?」

「せっかくだし一緒にいるよ」

「私も一緒にいる!」


 シルフィたちは一緒にいるようだ。まあ一番いい服でいいかな。まあ麻布のやつしかないけど。


「これでいいかな」



〜着替え中〜



「着替えてきたよ」


 ん?んんん?なんで貴族っぽい格好したおっさんがいるんだ?領主か?いや領主がいるとしてもなぜ?


「お母さんどうゆうこと?」

「アンジュか来てからね」


 俺たち2人に関わることだろうか?流石に領主がお父さんとかはないだろうし養子に行くのだろうか?


「着替えてきたよ」

「来たわね。じゃあ説明するわ」


 アンジュが着替え終わってくるとお母さんが説明し始めた。それによると領主が俺たちのお父さんだということだった。正直わけわからん。なら何故ここにいるかというと貴族の暮らしというのはどうしても傲慢になるし庶民の意見を聞きたかったらしい。


 実際俺には兄が2人いるらしいのだがどちらも傲慢だし庶民には強くあたるらしい。長男はまだ領地を継ぐ自覚があるのか大人しいほうだが次男がわがままらしい。しかしそれもしかたないかも知れない。


 次男はまだ12歳だし、長男は13歳。どちらも成人ーー15歳から成人ーーしていないのだ。まあこの世界の基準だと俺は成人しているからしっかりしないといけないのだが。まあまだ10歳だし(肉体的には)後の5年で成長すればいい。


 今だと精神年齢は18歳だな。前の世界では15歳の高校一年生まで生きていたからな。


 それはわかったが、そうだとしたら俺は領主館に行かなければならないのか?ここの生活は気に入ってるし離れたくないのだが…。まあ強いていうなら食事をなんとかしてほしい。日本人からしたらここの食事はダメなのだ。何より米がない。米は日本人の魂なのだ。食料自給率も100%近いしな。


 まあそんなことを言っても仕方ない。この時代だと前の世界ほど品種改良されてないからあんまり上手くなさそうなんだよな。それに手間もかかるから高そう。庶民だと祭りのときだけなんじゃないか?


 というか俺はシルフィたちと別れるのか?俺は貴族になるから学校に行けるがシルフィたちは行けないから再会もできない。そうなるぐらいなら俺はここにいるぞ。あいつらと一緒にいると楽しいしな。


「事情はなんとなくわかりました。しかし自分の家族だけ領主館で過ごすんですか?」


 一応丁寧に言ってみた。お父さんだとしても貴族なのだからこうゆう言葉遣いをしないといけないのは趣味のラノベーー知ってるとは思いますが補足説明:ラノベはライトノベルの略で一般小説とは実際、ほとんど区切りがないと考えて良い。オタク発の文化だから蔑まれているだけなのだ。※個人的感想ですーーで知っている。


 まあラノベがなかったら『貴族?なんか偉そうな人?』ぐらいだから認識の差異のせいでことになっていたかも知れない。そこら辺はラノベを読んでいることで得をしたな。まあ狙ってやれるわけなどできないが。


 そんなことはどうでもいい。本題はシルフィたちと一緒にいけるかだ。もしも連れて行けてるのが2人とかなら諦めるしかない。10歳の少女2人に両親と離れさせるのは酷だと思う。


「連れて行けるのは2人までだ。勿論アイリーンとボラン、そしてアンジュは連れて行く」

「そうですか…」


 できないのなら仕方がない。諦めるか…あれ?別にいいのか。シルフィたちの部屋に迷宮ダンジョンの出入り口を作ればいいだろう。そして領主館に用意してあるだろう自分の家にもつければシルフィたちも気軽にこっちに来れる。


 問題は二つの出入り口をつけれるのかということだ。距離に関しては迷宮ダンジョンは異次元にできるからそこは問題ないだろう。この一つの問題さえクリアできればいいのだがよくよく考えたらできるわけがない。ハイファンタジーみたいな世界だからこそそうゆうところがわかるのだ。迷宮ダンジョンの出入り口は一つしかない。俺はそうゆう迷宮ダンジョンしかみていない。


 やはり次会えるのは遠い未来になりそうだ。


「それってシルフィお姉ちゃんたちは無理なの?」

「私たちはいいわよ…」


 両親と離れるか、俺たちと離れるか。その選択を迫るのはあまりに酷だろう。やはりここは残ってもらったほうがいい。


「少し自分たちだけで話させてください」

「それは構わないよ」

「シルフィ、アリスおいで」


 俺は自分の部屋で話すことにした。


「「うん」」

「私も行く!」

「いいよおいで」


 しかし自分の意見を押し付けるのも良くない。話を聞いて判断をしよう。


「お前たちはどうするんだ?」

「……」

「お姉ちゃんたちと離れるの?」

「私はわからないわ。残ったほうがいいのか、それとも行ったほうがいいのか」

「私もわからない」

「俺としては残ったほうがいいと思う」

「「「?!!」」」


 俺はまず正直に自分の意見を告げることにした。ここで黙っていてもなにも起きないからだ。そうなったら時間の無駄だ。


「お兄…ちゃん?」

「そうしたほうが俺たちに気を使うこともない。だってそうだろう?領主館だと俺たち相手に敬語をしないといけない。俺たちは家族のように育ったんだ。今更それを要求されても無理な話だ」


 俺は建前を言うことにした。建前といってもそれも理由の一部だ。前の世界では両親が早いうちに死んだ。中学生最後の年の二月の最初の週のことだ。俺は親孝行というものをしていない。だからこそ彼女たちには親孝行をさせてあげたい。こんな思いは誰にもしてほしくない。


 しかし3月に入るまでになんとか立て直した。受験があったし何よりみお京介きょうすけ、そして妹の沙耶さやたちのおかげだ。京介は小学校からの友達で親友とも呼べる男だ。サッカーがうまく。高校もサッカーの強豪校に入った。まあその強豪校が俺のいた高校だったのだが。


 そういった友達と唯一の肉親の妹からの助けのおかげでなんとか立て直した。いや…そうせざるを得なかった。高校に入ってからはまだ立て直ってなかったのか一気に気分が悪くなり休むこともしばしばあった。7月にはまた立て直したのだが。


 こういったこともあって俺には両親がみんなと比べてより一層特別な存在に感じるのだ。罪滅ぼしみたいなもので今の両親に親孝行できたらと思っている。


「わかったよ、そうする…」

「私もそうするわ…」


 そう決めたので早速行くことにした。こうゆうのは決心が鈍らないうちに言ったほうがいい。


「アンジュは誰か連れて行きたい人いる?」

「私は…やっぱりお姉ちゃんと一緒がいい…」

「そう言われてもな」


 そんなときだった。


 悪夢が始まったのは。それは一つの悪いの出来事がもたらしただった

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