笑顔の脅迫
遠目から俺に向けて大声で何かを叫んでいたプレイヤー達。
声を出し尽くしたのかスタンピードロストを終えて何万と後ろに居たプレイヤー達が解散していく。
「もうそろそろ離れてくれる? なんで帰んないの?」
「やっとシンに会えたのに私帰りたくない!」
ヒュッと俺の頬に光の線がかする。
解散していくプレイヤーの中でコチラに近づいてくる二つの影。
サクヤとアカネだ。
「シン君? 次は魔物さんとイチャイチャしてるの?」
サクヤが光の弓を顕現させ俺に向けている。
返答次第では殺されかねない。
ジョーカーは首を傾げながらサクヤと言葉を交わす。
「僕はシンと一緒に居たいのに何か問題があるの?」
純粋な瞳をサクヤに向けるジョーカー。
その目に一瞬たじろいだサクヤは口を大きく開く。
「シ、シン君は私の彼氏なので!」
言ってて恥ずかしくなったのかサクヤは両手で顔を隠してその場にうずくまった。
「かれし? シンはかれし?」
何それ? と彼氏の意味が分かっていないジョーカー。
「お互いを大切に想ってる同士の呼び名みたいな物かな?」
「じゃあ私も彼氏!」
俺が補足を伝えるとキャッキャッと彼氏を連呼してはしゃいでいるジョーカー。
「俺とジョーカーは彼氏じゃなくて大切な友達」
「彼氏とどう違うの?」
友達と彼氏の違いか。
少し違うがまぁ。
「一緒だ」
「わ〜い、友達」
綺麗な女性の姿だがジョーカーは子供のように純粋だ。
アカネとサクヤもそれが分かったのか殺気が薄れていく。
サクヤはジョーカーの頭を撫でる。
「ジョーカーちゃんに張り合って大人気なくてゴメンなさい」
「僕怒ってないのに人間は謝るの?」
「少し悪いと思ったら謝るかな?」
「変なの〜」
ジョーカーはサクヤ達に警戒心という物はないのか。
コイツは元々そうかと思い出す。
いつの間にか俺の手を離れサクヤとアカネと話し合っていた。
女同士だからか波長が合うのかもしれない。
「僕はシンの国を見てみたい」
「じゃあジョーカーちゃん行こ!」
ジョーカーの言う事にアカネはすぐさま反応する。
アカネとサクヤに挟まれて楽しそうにするジョーカーは見てて微笑ましい。
サクヤは一人っ子でアカネも妹だ。
お互い妹が欲しかったと思う時もあっただろう。
俺を置いてスタスタと国に向かい始めた三人。
俺取り残されんの?
まぁ、いいかと思ったが気になった事があり声をかける。
「ジョーカーお前ロイヤルに外出る事は言ったか?」
「急に色んな国に召喚されたから言ってない」
うわぁ。俺は背筋が寒くなるような感覚に陥る。
笑顔満開でウキウキしているジョーカーに今更さっさと帰れとは言えず押し黙る。
「遅くなる前に帰ることは約束しろよ」
「うん。約束!」
「サクヤとアカネもジョーカーを遅くなる前に帰してやれよ」
「はい」
「シン兄ジョーカーちゃんのパパみたい」
俺が着いて行っても邪魔になるかもと遠慮する。
俺は大人しく三人を見送った。
国同士が集まる会議室。
そこには八の空白の席があり二つの席にしか座る者は居なかった。
アフィリンスとミースティアだけ。
「意外ですね」
ヒカリと対面しているネリアはパチパチと手を叩きヒカリを賞賛する。
「ジョーカーを凌ぐなんてどんな手を使ったんですか?」
「それを教えるとでも?」
「やっとラクリガルドを落として一位になったと思えばマークしてなかったミースティアが目の前にいる」
ネリアは、はぁっとため息を吐いた。
「この部屋を私だけが独占出来ると思ってたのですが。そう甘くはないようだ」
ヒカリは略奪戦の報酬を自分の欲の為だけに使ったネリアを責めることは出来ない。
そんな中ギギィットと扉が開いた。
コツコツと優雅な白のドレスを着飾った女性が入ってくる。
『私の娘を未開の地から各地に召喚した国はどちらの国ですかね?』
空いてる席に座った女性は問い掛ける。
ヒカリとネリアは見かけない顔に困惑していた。
「お前は誰だ」
ヒカリは圧倒的な存在感に押されながら声を振り絞った。
「私はロイヤルです。『アディショナル』という国を治めてますが貴方達には分かりやすく未開の地? を治めていると言えば分かりますか?」
未開の地を治めている者。
「プレイヤーなのですか?」
「いいえ。私は魔物ですがこの世界と共に産まれ育ちました」
さて。とロイヤルは話を区切る。
「それでは私の娘ジョーカーを召喚した国は娘の安全の保証と無事にアディショナルへ速やかにお返し頂く事を約束してください」
ネリアが話の間に入る。
「もし約束出来なければどうするおつもりなのでしょうか?」
ネリアの問い掛け。
「私が人間を殺すという事は人間は死に戻りはしません。存在が無くなりこの世界から永久にいなくなります」
なのでとロイヤルは続ける。
『もちろんその時は私自ら人間を全員殺して差し上げます』
ロイヤルは笑顔で答えた。
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