憧れと承認
ロイヤルが会議室から出て行き。
ポツンと残されたヒカリとネリア。
「ネリアさんこの事態どうするのですか?」
「全部の国に召喚したジョーカーには分身体が含まれているのは分かってますがそこから本体を探すとなると厄介です」
「何処かの誰かさんが起こしたスタンピードで他の国とはこの通り連絡手段がありません」
ヒカリは両手を広げて二人しか居ないことをアピールする。
国の名も冠して無い国達ではマスター同士の会話も意味を為さない。
「まさかジョーカーの上がいるなんて私も初めて知ったのよ!」
「ジョーカーが起こすスタンピードは国の消滅。その上ともなればプレイヤーの抹消すらやってのけるかも知れませんね」
「プレイヤーの抹消ってピント来ないのよね。ただゲームが出来なくなるだけでしょ?」
ネリアはあっけらかんと手をヒラヒラと振って関係ないと言う。
「それはそうですが。まぁReLIFEを失えば休日を延長する手段も無くなりますしこの世界無しでは生きられない人だっています」
「確かに」
同じ立場になった時を考えてネリアの顔も青ざめていく。
「貴女がジョーカーを差し向けて今ここに居ない国の人達は生活の基盤を無くしてる人だっているかもしれないですね」
「なによ! 私は悪くないでしょ」
バンっと机を叩き付けるネリア。
「貴女は悪くありません。何も……」
シーンと静まり返った会議室でヒカリは口を開く。
「この状況を打開できるプレイヤーを私は一人知っていますが」
「何処にいるかも分からないジョーカーの本体を見つけ出して未開の地に帰す方法があるの?」
「はい」
ヒカリはスタンピードの光景を思い出しながら頷く。
「ただし条件があります」
「条件?」
「他の国の復興に協力してください」
「嫌よ! せっかく報酬で他の国を蹴落としたのになんで私の国が……」
「それなら一緒にロイヤルという魔物からの処刑を待ちますか?」
ウッとネリアはヒカリの脅しに押し黙る。
「分かったわよ」
ネリアはヒカリの提案を聞き入れた。
「と、言うことです」
「えっ? 何? その為だけに俺をここに呼んだの?」
「はい。ジョーカーと仲が良さそうじゃなかったですか」
レアスキルを貰った匿名のメッセージは記憶に新しいがそれと同じく匿名でメッセージが俺に届いた。
【ヒカリです。緊急事態ですホームに来てください】
俺はすぐにメッセージと共に送られた転送札のアイテムを使いミースティアのホームに転移した。
レアスキルを送ったのはヒカリさんかと思ってたら当たりだったと言うことだろう。
ジョーカーを探してさっさと連れ帰って欲しいというヒカリさんのお願い、レアスキルをもう貰った手前断る事は出来ない。
「ほっとけば勝手に帰ってくれますよ」
「ホントか!」
ヒカリさんは安心したように声を出した。
「俺はジョーカーというよりロイヤルって奴の方が心配ですけどね」
「ルールブレイカーはロイヤルまで知ってるのか!」
えっ? 未開の地行ってる国があるからロイヤルは認知してる物かと思ってた。
「アイツ怒らせるとめちゃくちゃ怖いんですよ。俺専用の狩場を作って貰うまでアイツとは何度剣を合わせたか分かりません」
俺が未開の地で魔物狩りに勤しんでた時に国を荒らす者として何度も襲われた。
あの時は毎回決着がつかなかったなと思い出す。
俺が何度も足を運ぶので最終的にはロイヤルが折れて南側の魔物なら狩ってもいいとお許しを貰ったのだ。
「本当にルールブレイカーは規格外だな」
はぁっとヒカリさんが溜め息を吐く。
「話が終わりなら帰りますけど」
「これは国の事じゃなくて個人的な事なのだが良いだろうか」
「良いですよ」
クスッと笑うヒカリさん。
「即答だな。ジョーカーの件が終わったら私とクラン戦で1対1の決闘をしてくれないか?」
「良いですが理由を聞いても?」
ヒカリさんみたいな最上位クランのマスターが中級クランに決闘なんてどういうイジメか分からない。
「ミリアには勝ったんだろ? 君の強さには憧れている。それを肌で感じてみたいと思うのは1人のプレイヤーとして当然だと思うけどね」
ヒカリさんは煽てるのが上手い。
「もう俺レアスキル使ったんで渡せる物とか無いですよ」
褒めたって俺は何も持ってない!
「いや、君と戦いたいプレイヤーはこの国に留まらず沢山いるよ。私の誘い受けてくれるんだね」
「断る理由がないですし」
「そうか良かった」
ヒカリさんに帰りますと告げてホームを出る。
ヒカリさんに心配無い言ったが過保護なロイヤルが動いていた事もあり何も無いとは思うが念の為にと俺はジョーカーを探しに向かった。
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