わたしはあなたの彼女

 私達は物置部屋のような拠点で、ただ三角ずわりして横に並び一夜を明かした。


「真琴さん、行きましょうか」


「電車動きましたかね」


「いや動いてません」


歩いて帰るしかないね.....きっと数時間は。


「はい、乗って 真琴さん」


 とヘルメットを渡す森田さんは大きなバイクにまたがっていた。自転車じゃないんだ。黒光りしたかっこいいバイク、映画で追っ手に銃向けながら走りそうなやつ。

その後ろにまたがると出発した。


 風に吹かれながら、線路を歩く人達を遠目に見ながら、淀川を超える。

森田さん.......私は昨夜の森田マジックに動揺したままだった。


マンションに戻りほっとしつつ森田さんがいつまたもとに戻るや心配。


「森田さん ありがとうございました。迎えに来てもらって」


「いえ。あの、真琴さん」


「はい」


「僕が昨日言ったことは......」


 昨日言ったことは、また忘れてくださいとか無しですよ!そげなことは、やめてください。あなたは私を好きだと言ったんだからね。


「好きって言ってくれて嬉しかったです」


「あ、そうですか。迷惑ではないですか」


あれ、どもらないけどイケメン化は切れてきた?もうちょっと見たかったなあ


「迷惑なんてとんでもない」


「あ、じゃ真琴さんはどうですか、そ、その感触は、き気持ちは」


ああーどもりだしたよ。白猫隆になら言える。猫になら思いを伝えられるはず。


「私も......森田さんが好きです。」

「あ........」


ん?止まった。完全停止しましたね。

白い肌に絵に描いたような男のわりに長いまつげの目をじっと私に向けて


「森田さん?」


「あ では、今から真琴さんはセラピストではなく、ガ ガ ガールフレンド。になった。なりましたか?」


「ガールフレンド?彼女ですよね?えっと、恋人ですよね?なりました。なります」


「え いいんですか?!」


「え だめですか?」


「いえ。この上なく嬉しいです」


あれ、これは昨日のままイケメン化してたら


『じゃ君は俺の彼女ねっ』

『ほんとにいいのか?』

『だめなわけないよ、嬉しいに決まってんだろ』

ってな感じ?

ニヤつく私。きっと今幸せが溢れてニヤついているに違いない。


森田さんが私をぎゅっとした


「ありがとうございます 大切にします」


これは......補正なんていらないくらいキュンとした。


 前にちょこんと座ったまま、私の頭を上から下へ髪を撫でること数十回。

なになに、これいつまでする気?しかも無言で。毛並み整えてるのか.......。


「あ、セラピスト契約。あの最初に来られた方に伝えないといけませんね」


「あの方は、総務の方です。言っておきます。」


総務?.....総務の担当.....フツ――――。


+++


 数日後、運行は再開したが駅で停車してはなかなか進まない。通勤時間は長くなったがなんとか出社した私。


「おはよう。まこちゃん」

「おはようございます」

「まこちゃん......森田さんと帰れたのか?あの日」


 響さん、そうだ。響さんには言わなければ。


「はい。森田さんと一夜明けてから帰りました」


「あ、そうか」


「私、あの......森田さんと.......」


「いやーまいったな。あの地震。おはようさん、あれそういえばまこちゃん電車動いたんや」


後藤さんに続きみなさんご出勤。


「響 まこちゃん泊めたの?」


「いえ 私は河野部長が帰ったあとに、も 森田」


「泊めましたよ」


ん?なんですと?泊まってませんよ。虚言癖ですか?響さん


「泊まってませんよ!私はあの後、森田さ」


「なにーっ!ついにそうゆうことか。響さん。この災害時にまこちゃんを。ははあ、二人はカップルやな!めでたいめでたい」


 ああ、みんなお祭り状態。響さんが嘘など言うはずないと。私が照れ隠しに嘘ついてると。


「ちょっと!響さん!困ります。あんな嘘」

「なんで?本当に付き合っちゃえばいいことだろ」

「いえ。」

「あ、怒った?まこちゃん」

「はい。私には彼氏が出来ました。」

「.....森田さんか」

「はい」

「そうか.......」


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