白い戦士再び
「響さん、締切ほんとに明日なんですか」
「あぁ 悪いな あとちょっと」
ウィーンウィーンウィーンウィーン
そこら中でスマホが鳴る。緊急地震速報だ。一気に心拍数が上がる。
「まこちゃん机の下に!!早くっ!」
響さんが向かいの席から叫ぶ、叫びながら私の方へ来て一緒にデスク下へ潜った。
かなりの揺れでモニターが倒れガチャンガチャン何かが落ちる音がした。
そして電気が消えた。コールセンターの方からもキャーッと悲鳴があがる。
私はただじっとした。響さんは私を頭から包むようにしてじっとしてる。
「大丈夫か?」
「はい」
もうすぐビルが閉まる時間、残っていたのは響さんと私と河野部長代理。
揺れがおさまったとみて、私達は階段から外へ向かう。
非常電灯はついたものの暗いビル、私は響さんに手を繋がれ何故か河野さんに腕を捕まれ階段を降りる。
もう少しでグランドフロアと言う時、余震が来た。
河野部長代理がキャーッと叫び私を押した拍子に響さんと河野部長代理にサンドされる。
なんなんじゃこれっ。響さんは河野部長代理に「ちょっと!まこちゃんが潰れますよ」
と言って、私だけを抱きしめた。
え?ちょちょっと私別に余震でパニクってないですけど、河野部長代理ですよ、抱きしめたげなきゃならんのは。
とはいいつつ、響さんの包容力は半端ないのでした。
やっと外へ飛び出たものの、電車は動いていない。スマホは繋がらない。人が溢れ出し道路は寸断だかで交通は麻痺したらしい。
建物は崩壊していないけれどなかなか大きな地震だったようだ。
「はあ これは帰れないっすね」
「どうする 響」
「まこちゃんいるし一人にできないから残ります、河野さんは?」
「歩く」
河野部長代理は、うちくる?とかなく歩いて消えてゆく。
「まこちゃん、うちなら歩いて頑張れば行けるぞ。」
私と森田さんが住むマンションは、東西線のって淀川をわたる。
でも、私は森田さんが来るんじゃないかって思うのでした。来てくれた時に会社にいなかったら.......。
「私ここにいます」
「は?いやいや駄目だよ。朝までいる気?行くよ、うち」
「もうちょっと待ってください。ほら、電車とか道使えるようになるかも」
「ならないよ。多分明日以降まで」
「じゃ、会社戻ります」
「いや災害時に戻るやついるか?しかも22時過ぎたから閉まったよ」
「停電してたら開いてるのでは?」
「そんなに俺んち嫌か?」
「.......」
「もう行くぞ」
と響さんは私を引っ張って立ち上がる。
「いや、でも」
不安でいっぱいだ。響さんにこの非常事態についていったら多分いろんな意味でやられる。うん。
無駄にもたつきながら、やいのやいの言いながら数メートル進んだとき、声がした。
「真琴さんー!!真琴さーんっ!」
どこ?どこどこどこ?
「真琴ーっ!」
なんでかラストは呼び捨てでお出ましは森田さん。
白い戦士。どこからどうやって来たのか全く分からないが、いつもと雰囲気が違う。スーツに髪もバックに流れているからか。どこ帰りだろう、とぼやっと森田さんを見ていたら
「行こう。」
「え?森田さんどこに?」
「うちの拠点あるから」
「え?」
「二人ともうちくる?」と響さんが言ってくれるも
「いえ。大丈夫です」
とあっさり森田さんは断った。
「まこちゃん.....」
響さんが強く声をかけられないくらい、森田さんはハキハキと話し、颯爽と私の手を引いて歩いた。
「よかった。間に合って」
「え?森田さんどうしたんですか」
私をぎゅっと抱きしめて、まるでルックスそのままのイケメンな話し方.....?
「ん?ああもうちょっと遅かったら、あの上司に連れてかれたかなって。」
「はあ、いやいやその話し方、どうしたんですか?」
「あっ」
「え?」
「いや、仕事モードなのかも。」と、少し口角をあげた森田さん。うそー?
敬語じゃないし、別人みたい。え、もう私キュンキュンマックスなんですけど。このギャップというか七変化みたいなのやめてください。
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