代償を伴う決意
【視聴者数1千万人突破】
他国戦シンの負ける事を知らない戦闘は配信され全国のプレイヤーが見守っていた。
「コイツどうなってんだ!」
「ラクリガルドにソロプレイヤーが50? 80? 100戦? 全勝はふざけてる」
「ルールブレイカー!」
コメントは時間を追うごとに多くなっていき今では数秒前のコメントが何万と言うコメントに埋められる。
様々な国で略奪戦のイベントは公開されその中でソロプレイヤーが一番強い国ラクリガルドに勝っている。その信じられない光景にイベント効果も相まって視聴者数は跳ね上がっていた。最初のコメントと言うのはラクリガルドに対してのコメントで埋め尽くされていて。
「恥を晒すな! ソロプレイヤーに負ける訳ないだろ」
「八百長?」
「今のプレミ! 俺ならコイツに勝てた」
二戦三戦と数を重ねていけば配信を見ていたプレイヤーは黙ってシンの戦闘に魅入った。
ソロプレイヤーで連戦連勝。
見ていたプレイヤー全員がクラン戦を知っている。
ソロで勝つ難易度が高い事は誰もが知る常識だ。
それを目の前で覆す様は目に焼き付いて離れない。
コメントが目に入ったから? 誰かが言ってた? 嘘の様にコメントの手を止めて魅入っていたプレイヤーが動き出し一言目にコメントする物は決まっていた。
『ルールブレイカー』
【ラクリガルド】ホーム。
「ルールブレイカー」
その言葉で埋め尽くされてるコメント欄を見ながらクラン戦を申請する者がいた。
最上位クランマスターシオンはいつもはチャラ着いた雰囲気を纏っているが今は眉間に皺を寄せシンの姿を見ている。
一ヶ月間開催される略奪戦。最初は絶好調な滑り出しだったのをシオンは覚えている。
ミースティアから欲しい女を手に入れる事が出来るそれだけで舞い上がっていた。
異変に気づいたのはイベントが終盤にかかり始めた時だった。
中盤から終盤その間の全てのクラン戦がソロプレイヤーに負け続けていると知ってからチャラ着いた雰囲気は消え去った。
配信画面を見ながら一向に通らない申請にイライラしていたのだ。
最上位クランが動くだけでも良しとしないシオンは自分より下のプレイヤーを見下して使えない奴等だと見切りを付け始めた。
「規制をかけろ! ミースティアは今から俺達ラクリガルドが潰す」
国同士の略奪戦、ミースティアとラクリガルドの勝ち星。
ミースティアに逆転されて【150】と差を付けられる事態に陥っている。
ソロプレイヤーさえなんとか出来れば優に取り返す事が出来るとシオンは思っていた。
規制も完了し申請はスムーズに通った。
自分が行けばなんとかなるだろうと思いながらクランホームからバトルフィールドに転移したのだった。
十対一。
「俺はラクリガルドマスターのシオン。ルールブレイカーと持て囃されて良い気になっているのも今の内だからな」
他の国でも俺のアダ名ってルールブレイカーで固定されてんの?
もう少し他に無かったのかと思えてならない。
一匹狼? 刀のシン? 初心者装備の成れの果て? ポンポンと浮かぶアダ名がクソダサ過ぎる。
俺が憧れたクランのお出ましだ。
【最上位クラン ラクリガルド】
欲を言えばこのクランを相手にするなら体調が万全の時が良かったなと思わずには居られない。
普段はしない様なミスが多くなってきてるように感じる。
身体も重い。視界も揺れる。
時間の感覚ももうあまり無い。
何日からクラン戦を始めた? 今時計に映る十三時は何度目の十三時なのか。
気を張って居ないと直ぐに倒れてしまいそうだ。
「今すぐお前を倒してラグリガルドの強さを証明してやる」
強さの証明? ソロプレイヤーを倒した所でそれは成せないだろうと思うがそれを口にするほど俺は無粋ではない。
刀を抜き取るとカランと落とす。
少し屈んで刀を取ろうとするが一向に掴めない刀に困惑する。
やっとの思いで手にした刀はズッシリとしていて凄く重い物を持っていると感じる。
限界はとうに超えているのだろう。
最上位クランまでも引き摺り出して注目度を集める最初の目的は達成出来たと思えば俺の今までの頑張りも報われる。
だがそれで負けて良いとは思えない。
負けて良いとは思えないがこの状況ではしょうがないだろう。
「さっさと構えろ! ルールブレイカー!」
何を怒鳴ることがあるのか。
どうにか姿勢を正して正面を見上げる。
刀を構えカウントを待つ。
『お前らこそ俺に負ける準備は出来てんだろうな』
色々あったが勝ち続けたクラン戦。
この状況ではしょうがないよな。
俺のやることは変わらない。
また一勝するだけだ。
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