親分!は出てこないよね

 別人のごとくイケメン化した森田さんに連れられ北新地の小さな脇道を入り込んで進む。これ森田さん相手じゃなかったら絶対ついてかないような怪しい路地裏。

さらに怪しい雑居ビルに入る。

不安げな私に目を向け


「大丈夫。何もしないよ」


 いや、だからさどうしたの、森田さん。

とりあえず今あーだこーだ言ってる場合じゃない。素直に従いましょう。


 鍵を出して、ガチャガチャドアノブの小さな鍵穴にさそうとしたら中から開いた。


「よっ来たか」と男の人の声がした。


 中に入ると、そのロン毛を後ろで束ねた同じくスーツ姿の切れ長和風な男性、歳は多分森田さんくらいだろう、足を組んで殺風景な丸椅子に座る。

部屋には事務机がぽつんと、革のソファもあった。なにこれ物置?または、あにき!親分!とか言う人出てくる?明らかにやばい系?どうしよ。もし、そっちだったら......。


「君が真琴さん?」


「はい。そうです。あ お世話になってます。森田さんに」


「はははっ隆史が言うとおり可愛いわ」


 隆史?可愛い?なに小馬鹿にされてんの?わたし。


「おいっ。夏目うるさいぞ」


 わあ もう森田さんじゃないみたい.....。うるさいだなんて言葉を発するなんて。


「いいじゃん。どうせここに避難しに来たんだろ。暇だし。おしゃべりしましょ〜」


小さいため息をついた森田さん。仕事仲間なんだな。仲は良さげな二人。


「隆史の任務って極秘だろ?でも仕事内容すら言ってないの?」


「ああ。何も」


「てかさ、隆史になんでセラピスト必要なんだよ。ねぇ、真琴さん」


「あ、はい」


「隆史、家でどんな感じ?」


森田さんは意味なく部屋を歩いて頭を掻いてる。これはいつもの森田さんだ。


「えっと、可愛い系です。猫みたいで。どもるしぎこちないですし。何するときも、あっあって言います。」


 それを聞いて口を抑え笑いをこらえる夏目さん。


「そうか、隆史、スイッチ切れたらそうなるんだな。やばっ。きもっ。」


「だから言ってんだろ。不眠症不安症だって」


「あのさ、真琴さん会社入ったのいつ?」


「えっと、4ヶ月前ですかね」


「ほら!」


「え?」


「俺さいつも言ってるんだよ。その不安症とかは真琴さんに出会ったからだって。」


「え?」


「俺ちょっと出るわ。てか帰るわ。今日は居たって連絡も繋がらないし。じゃあね〜真琴さん。隆史をよろしく」


「はい.....お気をつけて....」


んー、んー、どうする。なんて言う。もしやスイッチとやら切れたらまた、どもる?


あ、咳払いしながら森田さんが近づいてくる。

あ.....私をぎゅっとしたナチュラルに強く


「真琴さん、このまま話すよ」


 どもらない森田さん。やばいんですけど。どういたしましょう私。


「僕は特殊任務の一員、警視庁関係かないわゆる。捜査官、捜査において役割は怪しい人物の割り出し。第六感で。」


は?第六感???どもらなくてもワケワラナイやっぱり。


「分からないよね。人の悪意を感じるんだ。普通の人の何倍も。それが原因で不安症不眠症だと思ってんだけど。

急に、たしかに真琴さんに出会ってから.....悪化した」


「え?私のせい.....ですか」


「うん。君のせい」


「恋を知らなかった僕が恋を知ったから」


これは.......な、なに!なんて


「あの。それってまさか」


森田さんは抱きしめてた腕を緩めて少し離れた。

じっと、私を見つめる美しい顔が真剣な顔になる


「好きなんだ」


キャーッギャー......。

こうなったら私がパニクる。何も言えない。

顔を見たらより言えない。美青年すぎて。


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