閑話 澪その後
今日は幼馴染である雄也との夏祭りデートである。中学生の頃に気にし始めたがなかなか言う機会がなく。
ようやく今年の春に言えたのだ。何気に彼女にとっては初恋である。
だが部活などもありなかなか時間が取れない中、夏祭りが初デートの機会となった。
そんなことを考えてるうちに集合時刻まで残り15分を切っている。ここから集合場所までは10分あるため。早く浴衣に着替えないと。
集合場所に着くともう裕也は来ていた。
「ごめん待った?」
「今来たばかりだよ」
「ならよかった」
「いこっか」
「うん」
その瞬間だった。何か騒がしくなったのだ。不思議に思いその方向を見てみるとあれは刃物を持った男が暴れてるように見える。
早く逃げなきゃ、そう思い別の方へ向いたそのとき
「危ない!!」
不意に雄也の声がしたのとほぼ同時に誰かに押された。
振り返ると雄也が腹部が血だらけで倒れていた。
あの男が何か言っているようだが私には届かなかった。
「良かった。無事みたいだね…」
「よくないわよ!大丈夫なの?!」
「全然大丈夫じゃない。死ぬかも」
「えっ。嘘だよね」
そんなわけない。きっと大丈夫だよね。気づけば顔から涙が出ていた。
「うっ…熱い」
「死んじゃだめっ!」
まだ死なないでよ!嘘だよそうだよきっとドッキリかなんかだよね。そう考えていると
「げんきでな…」
「雄也、ねえ返事してよ。ねえってば!嘘でしょ…そんな…うあああああああ!!!!」
現実はあまりに残酷だ。私の初恋の相手であり幼馴染はあまりに呆気なく死んでしまった。だけど私を庇ってくれたことに感謝している。
そんな思いを背負いながら生きていくのか。とてもとても辛かった。警察の人が来たけど両親が対応してくれた。
それからのことはほぼ覚えていない。部屋に入ってベットでずっと泣いてたと思う。
もう一度会えたならそんな。叶うことのないはずの思いをしながら。
後日は学校でも知らせがあった。クラスのほぼ全員が泣いていた。あいつはモテていたのだ。本人は自覚がなかったようだけど。
あいつの机には花瓶があった。みんながみんな花を入れるから机は花でいっぱいになっていた。引き摺らずに行こうなんて軽々しくなるわけでもなくて、あいつの部屋でいつも寝ている。
あいつには妹がいた。妹も泣いていた。だが、泣いて帰ってくるものではない。もう、どうしようにもならなかったのだ。
あの時私を庇ったから…!だが嘆いても何も起こるはずがなく。
そんなときある漫画が目に入った。転生……か。あいつはよくラノベを読んでいた。あいつは異世界転生とかなってみたいとか言ってたな。もし…もし…!あいつが異世界に行っていたのなら。私がそこに行けたのなら。あいつに謝ろう。
私を庇ったせいで死んでしまったのだから。あいつなら笑って許してくれるのだろうか。
日々後悔しても何も起こらない。失われたものはもう2度と戻らないのだから
そんな日々を過ごすことになるのだった…。
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