悪魔の罪







 アディショナルを守って数日が経過した。


 ロイヤルからの話をジョーカーから伝言でもう大丈夫だと知らせは受けた。


 犯罪者の烙印を押される覚悟はあったし現に犯罪者マークは点滅をしていた。


 だが今日の朝起きてメニューを確認すると綺麗サッパリ消えていた。


 通報が取り消されたということだろうか。


 クラン戦も開放されたし久しぶりにクラン戦のホーム画面を何気なく開く。


【クラン戦】【他国戦】【アディショナル】


 ……アディショナルってなんだ?


 押してみると【大変混み合っております。時間を置いて再度接続してください】と表示が出た。


 このReLIFEが始まってすぐの頃を思い出す文面だ。


 運営クランが捌ききれない人の数の戦闘を行った時にこの文面が浮かび上がる。


 アリサさんも大変そうだなと思いながらヘルプで【アディショナル】の説明を見る。


 魔物の国? との対戦が出来る機能らしい。


 期間限定で設置されたボタンで魔物の国がクランの戦闘に馴染めば他国戦に組み込まれていく仕様になっているらしい。


 こんなの魔物の国が有利だろ。


 クールタイムが存在しないレアスキルのオンパレードだぞ。


 最上位クランの戦いは見てみたいがロイヤルは次元が違うとすら感じる。


 未開の地で俺はエンチャントを四重に重ねた。


 それはそうしなければ未開の地の魔物達を安定して狩れなかったからだ。


 スタンピードの真似事をしたツケで俺は恨まれているからか知能が高い魔物の襲撃も何度もあった。


 それに対応するようにエンチャントを重ねた結果なのだ。


 前もって準備出来るフィールドとは違い、クラン戦はカウトダウンから始まり両者同時に戦闘を開始できる。


 明らかにプレイヤー側は能力でスタート時点から差がついている。


 死に戻りが出来るのなら魔物側のプレイヤースキルも跳ね上がるだろうし。


 昨日は随分と遅くまでクラン戦をやっていたアカネとサクヤは今だに寝ている。


 お昼になるがゲームの中ではゆっくりと寝て欲しい。


 俺は起こさずに宿を出てアディショナルに向かう。


 始まりの丘に差し掛かると変なオブジェクトが設置されていた。


 地面には魔方陣が描かれ四方に光沢がある切り揃えられた岩が並んでいる。


 遠目から見ているとプレイヤー達が中に入ったり出たりを繰り返していた。


「凄かったな、アディショナル!」


「あぁ、エルフのカフェなんてロマンあるよな」


 プレイヤー達の会話に耳を傾けるとあの魔方陣はアディショナルに続いているようだ。


 俺もその中に入ると一瞬でアディショナルの国の中心部に転移できた。


 感心しながら辺りを見ると数日前まで火の海だった国が嘘のように繁栄している。


 犯罪者になり宿に籠っていた俺は最新に乗り遅れているみたいだ。


 城をバックにスクリーンが展開されていてそこにはピックアップされた魔物達の激しい戦いが繰り広げられていた。


 魔物の被害もゼロではないのにも関わらずにこれだけのプレイヤーを受け入れるとなると反感も大きい気がしたが魔物達の顔を見てその不安はすぐに消え去る。


 笑顔で溢れプレイヤーに対しても敵意の感情はない。


 ロイヤルが短い時間にこれを成し遂げだとなれば魔物の国を一から作った手腕も頷ける。


 本当にプレイヤーの街並みのようだ。


 周りを見れば遠目で俺を見ながら騒いでる魔物達。


 手を振って「悪魔だ!」と叫んでいる。


 俺はどこに行っても変なアダ名を付けられていた。


 俺に対しても敵意が無いとはロイヤルは何をやったのかが気になる所だ。


 ベンチに座りスクリーンを眺める。


 どの国に居ても俺はこの時間は好きだ。


 やはり魔物の戦闘は見たことも無いスキルが飛び交い圧倒される。


 クールタイムが無いことにより爽快感が違うなと感じるのはピックアップされた魔物達のどれもが上級クランに相当する実力があるからなのか。


 今まで命の取り合いだけをやってきただろう魔物達は初めてゲームのような戦闘に直面している。


 中には既にトリッキーな技を使う魔物までいる。


 変わり始めてるんだなと感じた。


 スクリーンの雰囲気が変わり映画のようなワンシーン。


 ザッザッと敵を葬りながらエンチャントを重ね纏う色が変わっていく俺の姿が映し出された。


 何あれ?


 建物の上にスっと降り立つと刀を持った俺が呟く。



『ここからは悪魔の時間だ』



 ……。


 その呟きと共に「キャー」っと周りで歓声が響く。


 俺は顔を真っ赤にしながら地面を見つめた。


 黒歴史でしかない。


「ここ座ってもいい?」


「あ、あぁ」


 チラッと視線を誘導させると綺麗なお姉さんだ。


 スタイルも良くサラサラの長い髪から突き出た長い耳が特徴的で魔物のエルフだと分かる。


 これはゲームの世界の住人だとしても惚れる奴はいるな。


「この前は私達を救ってくれてありがとう」 


「俺はただ小さなエルフの女の子と約束をしただけだ。同じ種族なんだから見つけるのも簡単だろ? 礼ならそいつに言ってやれ」


「所で悪魔さんにお礼をしなくちゃね」


 コイツ人の話を聞かないタイプなのか?



『大人の姿になって出直して来たんだけどダメかしら?』



 え?


「私はサリナ。貴方が大人じゃないとダメだと言うからロイヤル様に力を分けてもらったのよ」


 ジョーカーも綺麗な女性だが子供のように無邪気だ。


 魔物には成長を早める手段があるのかもしれない。


「あの時のは冗談だ。もう気にすんな」


「そう。それじゃ行きましょ」


 ぐっと手を引いて俺をベンチから引き釣り下ろすサリナ。


 魔物の力つよ!


 グイグイと何処かに引っ張られる。


「えっ? 礼はいらないって言ったよね」


「子供の私に冗談を言った貴方の罪です。償ってください」



 ギリギリと僅かに体力ゲージが削れていく程の力で腕を掴まれながら俺はもう拒む事を諦めた。






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