想いの重み
ラクリガルドホームでシオンは永遠の誓いのマスターレンを出迎えていた。
「わざわざ来て貰って悪いけどシンと言うプレイヤーについて聞きたい」
「シンは三年前にクランをクビにした奴です」
「それは何故?」
「足でまといだったからです」
レンは素直に答えていく。
「足でまといねぇ」
シンが永遠の誓いでクラン戦を行っていたログを確認しながら何故クビにされたのかを探っていく。
もしもシンがクビにされていなければ略奪戦の負けは確実になかったのだから原因を知りたいと思うのは当然の事だった。
スっとシオンはスクリーンを指差すとレンの視線を誘導する。
それはレンがシンに魔法を後ろから当ててるシーンで止まっていた。
「これはアイツが急に横から入ってきて負けた試合です」
「やっぱりそういう認識になっちゃうのか」
シオンは止まったままのスクリーンを見ながら考える。
「これさ、そのまま魔法打ってたら敵に当たったと思う?」
「当たりますよね?」
シオンの言ってる事がイマイチ理解出来ないレン。
「君と俺の距離ってめちゃくちゃ近いよね? 俺がもしここから魔法を放つ姿勢をして君は避けられるかい?」
「どんな魔法かに寄りますが軌道が変わらないなら簡単に……」
そこでやっとレンはシオンの言ってる意味が分かった。
「ごめん。君を責める気じゃないんだよ」
レンはクビの原因が分かると納得した。
「ところで強制的に国から追い出したプレイヤーの心当たりとかある?」
「わからないです」
「そう? 些細な事でも良いんだけど」
「元クランメンバーのサクヤがシンをクビにした時に何かを渡してた気はしますが」
「サクヤというプレイヤーだね。分かった今日は来てくれてありがとう」
「あ、あの今上級にあがったばかりなんですが最上位クランに憧れてるんです! 俺達のクランも最上位クランに入れてください」
シオンはニコリと笑う。
「君達の今後の活躍に期待してる。一緒に戦う日も近いかもね」
「ホントですか!」
レンはパァっと顔を明るくさせながらラクリガルドのホームを出ていった。
『そんな訳ねぇじゃん』
一人になったシオンは呟きながら考える。
「あの程度のクランじゃルールブレイカーの力は強すぎる」
中級以下の力しかないクランにシンは上位クラン以上のプレイヤースキルを求めていた。
あまりにも残酷な力量の差は逆に足でまといでしかない。
ログを確認していくとシンはそれを分かっていながら一度たりとも合わせようとせずに自分のレベルを落とさなかった。
「ルールブレイカーはこのクランを本気で最上位にさせるつもりだったのかな」
そんな想いがシオンには読み取れた。
「それがクビか。これだけの情熱を注いでいたクランに突き放されたらソロプレイヤーでクラン戦やるかもな」
シオンは上位クランで最上位に成り得る有望な人材にしか目を付けてなかった事を悔しく思う。
「サクヤか」
シオンはサクヤというプレイヤーを探す。
すると何度も目にした国の名前が表示された。
「またミースティアかよ」
その瞬間ログが切り替わりビービーとうるさい音が鳴り響く
【スタンピードロスト発生】
システムメッセージがシオンの前に現れる。
「なんだ? スタンピードって……国が無くなる?」
詳細を確認しながらハッと略奪戦の報酬がチラつく。
「アフィリンスここまでやるのか」
シオンは悪態を付きながら頭を抱えた。
アカネとサクヤと一緒に俺はカフェでコーヒー牛乳を飲んでいる。
普段はカフェとか一切行かない俺も二人と出歩くと毎度行っている。
しかもオシャレだ。
店内をキョロキョロと見渡すのも変わらない。
アカネとサクヤはリアルの話で盛り上がってるみたいだし蚊帳の外で一人思う事もある。
自力で入手したレアスキルが欲しいと。
適当な行動を繰り返せばレアスキルが貰えるかもと噴水の周りを駆け回ったが手に入らなかった。
どうしたら手に入るんだ?
アカネとサクヤのレアスキルの入手方法に共通点は無いし。
本当に偶然の産物のような気がする。
クールタイムが存在しないという事は常時強力なスキルを放てるという事でめちゃくちゃ強い。
良いなぁ。
レアスキルの事を考えながら二人を見ていると。
ブーブーと大きな音が鳴ると目の前にシステムメッセージが表示された。
【スタンピードロスト発生】
サクヤが言ってたヤツだ!
「シン兄!」
「シン君!」
二人は緊急事態だとアワアワとしている。
俺は席を立つとお会計を済ませる。
そしてゆっくりと二人を連れて始まりの丘に向かって歩き出した。
「急がなくていいの!?」
アカネは早く行かないとと言っているが俺は慌てなくていいと伝える。
「ストックはあるから充分だろ」
「この前の儀式で言っていた魔物としたらジョーカーです。この国のプレイヤーをかき集めても勝てるかどうか分かりません! 救えるのは未開の地を攻略してるシン君だけですよ」
サクヤは俺を持ち上げすぎだと思うが周りのプレイヤー達も走りながら始まりの丘に向かっていた。
俺はそれでものんびりとした足取りで始まりの丘に歩いて向かっていた。
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