浅い守り
門を潜りプレイヤー達の間をすり抜けていく。
キキンと聞こえる詠唱キャンセルの音を置き去りにジョーカーを見つけ視界に捉えた魔法を斬り落とす。
『コーヒー牛乳飲みたかったな』
『いくらでも飲ませてやる』
ジョーカーはこのプレイヤー達とどれだけの戦いを繰り広げていたのだろう。
ジョーカーの体には氷の矢が痛々しく刺さり、他にも魔法によるダメージを受けている。
もう少し遅ければ最悪の事態になっていた。
ジョーカーは俺を国に引き付けて危険から遠ざけようとしてたのかもしれない。
俺の登場に様々なプレイヤー達が驚きの声を上げている。
ここに居るプレイヤーはミースティアではなく他の国のプレイヤー達だろう。
「ルールブレイカー」そんな声が耳に入る。
他国戦で俺のアダ名も有名になった物だ。
魔物のダメージはプレイヤーとは違いアイテムで簡単に回復する事は出来ない。
それだけ魔物は個の力を備えてる。
ボロボロなジョーカーには悪いが少し無理をしてもらわないといけない。
「ジョーカーお前はこのプレイヤー達の事をロイヤルに伝えてこい」
「シンは?」
「俺はコイツらを抑える」
ジョーカーを追いつめた事によりプレイヤーが続々と門から出現する。
ここに居る全員に俺は条件付きの決闘申請を申し込む。
【俺の決闘を受けない者には南側エリアを通る事を禁じる】
これで安心は出来ない俺が負ければ即アディショナルへ攻撃を仕掛けに行くだろう。
俺がヒカリさんに流した未開の地の攻略情報を元にやって来ているならルートは様々だが詳しく説明したのは俺が良く行くエリアの樹海周辺。
樹海、海底、天空、洞窟。
これらは四方に展開されている門に通じているが樹海からは俺の目の前の門。南側のエリアと繋がっている。
このエリアはロイヤルから俺に所有権が移ってありこの場での権限は俺にある。
『雑魚共! お前らに未開の地はまだ早いさっさと失せろ』
ピコンピコンと煩い通知。
連続して承認の文字が浮かんでいた。
拒否してくれれば強制送還も出来るがそんなに上手くはなってくれないらしい。
何万人このエリアに居るのか? 見渡す程のプレイヤー達。
魔法のエフェクトが飛び交い俺に向かう。
全部避けるなんて芸当は無理だ。
ソロで勝てるなんて思ってもいない。
時間を稼ぐ事しか俺には出来ない。
雨のように降り注ぐ魔法を避ける。
やはり避けきる事は不可能でガガガと音を立て体力ゲージが削られていく。
俺が生きてる限りコイツらは城へ攻めていくことは出来ない。
そこを利用する。
「おい魔物、お前らの出番だ」
「グガアォォォオオオ」
雄叫びと共に続々と魔物達が出現していく。
俺がやった訳ではないが【キング】【クイーン】【ジャック】の名を冠する魔物達。
蛇やトカゲ、龍やオークなんてのも居る。
野良の魔物だが未開の地に出現する魔物でスタンピードのBOSSとして登場するから見慣れてるプレイヤーも多いだろう。
いつもは狩ってる魔物だがタイミングが良かった。
俺はその場を逃げる。
この人数差があればいつまで持つかは分からないがクリティカルさえなければ未開の地の魔物達が早々やられることは無い。
ハァハァと息が切れる。
どれだけ走り回ったのか。
樹海エリアから繋がる事もあって南側のエリアは樹海と似た作りになっている。
木の影に隠れて息を殺す。
「おい、ルールブレイカーは見つかったか!」
「こっちには居ない」
賢いプレイヤーも居るのか俺を探す部隊と魔物を殲滅していく部隊に別れてこの俺が仕掛けた足止め作戦を攻略しようとしている。
何万人の数のプレイヤーが居てそれに気づかない方がおかしい。
それにしてはジョーカーの疲労が気になった。
今思えばジョーカーはこの未開の地の野良の魔物よりも体力がありそこそこの魔法なら弾き返す程の力はあるはずだ。
ジョーカーは確か分身体からのダメージも受け継ぐらしいのだがジョーカーからはそのデメリットがあっても気にならない程に便利だと聞かされていた。
俺を引き付けた分身体とは他に何体を作っていたんだ?
もしかしたらプレイヤー達は南側の門だけを潜って来た訳じゃないのか?
変な汗が俺の頬に流れる。
そう俺が見たのは何万人のプレイヤー達。
あまりにも少すぎた。
ドゴンと遠くの方で音が鳴り響く。
魔物がプレイヤー達を相手にしている反対方向。
国がある所だ。
嫌な予感は全身を駆け巡り城をめざして走る。
近づく程に分かる。
国に向かって至る所から魔法の粒子が飛んでいて火の海が支配し建物は崩壊を繰り返していた。
この光景を目にして思う事があるとするならば。
攻略情報があまりない他の門からの侵入は無いと決めつけ。
人間を。
プレイヤーを。
舐めていた俺の考えは浅すぎた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます